ブランド初の取り組みで次のステージへ
このサイドゴアブーツは、いままでの「WH(ダブルエイチ)」よりもう少しエレガントなものをつくりたいという気分からスタート。そのため、今回はWHの代名詞ともいえるボリュームのある分厚いソールや、コバの張り出しは封印し、ブランド初のレザーソールに取り組んでみることにしました。
ソールが一体型のラバーソールは、どうしてもスタイルが限られるというジレンマがあって、ちょっと違ったタイプにも挑戦してみたくなったんですよ。

このブーツの最大の特徴は、グッドイヤーとマッケイのいいとこ取りをしたような「ハギンググッドイヤー(ボロネーゼ式グッドイヤーマッケイ)」製法を採用していること。ちなみにこの製法の名前は、足をやさしく包み込むイメージから坪内浩さんが命名しました(粋ですよね)。

モードな雰囲気も感じられる4㎝ヒールは、地面に向かってストレートに落ちるのではなく、やや傾斜した「ピッチドヒール」という仕様。コバがない分、すっきりとした印象に仕上がっています。
ラスト(木型)はこのブーツのために、WHのラインナップのなかでは最も細いシルエットで、セミスクエアトウのものを新たに開発しました。ちょっと70年代ファッションの匂いが感じられるところも気に入っています。

僕の定番スタイルとなっているライダースジャケットにTシャツ、デニムのコーディネイトにもドンピシャ(それに合わせたくて、つくったというのもありますが……)。アッパーの素材にはデニムに相性のいいイタリアの老舗タンナーのオペラ社の毛足が若干長く、耐水性に優れたスウェードを採用しています。

僕は、色落ちしたブラックデニムに黒のスウェードブーツを合わせるのが好きでよくするのですが、最近は茶色のブーツもいいなと思い、この秋に挑戦しようと思っています。さらにデニムだけでなく、スーツにも違和感なく合わせられるので、これはかなり重宝すると思いますよ。
見た目は大きく変わったと感じたとしても、実際に履いてみると、返りのいいソールや、スニーカーのような履き心地、スタイルがよく見えるという、ブランドの根底にある思想はそのまま。これまでのWHファンにも十分満足していただけるはずです。

各7万4800円/WH(オリエンタルシューズ)
【問い合わせ】
オリエンタルシューズ
03-6804-3280
WH HIROSHI TSUBOUCHI
Photo:Ikuo Kubota(OWL)
Text:Toshiaki Ishii