テニスウエアを出自にもつポロシャツの元祖、ラコステのL1212。この名品誕生当時、テニスは上流階級が余暇に楽しむスポーツとしての名残が今よりもありました。だから、どこか上品さを感じさせます。

時は1927年、フランス人プロテニスプレイヤー、ルネ・ラコステは英国を訪れていました。そこで見つけたのが、汗をよく吸うニット生地でした。それまでテニス競技は今でいうドレスシャツのような布帛生地でプレイするのが一般的で、汗を吸ったその生地が肌にまとわりつき、競技に集中できない環境にありました。

ルネは英国で見つけた生地を元に、フランス中部の都市トロワでニット製造工場を営む友人と共同で、一枚のコットン製テニスシャツを1933年に開発しました。それがラコステのポロシャツであり、今なお現役のモデルL1212なのです。

その特徴は、当時としては裾丈が短く、半袖の先はリブ編みとなっていました。汗止めやフィット性が高められると同時に、生地は軽くてしなやか、風通しもよく、吸汗速乾性に優れる鹿の子編みでした。今日、世にあまたあるポロシャツの定番ディテールすべてが、オリジナルであるラコステのものには備わっていたのです。

また、ポロシャツといえば左胸にワッペンがつけられているのも常ですが、それもラコステのポロシャツが元祖。なぜワニなのかというと、食らいついたら離さない、ねばり強いプレイを信条とするルネのニックネームがワニだったことに由来します。

さて、世にポロシャツは星の数だけある、とは言いすぎでしょうか。しかし、ほとんどのブランドはポロシャツを毎シーズン送り出します。それだけ需要が多いということでしょう。そんな中でラコステのL1212をおすすめする理由は、元祖としてのプライドか、とにかく生地と作りがよく、その割に価格が手ごろだからです。もちろん、もっと生地がよく、作りのいいポロシャツはあります。逆にもっと安価な物もたくさんあります。前者はその分、高価で、後者は素材と作りが悪い傾向にあります。一方、ラコステのL1212はバランスがいいのです。

ラコステのL1212の出自はスポーツにあります。だから、ちょっとやそっとではへこたれないよう考えられています。生地は最高級のコットンであるスーピマ綿というものを使っています。これは超長綿の一種で、繊維が長いのが特徴。繊維は長ければ長いほど細い糸にすることができます。細い糸は肌への当たりが少ないので、触り心地がよくなります。

また、上品な光沢感を出すこともできます。さらに、この高級繊維をあえて甘く撚って糸にすることでソフトな肌触りも実現しています。洗濯を繰り返しても型崩れしにくく、甘く撚った糸はふんわりさを再現するので硬くなりにくくなっています。

このスーピマ綿糸を鹿の子で編んでいます。鹿の子とは、文字通り小鹿の皮のような模様で編まれます。編み目を表裏で交差させることで通気性と伸縮性がよく、つまり着心地がよくなる編み方です。ボタンは天然の貝を使い、ボディの色に合わせて白い高瀬貝と黒蝶貝を使い分ける念の入れよう。

縫製にもこだわっています。たとえば、袖付けには二重のステッチと、さらにテープによる補強が施されています。襟と襟ぐり部分には、ステッチに加えて、筒状のテープを配して耐久性と肌触りの向上をはかっています。

ちなみに襟にはナイロン糸を綿糸一本ずつに通し、型崩れしにくい配慮も。
■着こなし方
ポロシャツはビーチやプールサイドで着てよし、レストランで着てよし、と本当に便利なアイテムです。ショートパンツやデニムといったカジュアルウエアに合わせることはもちろん、ジャケットにも似合います。スポーツ性とドレス性の両面をこのシャツが持っているのがその理由でしょう。Tシャツのような軽快さと、ドレスシャツのようなシックさを兼備しているのです。Tシャツ感覚でショートパンツやデニムといったカジュアルウエアに合わせたとしても、ドレスシャツのような上品さを感じさせることができます。

一方、ジャケットなどのエレガントな装いに合わせると、ほのかにくつろいだ印象をにじみだせます。もちろん、ウールフランネルやツイードのような冬生地とは合いません。コットンキャンバスや薄手のサマーウールと合わせるのが正解です。ジャケットと合わせた際に、襟がジャケットの中に入ってしまわないよう注意してください。首周りの地肌が出てジャケットを着ていると、上品さを損ねます。前だけでなく後ろもジャケットに入り込まないように。
最後にサイズ選びを。サイズ表記は数字となっています。1がもっとも小さく、XSまたはS相当。2がSまたはMとなります。あまりぴったりしたものを選ぶと、乳首や胴回りが浮き出ます。かといって袖がぶかぶかしすぎるのもいただけません。試着してベストをお探しください。

ヴィンテージのフランス製をお探しの方も多いかと思います。独特の風合いがたまりませんね。私も大好きです。しかし、品質では日本製の現行品が勝っています。デイリーで着るのなら、現行品を強くおすすめします。
Photo:Ryouichi Onda
Styling:Takahiro Takashio
Text:Takashi Ogiyama
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