1873年5月20日。「衣料品のポケットの補強にリベットを使用する方法」に関する特許を取得……この時、この世に初めて‟ジーンズ”が誕生した。
ジーンズ、デニムパンツの元祖、リーバイス®。今回は、現在買えるリーバイス® ヴィンテージクロージング(LVC)にラインナップされている、ほぼすべての501®を撮り下ろしたので、ご紹介したいと思います。
■1890年「501®XX」
1890年代は、品番統制によって、リーバイス®を象徴するロットナンバーであり、世界的に有名な「501」が付けられた記念すべき年です。この頃になると、1873年5月23日に取得した特許が期限切れをむかえ、リーバイス®のリベットオーバーオールズが他社からも販売されるようになり、それらと差別化をはかる必要があったのです。

当時のデニム生地は、アモスケイグ社製の9オンスセルビッジデニムを使用していました。こちらの現行モデルも、往時を思わせる薄手デニム地で、ワイドなシルエットとともに、独特の穿き心地を魅せます。

細部は、リベットがむき出しとなった1つのバックポケット、シンチバック、サスペンダーボタン、ツーホースレザーパッチ、一本縫いのアーキュエット・ステッチの仕上がりになっているのが特徴。

現行のリーバイス®︎ ビンテージ クロージングのシンチバックは、安全上の観点から針ではありませんが、ここをオーナーがはじめて絞る感触、うれしさは当時と変わりないでしょう。
■1937年「501®XX」
アメリカが世界大恐慌から少しずつ脱出をしはじめる頃、1937年の501®ジーンズは、古さと新しさをミックスしながら進化をはじめました。

シンチバックはまだ残っていますが、ウエストバンドの上に付けられたサスペンダーボタンは廃止されました。

当時は10オンスのコーンミルズ社製レッドセルビッジデニムを使用し、2つのバックポケットに、一本縫いのアーキュエット・ステッチを配しています。

また、右のバックポケットにアイコンである「レッドタブ」が付けられたのもこの頃です。当時のレッドタブには、「LEVI'S®」とすべて大文字で、白糸で縫われていました。さらに、馬のサドルや家具を傷つけてしまう、という不満に対し、バックポケットのリベットが隠されましたが、リベットの存在を強調するために、初めてポケットフラッシャーが付けられました。
■1944年「S501®XX」
第二次世界大戦中あらゆるディテールの変更がありました。その理由は、戦時下の資材節約の物資統制のためで、アメリカ政府がすべての衣料品メーカーに一定量の金属、布地、糸を省き、商品を簡素化することを要請し、リーバイス®もそれに協力したことによります。

簡素化された細部とは、ウォッチポケットのリベット、クロッチリベット、シンチ、シンチまわりの2つのリベットです。ボタンも供給が不安定なため、月桂樹やブランド名が刻印されたものだけではなく、無地などさまざまな種類のものが使用されていました。

アーキュエット・ステッチも‟削除せよ”と政府からの指示があったようですが、リーバイス®はこれを断固拒否。しかし、糸の節約に協力することには賛同し、ステッチのかわりにペンキでアーキュエットを描くこととしました。もちろん、洗濯すれば徐々にペンキは落ちてしまいますが、購入の際に他のジーンズとは違う、リーバイス®のものだということを証明するのに役立ったといいます。

当時の生地にはコーンミルズ社製のレッドセルビッジを使用していました。
■1947年「501®XX」
第二次世界大戦が終結し、物資が出回ると、リーバイス®は高まる需要戦後需要に応えるべく、再び生産量を増やしていきました。シンチやサスペンダーボタンといった付属的ディテールのない、よりスリムなフィットは、まさにロックロール世代のためのパンツとなりました。

戦時中に取り除かれていたウォッチポケットのリベットも復活し、アーキュエットも糸によるステッチに戻されました。

このモデルから二本針式の機械が導入され、一本針式の時代に生じていた機械の性能差や縫製工の技術差に影響を受けることなく、リーバイス®の信頼の証であるダイアモンドシェイプをすべての商品に同じサイズ、同じデザインで縫いこむことができるようになりました。

大文字の‟E”が入ったレッドタブは商品登録されていたため、戦時中も省かれることなく、継続されていました。
■1954年「501®Z XX」
1950年代中ごろ、それまでアメリカの西側の州のみで販売されていた501®がはじめて東海岸でも売られるようになりました。すでにたくさんの米国民は観光用牧場でジーンズを目にしていましたが、同時にまだジーンズにふれたことがない人も多くいた時代でした。

リーバイス®は、このパンツに親しんでもらうために、1954年にシュリンク・トゥ・フィットの「ジッパーフライバージョン」を発売しました。ちなみにシュリンク・トゥ・フィットとは、洗濯して生地が縮むことを利用して、フィットさせることです。

さて、このジッパーフライのジーンズは501®Zと名付けられました。このジーンズには、リベットやシルエット、丈夫な生地という501®愛用者を魅了してきたすべての要素が盛り込まれていたため、多くのファンを生み出しました。その後、1967年に502という新しいロットナンバーへと昇華します。

歴代501®の中でもとりわけ細身のシルエットも特徴的で、LVCのなかでも指名買いのファンが多いモデルです。
■1955年「501®XX」
1955年製の501®は、50年代の形を体現するようなヒップ部分での‟アンチフィット”のつくりと、脚の部分のゆとりを持たせたボックス・シルエットの特徴を備えていました。

大文字‟E”の入ったリーバイス®のレッドタブ、ジンクボタンフライ、銅製リベットを備えていました。全身の947年モデル同様、ウエストを調整するアジャスターとしてはベルトループのみ、バックポケットには隠しリベットを採用。

レッドタブには両サイドに「LEVI'S®」の文字が記載されるようになったのもこのときから。

ツーホースの紙パッチをはじめて導入したのもこの年式から。
■1966年「501®」
1966年モデル、通称ロクロクの501®は、リベットの代わりに用いられたバータックと、Big Eレッドタブを併せ持つのが特徴。これは1966から1971年のわずかな期間だけに見られるディテールです。

1937年にバックポケットのリベットがデニム生地でカバーされたことで、リベットが家具などを傷つけるという難点を克服できた、と思われたが、穿き込むにつれ、そのカバーは擦れてしまい、リベットが露出し、結局は傷つけてしまうことが多かったといいます。

それを解決したのが「バータック」と呼ばれる棒状の強化ステッチ。これがロクロクから採用されたのです。

1971年からはレッドタブ両面に書かれたLEVI'Sが、Levi'sとなりました。
と、駆け足で不朽の名作501®をご紹介しました。ディテールにとらわれすぎず、あなたの相棒となる一本を見つけてください。
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Photo:Ryouichi Onda
Styling:Takahiro Takashio
Text:Takashi Ogiyama
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