ジャケットの下に着るシャツは、下着であり第二の皮膚でもある、と言われています。下着を辞書で調べると、肌に直接着る衣服、肌着とあります。つまり、シャツの下にさらにTシャツを着る人を見かけますが、アレは間違いなのです。
でも、シャツを直接着ると肌触りが悪いし、とにかく汗かきだし、白や水色のシャツは首や袖に汚れが目立つからインナーは欠かせない、という声も理解できます。もし、どうしてもインナーを着られるようなら、ユニクロのエアリズムマイクロメッシュの肌色のような、表面に見えにくいものを選んでください。
が、やはり、シャツの下に何か着るのは見映えがよくありません。
シャツの首元から見えるインナーは、ブラジャーの肩紐がズレて露見しているような様相とでもいいましょうか。また、透けて見えるインナーもブラジャーに変換してみると……品がいいとは言えません。

シャツは肌着なのですから一枚で着ましょう。肌触りが気になるというなら、生地にこだわってみるといいかもしれません。
シャツの生地は、コットン製がほとんど。そこにノンアイロンやストレッチのために化繊が混ざっているものも最近は多く見かけます。ここでも天然繊維であるコットン100%が一番。ただし、化繊混紡も見た目が天然素材に見えるのなら譲ります。
最優先すべきはご自身が気持ちいいと思える肌触り。仕事に集中するために着心地を忘れさせるシャツを求めるべきです。

シャツの中で高級とされるのは薄手のブロードやポプリンという生地です。目が細かく緻密な平織りの生地がそれ。表面にほのかに光沢感があります。また番手と呼ばれる生地を構成する糸の細さによってその光沢感はまた変わってきます。番手は数字が大きくなるほど細い糸を使っていることを意味します。ドレスシャツでは80~140番手くらいが主流です。数字が大きくなるほど肌触りは滑らかになりますが、生地は傷みやすくもなります。
ビジネスで週に二回ほど着用するのであれば100番手くらいがベターだと考えます。ただし、糸が細い、つまり高い番手でも双糸といって二本の糸を撚っている場合もあり、一概に高番手=繊細とならないこともあります。
パンツの裾幅の数値同様、数字はあくまで参考として、実際に触れてみて、どれが気持ちいいか、どれが耐久性がありそうかを見極めることが肝心です。肌が弱い方はなおさら注意深くお選びください。
また、ブロードやポプリンといったドレッシーな生地だけでなく、ビジネスではボタンダウンシャツに使用されることの多いオックスフォードやシャンブレーといった、ややくだけた印象を与える生地もおすすめです。これらはブロードやポプリンに比べ、耐久性が高く、手入れも楽なのが特徴なのでデイリーに着まわせます。

色は白か水色がベストです。ギンガムチェックやストライプを選ぶなら白地に青や水色の柄が入ったものを選びましょう。白い襟に水色や柄のボディを合わせたクレリックシャツもOK。
襟裏(台襟)やボタンが縫われている帯状の生地部分(前合わせ裏)にデザインが入ったシャツをよく見かけますが、これらは無駄におしゃれな主張が強く、自ら邪な気持ちをアピールしているようなもの。タイをしなくてもよくなった分、ついおしゃれを盛りたくなりますが、ぜひ避けていただきたい。
シャツは生地を縫い合わせることで完成されます。ジャケットやパンツのように裏地や副資材と呼ばれるパッドの類は使われず、一枚で仕立てられます(唯一、襟には芯材が使われることがあります)。その縫製によって着心地は左右するとも言われています。
とくに襟と袖は可動性が求められるので、その部分が手縫いされているものがいいとされます。手で縫うことでミシンよりもやわらかく縫製されるのがその理由。ただし、手縫いのシャツは高価です。
マスターピース(名品)として愛でるのならばおすすめしますが、実用を重んじるのならばパスするのが賢明です。シャツは肌着ですから、低価格でも清潔な物を常に着ている方がいい、というのは言わずもがなでしょう。
価格的には一万円以下、セレクトショップのオリジナルやシャツ専業ブランドのものでは、生地や作りにもこだわっていながら5000円ほどのものもあります。私は職業上、ハンドメイドのシャツも持っていますが、普段は5000円のシャツを着ています。そして、これで十分だとも感じています。

また、縫い糸の色にも気をつけたい。白いシャツには白い糸を、水色のシャツには水色の糸を。当たり前の配色が使われているシャツを選びたい。

台襟や前立て裏にデザインを取り入れたおしゃれとされるシャツは大人の男には必要ありません。白いシャツのボタンホールや襟の縁のステッチに青や赤の糸を使ったものを見ますが、そのようなシャツを着ている人は、「僕はおしゃれです。華やかな存在になりたいのです」とアピールして、場をしらけさせているのです。ビジネスの場にそのような配慮は無用。軽薄な存在だと自ら吐露する必要はないのです。
デザインはどれがいいか
襟はレギュラーカラーと呼ばれる挟角の小さい、尖った三角形のもを基本とします。そこから挟角が大きくなったワイドカラーと呼ばれる襟型になるにつれおしゃれな雰囲気を醸し出します。
つまり、基本であるレギュラーカラーが大人の男にはベストということになります。が、ワイドがそれほど大きくない、セミワイドカラーと呼ばれる襟型も現在は定番となっていますので、そちらも品を損なわない、つまり仕事にも適したデザインだと言えます。
襟にボタンが付いたボタンダウンカラーとは、アメリカのブランド、ブルックスブラザーズが1896年に作ったポロカラーシャツに源を発します。その名のとおり、ポロ競技から着想を得ています。

