今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。©Seo Hiroshi
日本が世界に誇る服飾評論家・ドクトル赤峰の衣食住に迫る連載。第5回は、ドクトルが「ヴィンテージの専門店」と太鼓判を押す高円寺の名店「anemone(アネモネ)」です。
取材当日は、“アネモネデッドストック祭り”と称する入荷日で、酷暑日にもかかわらず店頭にはデッドストックを求める大行列が……。彼らとドクトルのお目当ては、バランタイン(BALLANTYNE)カシミアとデッドストックのコートです。ドクトル赤峰の事務所「インコントロ」の宮内里佳さんも、掘り出しモノショッピングに同行しました。

高円寺「anemone(アネモネ)」店頭にて、オーナーの提橋良太さんとドクトル
高円寺「アネモネ」の古着が、他店と違う理由とは?
赤峰 アネモネとはスイッチがバチッと合うというか、古着を扱っているけどレトロチックじゃないし、オーナーの提橋(さげはし)良太さんが考えるヴィンテージの概念がきちんと伝わってくる。ちゃんと「アネモネスタイル」があるのが気に入っているところですよ。
提橋 ありがとうございます。赤峰さんが初めて来店されたとき、「あっ、赤峰さんだ」とすぐ分かって、思わず目をそらして(笑)しまいました。壁にかかっているコートを見て、「このグレンフェル、いいじゃない」と言われて、購入していただいて以来のお付き合いですね。
赤峰 僕はコートが大好物だからね。
提橋 コートは一年中扱っていて、真夏でもよく売れます。買い物の醍醐味は、靴、バッグ、コートだと思いますが、自分も好きなのでどんどん増えていきますね。コートといえば、赤峰さんのインスタグラムをコーディネートと色使いの参考にさせていただいて、お客さんを接客しています。いつかは赤峰ブランドの「グレンオーヴァー」を仕入れて並べてみたいですね。

──赤峰さんが「アネモネスタイル」と言われましたが、提橋さんが仕入れでこだわっている点は?
提橋 買付のときに普通の古着屋ではあまり気にしないサイズバランスに気をつけて仕入れています。たとえばコートならジャケットの上にコートを着ることを想定して、裄丈(ゆきたけ)に気をつけます。もちろんコンディションも大事ですが、バランスが良いものを仕入れていますね。
赤峰 サイズへのこだわりも素晴らしいけど、メンズとウィメンズを半々に扱っているというのもいいよね。こだわりを追求したゴリゴリのメンズショップより、幅は広いけど、奥が深い。
提橋 メンズとウィメンズの割合が5対5になるようにしているのは、ご夫婦やカップルがどちらも楽しめるようにという思いですね。
赤峰 アネモネはね、アニキが散歩できない店だよ。他の古着屋と立ち位置が違うから、アニキには語れないよね。そこがはっきりしているから良いと思う。

極上のセリーヌのヴィンテージタートルを見て思わず微笑む宮内さん
入荷したばかりのバランタインカシミアを吟味する
──宮内さんはアネモネのどんなところを気に入っているんですか。
宮内 作りの良いレディースの古着で、自分が欲しいものになかなか出会えなかったんですが、アネモネの店内に入ったらグッと来て、それから通うようになりました。ヴィンテージやクラシックが好きな女性にとっては救世主的なお店ですね。
赤峰 このバランタインカシミアのデッドストック、凄いでしょう。古き良き時代のバランタインをよく知っているから、感涙モノですよ。古いロゴやタグも良いねぇ。
宮内 今日は開店を早めて10時から営業したそうですけど、もう半分ぐらい売れていてすごいですね。
赤峰 バランタインといえばカシミアだけど、内モンゴルのカシミアを牛耳っていたマーチャント(商社)のドーソングループが買い占めていた頃のカシミアは本当にクオリティが高い。ここにあるのはもちろん本物で、これはやばいよ。
堤橋 デッドストックを仕入れて驚いたのは、バランタインカシミアは当時48色もあって、ベージュだけで4色あります。特級カシミアでこれだけのカラーバリエーションは夢のようです。

