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FOOD 洋食天国

近所は富裕層ばかりになったけど、ホッとする味は残したいんです。創業1895年、三福亭のハンバーグは毎日でも食べたい

料理芸人のクック井上。による、“飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”というデータがある中、何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんを巡り、その想い、歴史、人、町を知る連載コラムです。

料理芸人のクック井上。です!  “飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”
というデータがある中、町には長年お客さんに愛され続けてきた洋食屋さんがあります。そんな老舗の洋食屋を巡り、その想い、歴史、人、町に触れる連載コラム【洋食天国】。今回は、日本橋馬喰町『三福亭』にやって参りました。

看板には“ハンバーグ&とんかつ”の文字

なんと、創業は今から126年前の1895年(明治28年)!  樋口一葉が雑誌『文学界』に小説「たけくらべ」の連載を開始した年であり、2021年の大河ドラマの主人公・渋沢栄一が実業家として活躍して多くの銀行や会社を設立した頃という事になります。その歴史にロマンを感じつつ、『三福亭』の看板メニュー「ハンバーグ定食」を注文しましょう。

 

■『三福亭』の看板メニュー、ハンバーグの調理工程

四代目・安田智和さんが、豚多めの合い挽き肉+炒めた玉ねぎ&生の玉ねぎのW玉ねぎを混ぜ込んだハンバーグの種を、左右の掌でキャッチボールをし、リズミカルに成型していきます。

毎回、注文が入ってから成型するそう。そして、美しい小判型のハンバーグをフライパンへON!

強火で、両面にこんがりと焼き目を付けていきます。フライパンでは中までは火を通さず、あくまで表面を焼き固めるだけ。

中心まで火を通すため、オーブンにIN。オーブンとしてはやや低めの温度の180℃でじっくり10分程かけて火を通していきます。「丁寧に作っているので、お客様の注文が殺到する時間帯は数十分程お待たせしたしまう場合もあります」と、四代目・安田智和さん。

さぁ、丁寧に焼き上げられたハンバーグがオーブンから帰還し、白いお皿の上に乗せられました。
時は来た! テーブルへと戻るとしましょう。

 

■全日本人が懐かしと感じる「ハンバーグ」

そして到着しました、「ハンバーグ定食(1100円)」の画力たるや!

「ハンバーグ定食」(1100円※単品1000円)※ご飯の大盛り、またはおかわり1回無料。

まず印象として、ハンバーグが大きい!  調べたところによると、世のファミレスのハンバーグはランチで120g、ディナーで150gというのが平均なのですが、『三福亭』は威風堂々230gの大型ハンバーーーグ! 世のランチの平均の約2倍ときたもんだ。男心をグッとつかむぜ!

みんなのアイドル、ハンバーグをニタニタしながら撮影してしまうことをお許しください。

更に嬉しいのがご飯+お味噌汁+お新香という、まさに町の洋食屋の鑑のような定食スタイル。ちなみに世の中のなんとご飯の大盛or1回のおかわりが可能でこのお値段というサービス精神に最敬礼です。

さて、定食スタイルという事で、使うのはフォーク&ナイフではなく、もちろんお箸です。サイズも厚さもあるハンバーグですが、箸先でスッと切ることができます。しつこい脂ではなく、程よい肉汁を目視で確認し、いざお口に運ぶと致しましょう。

美味い! これは、全日本人が懐かしいと感じるハンバーグではないでしょうか。ハイソなデミグラスソースではなく、やや甘さとスパイシーを感じる昭和の懐かしいハンバーグソースが舌を包みます。そして、ハンバーグの表面は香ばしくカリッと焼かれており、噛めば肉の食感と柔らかさの両方を舌で感じる事ができます。

世のハンバーグを形容する際によく使われる“肉汁ジュワ”や“牛100%の旨味”ではなく、また極端な“柔らかふんわり”でもありません。このハンバーグの魅力は瞬発力ではなく、毎日いつ食べても“これこれ!”と感じる事の出来る持久力。それが実に尊いのです!

