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ナンバーがないと公道は走れない
新型コロナウィルスの流行で、公共交通が大きな影響を受けている。狭い空間の中で多数の人が長時間過ごすと感染につながるのでは?と思う人が多いようだ。すでに飛行機や鉄道、バスなどで減便や欠航が相次いでいる。となるとマイカー移動が理想に思えるが、すべての人がマイカーに頼ったら大渋滞確実。でも自転車は人力に頼るので長距離はつらい。
「じゃあセグウェイは?」そう考えた人がいるかもしれない。でも日本でセグウェイは、アメリカのように自由には乗れない。エンジンやモーターの力で走るパーソナルモビリティは、ナンバーがないと公道を走れないと法律で決まっているからだ。

例外となっているのが電動車いすで、6km/h以下であれば歩道を走行していいことになっているけれど、欧米では15km/h程度で走行できる国が多い。つまり性能的にはセグウェイに近かったりする。
アメリカでセグウェイが自由に乗れるのは、2001年にセグウェイが生まれた国であることも大きい。ルールがないならまずは走らせてみようという判断だ。
一方ドイツでは、環境対策から公共交通を使った移動を推し進めており、セグウェイはその一部になりそうなので法律を改正し、自転車道などでの走行が可能になった。

セグウェイが日本で禁止された理由とは?
ではなぜ日本はダメかというと、既存のルールに当てはめようとする国民性もあるが、過去に起こった事例が影響しているとも考えている。
2003年に現在の正規代理店セグウェイジャパンとは別の会社が、警察の許可を受けずに一般公道を走行したのだ。警視庁はこの会社の経営者を書類送検し、セグウェイは整備不良と判断された。
こうした経緯もあってセグウェイジャパンではルールに沿った導入を進めている。
公道走行は講習を受けたインストラクターによるガイドツアーに限定しており、それ以外ではプライベートな空間、たとえば空港や駐車場、スポーツ施設での使用に限定される。
それでも公道でインストラクターなしでセグウェイに乗りたいというならば、小型の農業用トラクターなどと同じ小型特殊自動車のナンバープレートが必要で、さらに普通自動車または普通自動2輪免許もいる。
とはいえアメリカでも、個人が自由にセグウェイを乗り回すようなシーンは目にしない。パーソナルモビリティとしてはかなり高価(日本での価格は100万円前後)であることが影響しているのだろう。
代わりに爆発的な勢いで普及が進んでいるパーソナルモビリティが電動キックボードだ。
以前から個人向けの販売はあったが、2017年にやはりアメリカでシェアリングが始まると、あっという間に世界各地に広まった。多くの国ではドイツのようにセグウェイのためのルールを作っていたので、すんなり導入できたようだ。

電動キックボードの価格は2~3万円あたりからと、セグウェイよりはるかに安い。しかも日本の自転車シェアのようなポートを持たないドックレス方式で、充電作業は有料でユーザーに依頼するなど、とにかく先行投資を抑えている。
なのに多くの人にとって便利なサービスだから人気なのだろう。パーソナルモビリティの主役の座をセグウェイから奪ってしまったような印象だ。
ところが日本はここでも既存のルールに当てはめようとしている。
ドイツのWind Mobilityの日本法人はさいたま市や千葉市などでシェアリングを展開しているが、他の多くの国と違って原付扱いなので、ナンバープレートやライト類がついており、運転免許が必要で、備え付けのヘルメット装着が義務になる。
一方日本のLUUPとmobby rideは、ナンバーなしで自由に乗れることを目指していて、公園や河川敷、イベント会場などで実証実験を続けている。昨年秋の東京モーターショーでは2つに分かれた会場を結ぶ遊歩道を、3つの事業者の電動キックボードで移動できるというメニューが用意された。
こうした動きを受けて、日本政府も重い腰を上げはじめた。今あるルールでは新しい技術やビジネスの導入が難しいときに、実証実験を行い、そこで得られた情報を使ってルールの見直しにつなげていくという「規制のサンドボックス制度」に、LUUPとmobby rideを認定したからだ。
つまりセグウェイはともかく、電動キックボードについては乗れる可能性が出てきた。
本格的に公道を走れるのはまだ先かもしれないけれど、欧米ではOKの乗り物が日本ではダメというのは移動の自由を阻んでいることにもなるわけで、導入への動きが加速していくことを望んでいる。
Text:Masayuki Moriguchi