赤峰 70年代ぐらいにパリの凱旋門の近くにあった「エミスフェール」という洋服屋が好きで、開店前に店の入口の日だまりで、ブレザーを着た60代ぐらいの女性が新聞を読んでいて、惚れ惚れして見ていたことがあったんだよね。エミスフェールはパリにありながら英国的だし、がちがちのブリティッシュではない加減の良さを気に入っていたんだけど、アネモネの品揃えがそれにダブる。ブリティッシュなものがあるけど、APCやマーガレット・ハウエル、ジョンスメドレーなども扱っていて、フレンチっぽいのがとても良い。
堤橋 コートは、バーバリー、アクアスキュータム、グレンフェルなど、靴はジェイエムウエストン、クロケット&ジョーンズ、タニノ・クリスティなどもあります。
宮内 それと、レディースのバッグが素晴らしいんですよ。
赤峰 バランタインカシミアを売り出す今日の行列も凄いけど、アネモネが本当に凄いのは正月の売り出し。寒い中に200人ぐらいが並んで、自分も一緒に並んだんだけど、途中でリタイアした(笑)。
堤橋 あの時は失礼しました。赤峰さんにも「並んでください」ってお願いするほど盛況です。

バランタインカシミアはデッドストックゆえ、色もサイズもデザインもまさに一期一会。お客さんもタグを見て真剣に選んでいる。
ドクトルの“もの作りの片腕”の宮内さんが、古着から教わるもの
──宮内さんは古着のどんなところに惹かれるのですか。
宮内 私は服を作る側なので、今の大量生産化された中では再現できない、絶滅した素材を使った独特の風合いや、偶発的にちょっと抜けた糸の見え方などに手の温もりや味わいを感じます。作りたいものや表現したいものがあって、それを手間暇惜しまずに、いいものを作ろうと没頭できた時代の職人の凄さや覚悟も感じますね。アネモネでピンときた服を見ると、毎回、やられた!という気分になります。同じように、インコントロにあるスーツ生地にも感動しますね。
赤峰 堤橋さんがコートの裄丈の話をして、宮内さんが手仕事について話したけど、それらを突き詰めると、「服は良いけど、似合っていないのはなぜか」という根源的なところに行き着くわけで、「服を自分の肌の一部として、フィットするか」というのは本当に大切なことなんだよね。
堤橋 うちが仕入れた商品を見ていると、エクストラファインメリノで出来たアクアスキュータムのコートと出合ったり、バランタインカシミアの微妙なカラー名を知ったり、ヴィンテージは本当に探求のしがいがあります。
宮内 私もお客さんとしてアネモネには楽しませてもらっています。
赤峰 洋服の楽しさは尽きることがないのを教えてくれる店ですよ。

堤橋 出会いといえば、ドルモアのシェットランドのデッドストックを見たら、サイズ表記がタグになくて、中に色の糸がつけてあるんですよ、サイズ44は紫とか。
赤峰 そうですよ。イギリスの60年代以降は、サイズ表記がなくて、ニットの裾に色でサイズ分けをしています。
堤橋 色糸の意味を知ったときは驚きました。
赤峰 70年代後半から80年代にかけて、イギリスのホーウィックに何度か行きましたが、そこにデッドストックを買い占める会社があって、ニットをサイズ別に並べてある棚は、色糸が付いている裾を前にして置いているんですよ。行く度にワクワクしてテンションが上がりましたね。それが、今は「アネモネでみっけ!」ですよ。
堤橋 今日はバランタインカシミアでしたが、今年はあと1~2回凄い仕入れがあると思うので、FORZA STYLEの読者の皆さんにはぜひインスタグラムをフォローしてください。
赤峰 他の店では絶対に出会えない往年の名品と巡り会えますよ。

高円寺「anemone(アネモネ)」
東京都杉並区高円寺南3-56-1 藤和高円寺103
TEL:03-5378-0751
営業時間:13:00~20:30
定休日:不定休
Instagram:@anemone_kouenji
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Photo:Riki Kashiwabara
Text:Makoto Kajii
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