思わず「これこれ、こういうのよ!」と声に出た。

ただただ、ご飯に合うように作られた優しいハンバーグであり、ひと口ハンバーグを食べれば二口三口のお米が進みます。途中、お出汁のきいたお味噌汁やお新香を口に運んで口内調味すれば悶絶の刻。

最高なのは味だけではありません。120gのハンバーグでは物足りなさを感じざるを得ませんが、なんてったって230gあるのです。懐かしい味で心が満たされ、十分な量でちゃんと胃が満たされます。『三福亭』のハンバーグは、特別なハレの日に食べる高級ハンバーグではなく、普段のケの日に食べるとホッとするハンバーグの頂点なのです。 

大の大人が笑顔を浮かべながら口いっぱいにハンバーグとごはんを頬張って、思春期の如く腹パン

なんだろう、ハンバーグの向こうに実家が見えるというか、こんなにホッとするハンバーグは珍しい。けれど決して家では食べられないクオリティ。大満足の一皿を食べ終え、ご馳走様でした。心身が満たされたところで、ここからは四代目・安田智和さんに、お店の歴史やお料理への想いについてお話を伺います。ホッとする味の秘密に感動しました。

 

■祖父のお店のスタイルと父の味が合わさった

── お店の歴史について教えてください。
四代目・安田智和さん 
1895年(明治28年)に曾祖父が創業しました。曾祖父がどんなお店を営んでいたかは、残念ながらこれといった資料が残っておらず不明です。二代目の祖父は洋食屋として、三代目の父はとんかつ専門として『三福亭』を営んでいました。なので、今お店で出しているハンバーグは父の頃はメニューにありませんでした。

── 時代によって業態を変えて来られたんですね。 今は看板に“ハンバーグ&とんかつ”と書いてあります。お父様のとんかつ専門店から、ハンバーグやメンチカツを出すお店にされたのでしょうか?
四代目・安田智和さん
 私は調理師学校を出てから、フランス料理店、銀座の老舗洋食店、とんかつ専門店、焼鳥店ビストロ店などで修行しました。更に、祖父が洋食店を営んでいたのでというのもあり、とんかつ以外のメニューも出すことにしました。

── という事は、二代目である祖父様のハンバーグ+ご自身の修行で培った味という事でしょうか?
四代目・安田智和さん
 実はこのハンバーグは、祖父ではなく父の味なんです。父がとんかつ専門店として『三福亭』を営んでいた頃、家族の食卓は閉店後のお店のテーブルでした。お店が終わった後、父が家族のために夕食を作ってくれるんですが、その時によく出ていたのがハンバーグです。いつも温和で優しい父が作るハンバーグが大好きでした。

── なんとも素敵なお話ですね。とんかつ専門店の店主が家族のために作ったハンバーグの再現ですね。
四代目・安田智和さん
 はい。当時、ハンバーグはお店のメニューに無いのに、家族にハンバーグを作るためだけに立派なミンサー(肉のミンチ機) を用意していました。そのミンサーでとんかつ用のお肉や切れ端を挽肉にして、家族にハンバーグを作っていました。私にとって、かけがえのない思い出の味です。

── 食べた時に「ホッとする」「でも、決して家では食べられないクオリティ」と感じたのは、シェフであるお父様が家族のために丹精込めて作っていた味がモデルだからなんですね。
四代目・安田智和さん
 父が家族のために作っていたハンバーグをイメージしているので、ソースは本格的なデミグラスではありません。赤ワイン・玉ねぎ・ケチャップ・ソースなど、色々混ぜて父が作ってくれた思い出の味を出しています。お皿に盛ったライスではなく、お茶碗に入れたご飯に合うと感じてもらえたら嬉しいです。

お父様のこだわりのとんかつに加え、家族のために作っていたハンバーグをメニューへと昇華させた四代目・安田智和さん。父から息子への思い、そして息子から父への思いが詰まったハンバーグを有難う御座いました。

取材ロケの後片付けをし、そろそろお暇しようと思っていたとき、奥様と年長さんの息子さんが帰宅されました。聞けば、昔と同じように、ご家族と閉店後の店内でお食事をとられることがあるそう。四代目・安田智和さんがお父様に作ってもらったように、今は未来の五代目の息子さんにハンバーグを作る光景がそこにはあります。

お店の壁に飾ってある、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンに乗って昔のお父様やお祖父様、将来、厨房に立つであろう五代目の姿を目にしたい!と思うのは私だけでしょうか

明治・大正・昭和・平成・令和と5つの時代を四代に渡って暖簾を守り続けてきた『三福亭』。あと100年、いや未来永劫続きますように。ずっとずっと受け継がれて欲しい「洋食」という名の日本の食文化。まだまだ巡ってその想いや歴史、人や町に触れたいと思います。

三福亭
東京都中央区日本橋馬喰町1-4-10
03-3661-6955
営業 月~金11:30~14:30、土12:00~14:30
※現在、ディナーの営業は行っていません
定休日 日・祝日
 

Text:Cook Inoue
Photo:Takuji Onda
Edit:Takashi Ogiyama

クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です! 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も! ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
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