あなたの知ってる「常識」、間違っているかも?
みなさん、今着ているスーツは総裏ですか? 背抜きですか? それとも半裏?
「そんなの簡単だよ」と思ったあなたも、それぞれの違いや裏地の役割を詳しく説明できるでしょうか。「夏は背抜きで、あとは総裏でしょ?」とざっくり覚えている方は、本当の意味をこれから一緒に勉強してみましょう!
初級編:裏地の役割とは?
スーツのジャケットについている裏地には、重要な役割がいくつもあります。
①表地を守る
ジャケットを着ていると、どうしても背中が擦れて生地が傷んでしまいます。また、裏地がなくシャツと表地が直接触れていると、汗や皮脂などがだんだんと染み込んで、ヨレヨレのみすぼらしいジャケットになっていきます。

裏地が1枚あるだけで、表地が傷んだり汚れたりするのを防いでくれるんです!
②型崩れ・透けの防止
裏地がついていることでジャケットの表地の補強になり、型崩れせず美しいシルエットが長持ちします。さらに、薄い生地でも透けなくなります。着ている間は見えなくなる裏地ですが、まさに縁の下の力持ち。裏地がついているジャケットはよりフォーマルでかっちりとした印象になるんです!
③吸湿・放湿・保温
裏地は汗などを吸うことで着ている間のムレを防ぎます。特にキュプラなどの裏地は放湿性があり、生地を守りながら不快感も軽減してくれます。

さらに、重ね着しなくても布が1枚増えるわけですから、寒い時期には保温効果もあります。
④着脱をスムーズに
裏地は表地と比べてひっかかりなくスルスルと撫でることができますよね。何度も脱ぎ着するジャケットは、裏地があることによって着脱がスムーズになるんです! ひっかからず脱ぎ着できることで生地を傷めないことにもなるので、これも重要な役割ですね。摩擦を防ぐので、静電気も起きにくくなります。
中級編①:「総裏」って?
「総裏」とは、裏地がどんなふうについている仕様のことを言うでしょうか。そう、内側の全体に裏地がついているのが「総裏」です!
スーツの裏地は基本、総裏。海外のスーツではこれ以外がほぼないため、日本のスーツならではの用語ともいえますね。総裏のスーツは、先ほど勉強した表地の保護や吸湿・保温など、裏地の役割を備えているのが特徴です。
ここまでは簡単かもしれませんが、どんなスーツには総裏が合っているかまで答えられないと合格とは言えません。総裏を選ぶべきスーツをチェックしてみましょう!
Q.総裏は どのシーズンのスーツが良いの?
裏地には保温効果があるので、冬のスーツはもちろん総裏がベスト。ですが、春や秋も総裏が良いんです! なぜだかわかりますか?

春と秋は寒暖差が激しく、なかなか服装選びが難しいですよね。裏地は温度調節の役割もあるので、そんな時期にもぴったりなんです。
それだけではありません。春のスーツは秋冬と比べて明るい色合いのものを選びたいですが、透けたり生地が薄かったりするのが気になりがち。そんなときは総裏のジャケットにすれば、裏地が透けるのを防ぎ、シルエットも保ってくれます。
Q.夏のジャケットは総裏NG?
裏地が内側全体についているので、総裏は夏のスーツには暑いのでは?と思いますよね。では、夏のスーツで総裏は選ばないほうが良いのでしょうか?

答えはNO。暑いのは吸湿性が低く湿気がこもりやすいポリエステル素材のもの。キュプラの裏地は少し高いですが吸湿性が高く、夏でもムレを防いでくれます。
さらに、真夏でも冷房の効いた場所でのデスクワークが中心だという人は、総裏を選んだほうが表地を傷めることなくスーツを長持ちさせることができます。
総裏でもリネンやコットンなど、夏らしい素材の表地を選べば涼しげ。明るい色や薄い生地のものなら、なおさら裏地があったほうが安心です!

また、季節問わず高級な表地のスーツの場合は総裏をオススメします。高級な生地にはデリケートなものが多く、繊細な表地を守るためには裏地が欠かせません。せっかくの高いスーツを長持ちさせるためには、総裏を選びましょう。
中級編②:「背抜き」って?
それでは「背抜き」とはどんな仕様でしょうか? そう、ジャケットの背中部分の裏地を、肩のあたり以外省いたもののこと。
ここまで裏地の重要性を学んできたので、裏地がないとダメなんじゃないか?と思うかもしれませんね。どんなスーツなら背抜きを選ぶべきなのか、あなたは答えられますか?
Q.背抜きを選ぶべき人とは?
どの季節のスーツで、どんな仕事をしていて、スーツに何を求める人が、背抜きのほうが適しているのでしょうか?

背抜きは背中部分の通気性を良くし、汗でじめっとした暑さを感じにくくする仕様です。海外のスーツは基本的に総裏、と言いましたが、海外と比べて日本の梅雨や夏はとても湿度が高くて暑いですよね。裏地の吸湿性・放湿性を超える湿度に対応するため、日本の夏用スーツは背抜きにするのです。
特に、真夏に外回りの営業など、特に暑い場所でスーツを着用するという人は、背抜きを選ぶと少しでも涼しく感じられるはず。1シーズンだけならそこまでたくさん着るわけではないので、総裏にしなくてもすぐに傷むこともないでしょう。それよりも快適さを優先するほうがベター。

そして、長持ちしなくてもいいから とにかく値段を抑えたいという人にも、ポリエステルの裏地で背抜きにする、という選択肢はアリかもしれません。ポリエステルは安いですが暑いので、背抜きにすれば涼しく着られるというわけです。
上級編:「半裏」って?
総裏、背抜きの用語とメリットを押さえたところで、最後に「半裏」とはどんな仕様かを学んでおきましょう。総裏と背抜きの中間、ではありませんよ!

半裏は、背抜きからさらに裏地を減らし、前身頃についている脇の下から裾にかけても裏地なしにした仕様のこと。背抜きよりさらに涼しくしたい盛夏用のジャケットなどは、半裏を選ぶのもよいでしょう。

ジャケットは半裏にして、ベストも合わせた3ピースにするというのもひとつの手ですよね。我らが干場編集長の着こなしはこんなかんじです。ジャケットの背中部分に汗がシャツから染みるのも防げるうえに、暑くてジャケットを脱いでもきちんとキマりますよ!
これでスーツの裏地の基礎知識はバッチリです! 基本を押さえて、格好良くスーツを着こなすビジネスマンを目指しましょう。
Text:FORZA STYLE