FASHION 僕が捨てなかった服

【モテると思って…】入社後すぐに3色全色買いした! 英国的トラッドなバロール ビームスのジャケット

人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。

80年代終盤は、ジャケットはチェンジポケット付き、3つボタン上2つがけが流行っていました

編集長干場が、お洒落だけにとどまらず、どんな所作が美しいのか、色気とは何か、男の美学とは何かなどについて教えを乞い、"人生の師匠"と公言するビームスの無藤和彦さん。

現在は、ブリッラ ペル イル グストのディレクターを務め、50歳を過ぎても「モテるためにはどうすべきか」をテーマに、自然体でカッコ良いスタイリングを意識しながら商品ディレクションに携わる無藤さんが、思い入れが強くて捨てられなかった服を紹介する企画の第2回目は、バロール ビームス(VALOR BEAMS)のジャケットです。

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80年代の空気感をよく知らないままビームスに入社して、アルマーニのソフトスーツがある一方でバグッタなんかのシャツも展開する、「こういう世界観もあるんだな」って日に日に知識が広がっていく中で、"ジャケットは3つボタン上2つがけ、パンツはワンプリーツでサイドアジャスター"みたいな時代が再びやってきて、80年代終盤にはトラッド回帰が起こりました。

入社1〜2年目だったその当時に購入したのが、オリジナルのブランド「バロール ビームス(VALOR BEAMS)」のジャケットです。

このブランドの初代ディレクターは現ユナイテッドアローズ会長の重松(理)さんで、その後2代目を引き継ぎ、これを手掛けたのは鴨志田(康人)さんでした。

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僕が勤務する渋谷の「ビームス クロージングサロン」では取り扱いがなかったので、原宿のインターナショナルギャラリー ビームス(International Gallery BEAMS)までわざわざ足を運んで、最初に茶色を買いました。

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とにかくカッコ良かったので、その後すぐにネイビーを買い足し、最終的にはパープルも買い足して、結果3色全部買ってしまいました。

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つねにこれを着て働き、そのまま夜は飲みに出掛けて、なんとかモテようとしていました(笑)。

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この当時は、英国調で着こなす「ベリーロイヤル」っていうスタイルが流行っていたので、このチェンジポケット付きの3つボタンジャケットに、ライトグレーのフランネルでサイドアジャスター付きのワンプリーツパンツをサスペンダーして穿いて、渋谷西武で買ったターンブル&アッサー (TURNBULL & ASSER)のクレリックシャツにタイドアップして着ていました。

自分ではカッコいいと思っていたんですが、女の子たちからすると、ただのコスプレにしか見えていなかったらしく……

渋谷の「ビームス クロージングサロン」の1階にはカジュアルチームが働いており、その頃のセレクトショップの販売員はモテていたので、女性モデルが頻繁に遊びに来たりしていました。

僕は地下のフロアに立っていて、金曜日の閉店後にレジ締めして1階に上がると、なんだかイイ匂いがして、綺麗な女性たちがスタッフの仕事終わりを店内で待ってたりするわけです。おおらかな時代です(笑)。

ある日、1階のカジュアルチームに誘われ、あの綺麗なモデルたちと一緒に遊びに行けることになったのですが、嬉しくて舞い上がってしまい、「チーフも買い足さなきゃ、あとタイも新しくして、靴もポールセンスコーン(POULSEN SKONE)のタバコスエードを買っとかなきゃ」なんて意気込みすぎて、ビシビシの格好で中目黒の藤八へ出向いたわけです。

ところが、モデルの女の子たちは仕事ではないからTシャツにジーンズみたいなカジュアル。うちのスタッフたちも同じような格好だったので「無藤さん、今日は何かあるんですか?」って聞かれ、モデルの子たちからは「王子様みたい」って言われて、ガクーンと落ち込んでしまった。

モテると思ってしていた格好が、そうじゃなかった…。そのとき初めて思い知らされます。

そこから一気にミニマムなコーディネートに変わっていき、チーフも入れない、色もたくさん使わない。女子大生とか若いOLさんたちに評判が良く、分かりやすいデニムにブルーのボタンダウンシャツ、ネイビージャケット的な着こなしで、あまり洋服屋然とした格好はしなくなりました。

盛らないけど、着丈とか袖丈とか細部にこだわって小綺麗に見えるように心掛けて。

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なんだかネガティブな方に話が進んでしまいましたが…、このジャケットはカッコ良くて気に入っていたので、その後も手放すことなくずっと残してあります。

今後も手放すことはないでしょうね。

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ブリッラ ペル イル グスト(Brilla per il gusto) レーベルディレクター
無藤和彦

21歳でビームス入社。渋谷の店舗でキャリアをスタートし、1992年にドレス部門のバイヤー、2003年には遊び心のある大人に向けたレーベル「ブリッラ ペル イル グスト」のディレクターに就任。50歳を過ぎても「モテるためにはどうすべきか」をテーマに、自然体でカッコ良いスタイリングを意識しながら、商品ディレクションに生かす。1965年東京生まれ。

Photo:Shimpei Suzuki

Edit:Ryutaro Yanaka



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