それは英国で見たポロプレイヤーのシャツの襟がパタパタと風になびき、競技に集中できないシーンでした。ならば、と襟にボタンを付けたのがはじまり。この襟型は100年以上の歴史があり、本来はスポーツ用のシャツですが、歴代のアメリカ大統領もスーツに合わせているほどで、現在はビジネスでもOKなものになっています。ただし、ややくだけた印象を与えるので、フォーマルな場での着用は避けるのが賢明です。
細かい点ですが、胸のポケットやボタンを留める帯状の前立ての切り替えがないものの方がフォーマル度が高いので、普段の仕事ではあってもなくてもどちらでも構いませんが、冠婚葬祭やそれに等しい場での着用はこちらも避けましょう。
また、襟の付け根である台襟にボタンがいくつか付いたシャツを見かけます。こちらは襟を高く付けるために台襟も高くなった結果、ボタンが複数個付いているのです。
なぜ襟を高く(かつ襟そのものも大きい)付けるのか。それはタイの結び目を大きくするため。タイによって複数個のボタンは見えなくなるのですが、ノータイでこのシャツを着ると(実際そういう人が多い)、ボタンが強調され、服の個性ばかりが前に出てしまい、着る人の内面のよさがスポイルされがちです。
このようなシャツは、元々シャツメーカーの技術力や創作性をアピールするために作られたものであって、普段の場で着るようなものではありません。首元のボタンはひとつでいいのです。
ボタン単体で見ると、プラスティックのものが主流ですが、天然の白蝶貝と呼ばれるものが高級とされます。ほのかな光沢感がこの貝ボタンは魅力です。白シャツに黒ボタンというのは避けましょう。シャツがおしゃれ過ぎて、内面のよさが見えにくいのです。
ご自身のサイズを知ることが大事
シャツの場合は、まず首のサイズを知ることから始める。タイをしなくてもよくなった現代の社会では、一番上のボタンを留める必要はなくなってきているかもしれない。しかし、仮に留めなかったとしてもブカブカやピチピチなのは一目瞭然。
39㎝がいわゆるMサイズくらいなので、この数値を目安にご自身の首にフィットするものを選んでください。首が締まるのは論外ですが、ゆったりしすぎなのもダメ。

ブカブカの服を着ている人は健康的に見えないのです。一番上のボタンを留めてみて、首周りのフィットを確認したら、次に身幅と袖と裾の丈に目を向けます。
身幅はボタンが悲鳴をあげるようなタイトは選ばないでしょうが、楽だからと大きすぎるものも同じくらい見た目がよくありません。
パンツに裾を入れると汚いシワがあちこちに露見するのがその理由。胸囲と胴囲の実寸プラス20㎝くらいがちょうどいいとされていますが、個人差は当然ありますので試着をおすすめします。
身頃(ボディ部分)の前または後ろに垂直にステッチ(縫い目)が入っているシャツは、そこで身幅を調整しているもので、この縫い目をダーツといいます。ひと手間加えているからいいシャツだという考えもありますが、これがなくても違う部分で体にフィットするように裁断および縫製されているシャツも多いです。ちなみに、肩甲骨の上あたりに水平に縫われた生地の結合部分はヨークといいます。

サイズ選びの中で袖丈も重要です。手を下してくるぶしが隠れるくらいがベスト。短いとジャケットを羽織ったときにシャツが見えなくなり、逆に長いと見えすぎてしまいます。
ジャケットの袖が合っていないとこの確認作業も無駄なので、ジャケットの袖丈にも当然ですが注意する必要があります。つまり、ジャケットの袖丈はシャツを下に着て、そのシャツの袖が1.5㎝ほど見えるものを選ぶということです。
裾全体も太過ぎず、細すぎずのものを選びたい。裾の丈はビジネスの場ではパンツの中に入れるのが常識ですから、座ったり、歩いたりして裾が出ないような長さを選びましょう。
また、肩と袖の接合部分が、ご自身の体型に合っていることも大事。

とあれこれとシャツはチェックすべきポイントが多いのですが、既製品で首、身幅、袖と裾丈すべてが合ったシャツになかなか出会えないのも事実です。
どこかで妥協は必要です。が、現代では手ごろな価格、1万円前後でオーダーメイドのシャツが手に入れられる時代です。一度オーダーメイドのシャツを着てみるのもおすすめです。最適なサイズを知ることができれば、今後の既製品選びにも役立ちます。
いずれにせよ、男のシャツには、シンプルなデザイン(色と柄を含む)、シワやシミのない清潔感、体型に合ったサイズこそ求める要素。それ以外、必要ないと言い切れます。







Photo: Ryouichi Onda
Styling:Takahiro Takashio
Text:Takashi Ogiyama
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