後を絶たない、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故。「ペダル踏み間違えなんて、高齢ドライバーが起こす事故でしょ」と思っていませんか。実は、踏み間違え事故を起こしたドライバーたちに、年齢による偏りはそれほどありません。
交通事故総合分析センターによると、2013年のペダルの踏み違えによる人身事故6448件のうち、20代が22%と最多で、70代が17%、60代15%、80代、30~50代は各10%前後。並んで配置されているアクセルペダルとブレーキペダルは、誰にでも踏み間違える可能性があるのです。
踏み間違え事故に限らず、いつだれが「加害者」となってもおかしくないのが交通事故。このような交通事故を1件でも減らすため、近年自動車メーカーが安全装置の開発に力を入れているのは、ご存じかと思います。今回は、ASV(Advanced Saftey Vehicle)と呼ばれる、先進技術を利用してドライバーを支援するシステムを搭載するクルマついて、ご紹介していきます。
■AEB搭載義務化で事故減少へ期待
「ASV」とは、前方の障害物への衝突を予測して緊急ブレーキを掛ける「衝突被害軽減ブレーキ(AEB)」、ブレーキと間違えてアクセルを踏んだとき、急発進や急加速を抑制する「踏み間違い時加速抑制装置」、ブレーキやアクセルを自動で制御して前方のクルマとの車間距離を一定に保つ「車間距離制御システム(ACC)」、そして、走行車線からの逸脱を警報する「車線維持支援装置 (LKA)」などを搭載したクルマの総称です。
とくに、衝突被害軽減ブレーキと、踏み間違い時加速抑制装置は、近年注目が高まっている装置であり、2021年11月以降に予定する新型車には、衝突被害軽減ブレーキが義務化されることが決まっています。
衝突被害軽減ブレーキは、先行車や障害物を、カメラやレーダーといったセンサーを使って把握し、これ以上進むと衝突が避けられないとクルマが判断した場合、自動的にブレーキを掛ける制御をしています。
現在、新車販売されているほとんどのクルマには、この衝突被害軽減ブレーキが標準搭載されていて、事故被害の軽減に一役買っています。
ちなみに、交通事故の要因全体の約35%が、脇見運転や安全不確認、漫然運転といった「ドライバーのミス」です(下記の参照)。衝突被害軽減ブレーキの義務化によって、ドライバーが起こしがちなこれらの「ミス」を、クルマ側がカバーしてくれれば、交通事故件数の低減が大いに期待できます。
■ACCやLKAこそ、普段から恩恵が受けられる装置
事故の被害抑制に直接的な効果が期待できる、衝突被害軽減ブレーキや、踏み間違い時加速抑制装置と違い、車間距離制御システム(以下、ACC)に関しては、「必要ないのでは?」と考える方も多いようです。しかし、事故の危険があるときに作動する装置ではないACCは、普段からその恩恵を受けることができ、ドライバーが運転中に唯一頼りにできる、安全装置です。
とくに、その恩恵を受けることができるのが、高速道路。安全走行に役立つのはもちろん、速度の乱高下が少なくなるので燃費にも貢献してくれます。
また、レーンに沿ってステアリングをアシストしてくれる車線維持支援装置(以下、LKA)も非常に便利です。クルマ側がレーン内を走るよう、アシストしてくれるので、ドライバーはそっと手を添えているだけでOK。最初は、「クルマにハンドル操作を任せる」と聞くと不安に感じるかもしれないですが、ACCとの組み合わせで高速道路を走ると、多くの方が、その快適さにやみつきになるかと思います。
これらACCやLKAは、現在では軽自動車から高級車にいたるまで、広く搭載されており、なかでも、ホンダは、新型車の多くで標準搭載としています。メーカーによって機能の内容には差がありますので、購入の際にはよく確認することをお勧めします。
■補助金利用はお早めに
なお、65歳以上の方には、ASV搭載車の購入のため、サポカー補助金制度(最大10万円)が用意されています。補助金は設定された予算枠を使い切った時点で受付終了となりますので、希望される方は早めに対応された方がいいでしょう。ちなみに、2021年7月15日現在、補助金残額は約17%とあとわずかとなっています。
■まとめ
筆者は数年前、信号のない交差点を走行中に一時停止を無視してきた相手ドライバーにぶつけられるという、交通事故の被害に遭いました。相手は運転歴50年以上の事故歴無しのベテランドライバーでしたが、不慣れな道で、ナビに気を取られてしまい、一時停止に気付かなかったようです。
このように、どんなにベテランドライバーでもクルマを運転する以上、事故の加害者となるリスクはあります。もちろんこれらASVに搭載されるシステムは、あくまで「ドライバー支援装置」であり、技術を過信してはならないものではありますが、ヒューマンエラーを減らすことはできます。技術で悲惨な事故を減らすこれらの取り組みは、今後さらなる発展が期待されています。
Text:MMM-Production,Kazunori Tachibana
Photo:Honda,Toyota,MMM-Produciton
Edit:Takashi Ogiyama