古きよき昭和な洋品店をご紹介してきた、「山ちゃんの洋品天国」。今回は趣向を変えて、上野にあるミリタリー服の名店に伺ってみたいと思います。
「上野」で「ミリタリー」といえばアメ横でしょ? と思った方、まだまだ甘いっ!韓国料理店や食材店が軒を連ねるディープスポット東上野には、知る人ぞ知る超老舗ミリタリーショップ「松崎商店」があるのですから!
しかしこのお店、業界内では取材困難店としても知られています。特に動画メディアに関しては厳しくて、「YouTuber?おとといきやがれ」な世界。実は僕も数回におよぶ玉砕を経て、ようやく取材を取り付けました。ある意味では超貴重な映像ですから、絶対にお見逃しなきよう!
かつて東京の下町でよく見られた、いわゆる「看板建築」の風情あるお店「松崎商店」。1937年に深川で創業し、戦災を経て1947年に東上野に越してきたといいます。その頃の風情を残すレトロな店内には、商品がぎゅうぎゅうに詰め込まれた土間の奥に小上がりがあり、そこでは火鉢の前で作業をする二代目店主、松崎一男さんの姿が! し、渋い!
さて、このお店のなにがマニアを虜にしているのかと言いますと、看板に「諸官省拂下品(しょかんしょうはらいさげひん)」とあるように、かつては旧日本軍にはじまる日本のお役所、近年では米軍の払い下げ品を扱う、登録業者であること。その点でアメ横のあちらとは「業種が違う」と、松崎さんは力説します。近年は払い下げのシステムの変更により米軍からの入荷はないとのことですが、ここで扱っている商品は、一部を除いてノーレプリカ! ほぼ本物のみなのです! こんなお店、今時海外でもあんましないですよ!
というわけで「松崎商店」の自慢は、世界屈指のディープな品揃え。いわゆるモッズパーカとして知られるM-1951パーカや、最近枯渇しつつあるM-65フィールドジャケット、寒冷地用フライトジャケットN-3Bといった米軍モノの大定番をはじめ、近作のゴアテックスパーカ、モモヒキ、ソックス、グローブ、ツナギ……。米軍モノならウエアから小物に至るまで、他の追随を許しません!
加えて充実しているのが、ほかのミリタリーショップではあまり見つからない本邦モノ。旧日本軍の制服にはじまり、交機(交通機動隊)モノのレザージャケット、警視庁、郵政省などのユニフォームなどなど、ノーマークの珍品が多数そろいます。かなりクセ強のアイテムが多いのですが、リーズナブルだし、カーゴパンツあたりはアメカジ系スタイルにも取り入れられそうです。
店主の松崎一男さんは、「どこの国でもミリタリーはいいものを使っている。特に化繊が主流になる前の、純毛や純綿を使ったアイテムはいいよね」と、言葉少なに語ります。そして「軍モノはまあ、嫌いじゃないね」という言葉には、確固たる矜持と愛が伺えるのです。一見ちょっと怖そうに見えますが、実は優しい方なので、勇気と礼節を持って話しかけてみてはいかがでしょうか?
そんな「松崎商店」で僕が今回選んだのは、いわゆるスノーパーカ。雪の中で身を隠すためのコートで、なんと1948年製。新鮮なホワイトカラーと、コートの上に羽織るためのビッグシルエットが特徴で、メゾンブランドが幾度となくサンプリングした名品。これが1万1000円というのは、卸元ならではの価格では? ちなみに荻山センパイは、アメリカ空軍の最高傑作と名高い、N-3Bを購入。レプリカはほとんどナイロン100%の初期型を復刻しているから、コットンナイロン混紡ってのが、ツウな選択なんですよね。
いや〜、いい買い物をしたね〜とホクホク顔でお店を出ようとしたところ、実はこのお店のヘビーユーザーだというカメラマンの庄嶋さんから、「領収書は絶対もらっておいたほうがいいですよ」とアドバイスが。なんのことかと思ったら、こんな渋すぎる1枚が。額装して取っておこうっと! というわけで、立地から店構え、品揃え、店主の人柄、領収書に至るまで、すべてがエンターテインメントな「松崎商店」での買い物体験。皆さんもぜひ楽しんでください!
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【商品に関するお問い合わせ】
松崎商店
東京都台東区東上野3-18-3
03-3831-6736
営業時間 平日9時〜19時、日曜祭日9時〜17時
定休日 第二・第三日曜日
Text:Eisuke Yamashita
Video:Yoshihide Shoshima
Edit:Takashi Ogiyama