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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION 干場の「エコラグ」

父の愛情がたっぷり詰まったカスタムテーラー ホシバのスーツ

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エコラグ-Hoshipedia 「エコラグ」とは、エコノミック・ラグジュアリーの略。economic luxury。極めて経済的だが、上質さやエレガンスは失わないスタイルの意味。「多くの粗悪なものより少しの良い物を」という干場の哲学により生まれた造語。腕時計や靴・鞄、スーツのように長い年月使えるものは高額でも、白シャツや白無地のTシャツのように常に白いまま清潔に着たい消耗品は、高額なものよりもコストパフォーマンスを重視するというスタイル。パテック・フィリップの腕時計やジョン・ロブの靴と、カミチャニスタやデッコーロの白シャツ、GAPの白無地のTシャツは干場にとっては同じ。一点豪華主義とも違う。干場が敬愛するブルース・リー先生が提唱した無駄を排した最短の動き(エコノミック モーション)で相手を倒すジークンドーのように、経済的で盛り過ぎない、かつ無駄のないシンプルで上質なスタイルを指す。

子どものころからオーダースーツを着ていました!

少し前に「干場の気絶ブログ」でも取り上げた「僕のたからもの」の再録。

これは僕が6歳のとき、小学校の入学式のために父が仕立ててくれたスーツです。ご存じの方も多いと思いますが、僕の実家は東京・駒込で代々テーラーを営んでおり、父がその3代目でした。

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本来なら僕が4代目を継ぐべきだったのでしょうけど、当時は格安の既製スーツが売り上げを急激に伸ばしていたころ。吊るしのスーツが一着3〜4万円で買えてしまう時代に、父は30〜50万円もする注文服は流行らなくなると思ったんでしょうね。それで、「お前は継がなくていいから、好きな道で生きていけ」と言ってくれたんです。

そんな父も、10年ほど前に他界してしまいましたが、幼少時代から何か行事があるたびに特別な服を仕立ててもらった記憶があります。周りの大人から見たら、本当に生意気なガキだったと思いますよ(苦笑)。

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この上着は、男性的な幅広のラペルに四角いボタンのダブルブレスト、組下のトラウザーズがフレアシルエットというのも時代を感じさせますよね。元気な小学生ということもあって、共地のショートパンツもセットに。「CUSTOM TAILOR Hoshiba」のタグは、まだ東京の市外局番が3桁だった昭和の面影を偲ばせます。

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裏地は半裏仕立てで、ロイヤルワラントをもつ英国製の生地を使用、スラックスの裾裏には当て布を施したりと、大人のスーツとまったく同じつくりなのは、今見ても驚愕です。

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あとで母に聞いたら、当時の父は かなり多忙で、眠る暇もなく働いていたらしいのですが、息子である僕には自分の手でつくったスーツを着せたいと、仕事の合間を見つけては一生懸命つくってくれたみたいです。決して口数の多い人ではありませんでしたが、「よしまさ」の刺繍にも、父の愛情をひしひしと感じます。

ちなみに父が誂えてくれた服は、これが初代。以来、いろんな服をつくってもらいましたが、小学校の卒業式には金ボタンのネイビーブレザーにグレーフランネルパンツ、中学校の卒業式はミディアムグレーのスーツ、そして成人式にはネイビースーツを着て出席した思い出があります。

ちなみに、成人式の夜、父とふたりで銀座にごはんに繰り出して、その後、美しい大人の女性がいるナイトクラブに連れて行ってもらったのもいい思い出。大人の世界に足を踏み入れるのに、ドキドキしたものでした。

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今、僕がこういう仕事をしているのも、父の影響が強かったのでしょうね。若い頃はテーラードの服が堅苦しく思えてカジュアルな格好ばかりしていたこともありましたが、いつの間にか流行に左右されないクラシックなスタイルに戻ってしまう。

やはり血は争えないというか、最近では気がつくと自分自身、子供の頃、父がしていたグレースーツに白シャツ、黒い細身のネクタイというコーディネイトばっかり。なぜ違う格好をしないのかという僕の質問に「これが好きで、落ち着くから」と答えていましたが、ようやくその心境がわかるようになった気がします。

お揃いのグレースーツを着て、また一緒に銀座に出かけたかったなあ。

Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:Toshiaki Ishii

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