FASHION ― 誰がアパレルを殺すのか

廃タイヤをリユースするブランドと考える“サステナビリティ”の理想と現実

2020.2.25 2020.2.25
2020.2.25

今月の取材のキーワードは“サステナビリティ”──この原稿を書いている段階で、持続可能なファッションの推進のため、在庫や売れ残り品の廃棄を禁止する「売れ残り品廃棄禁止法」がフランスで施行されたというニュースが飛び込んできた。

ファッション先進国だけあって、かけ声だけでなくアクションを起こすのはさすがだが、現実にファッション業界やブランドは“サステナビリティ”をどう考えているのだろうか。

サステナビリティは、リユース、リサイクル、リプロダクトなどと直結している。日本で初めて「廃タイヤ」を利用してバッグなどを製作している「SEAL(シール)」。このブランドを展開している株式会社モンドデザインの代表、堀池洋平さんにお話を伺った。

SEALの製品が直営店とオンラインショップでしか購入できないワケ

“サステナビリティ”と聞いて あなたならどう訳すだろうか。最近は様々な業種で頻繁に使われるようになって、一種の流行語のような扱いになっている。一般的には「持続可能性」と訳されることが多いが、その基準は常に変動していて、私たちのライフスタイルとも密接にリンクしながら変化を続けている。

今回取り上げるブランドのSEALは、主に廃タイヤを使用した製品をオリジナルデザインで作り、製造が困難な森野帆布や藤倉航装などの素材とのコラボ製品も人気が高い。東京・青山、横浜、香港に直営店を持ち、WWF(世界自然保護基金ジャパン)への寄付や動物保護団体との取り組みなども積極的に行っている。

代表の堀池洋平さんに聞いて驚いたのは、約6年前に小売店への卸売りを催事販売を除いてすべてやめたそうで、理由を尋ねると、「SEALの製品はしっかりスタッフが説明をして売りたいから」と答えた。現在は上記直営店のほか、オンラインショップでのみ購入できる。


青山・骨董通りを入ったところにある『SEAL表参道本店』

──青山の店内で「ビジネスマンにお薦めのバッグ」を持っていただきましたが、このバッグを選んだ理由は?

堀池 この3WAYビジネスバッグ エクスパンダブル(4万3780円・税抜)は、海上自衛隊が採用している最強帆布「森野帆布」を使ったもので、手持ち、ショルダー、リュックと使い分けられる便利な3WAYタイプです。これ一個あたり約2,000gのCO2が削減される計算になります。

──ずばり、堀池さんは“サステナビリティ”をどう解釈していますか。

堀池 難しい言葉ではありますね。最近よくサステナビリティという言葉を目にして思うのは、たとえ流行りだろうが一過性だろうが、言葉と接しているうちに心の中や記憶に入って来るので、5年後や10年後にそういう気運が盛り上がる可能性もあるということです。

──御社の製品を購入する方は、サステナビリティを意識しているとおもいますか?

堀池 お客さまは、たとえば防水性の高さなどの機能面やデザインのユニークさで購入されていて、「あ、実はエコな製品なんだね」という方が大多数だと思います。でも、使っていくうちに、周りの方に「この製品の素材は何だと思う?」という話題になって、ショップにご家族や友人を連れてきてくれることが多いのもSEALの特徴だと思います。

製品作りでずっと変わらないことは、「エコが主役ではない」

──確かにそうやって身近で使ってみて、サステナビリティを感じることはありますね。自分もフライターグのバッグをたまに使いますが、使っているとリサイクル、リユースということを意識します。

堀池 それでいいと思います。私たちが取り組んでいることは、リアルな環境問題への貢献という意味では数値的には微々たるものだと思います。でも、使うことで「意識を伝える」ことはできる。そういう役割になれればうれしいですね。

──SEALのモノ作りでサステナビリティはどこまで意識されていますか?

堀池 まず大前提として、製品を購入していただいた方には、使ってもらって楽しんでいただきたい。SEALには「デザインと価格と機能」という大きな丸があって、エコやリサイクルは別枠であるぐらいがちょうどいい。そうしないと率先して製品を使う気持ちにならないと思います。ずっと変わらないのは、製品としての魅力ありきで、エコが主ではないということです。

──SEALのようなブランドだと、お客さまからの声も近いですよね。

堀池 「こういう商品が欲しい」という声も多いですが、自分の家にあるタイヤを使って作ってくれないかというリクエストをよくいただきます。オートバイのタイヤが多いですね。でもなかなか一点物を作るのは難しいです。


全体を止水ファスナーとタイヤチューブ、防水ナイロンで覆った防水性能の高いバッグ。素材の組み合わせには積極的で、パラシュート生地や帆布とのコラボも人気が高い。
ワンショルダーバッグ エクスパンダブル Lite 1万5400円(税抜)
26歳のサラリーマンが「SEAL」ブランドを立ち上げた理由

──堀池さんはどうしてこういうエコなブランドを作ろうと思ったんですか。

堀池 もともと環境貢献には興味があって、「廃材を使って何かを作りたいな」と思っていました。引き金になったのは、レオナルド・ディカプリオが何かの映画祭に登場するときにプリウスで乗り付けたのが大きな話題になったことがあって、社会の意識の変化を感じました。それまでは どこか「エコってダサい」という感じでしたが、「そういうスタイルもカッコイイね」に変わった空気は感じました。

──「廃材」といっても多種にわたりますよね。

堀池 素材探しから始めて、ウェットスーツの生地や建築現場のシート、トラックの幌などいろいろ試してみました。ウェットスーツの生地は良かったんですが出る量が少ない、建築現場のシートは想像以上に普通で、製品にしたときに特徴が残りませんでした。

そうやっていろんな材料に得点をつけていったら、点数が高かったのが廃タイヤチューブでした。製品にしたときにタイヤチューブの素材の特性を活かせるし、世界中で何億本と出ます。素材としての特徴を残せて、製品にしたとき面白さが残るのが、合成ゴムの廃タイヤでした。

──なるほど。それが何年ぐらいのことですか?

堀池 2006年に会社を設立して、2007年4月に事業をスタートしました。自分が26歳のときですね。

──お若かったですね! 事業は成功すると思いましたか?

堀池 んー、あまり考えていなかったかも知れませんね(笑)。広告の制作会社にいて、サラリーマンをしながら2004年ぐらいから仕事の合間をぬって素材探しを始めました。タイヤチューブを使うと決めてからも、タイヤチューブの製品化のルートがなかったので、素材の調達から工場探しまでやって、2006年にルートができました。

──メイン素材の廃タイヤはどうやって調達しているのですか?

堀池 現在は8割方海外です。海外で集めて、洗浄までして、シート状にして毎月コンテナで日本に持って来て、国内工場で仕上げます。


ショップに飾ってある実際の廃タイヤ(右)
豊かな時代と豊かな暮らしと、サステナビリティについての提言

──今、世界的に「洋服の大量廃棄」が大きな問題になっています。SEALはアパレルではありませんが、堀池さんはどう見ていますか?

堀池 大量廃棄も難しい問題ですね。廃棄を少なくする、完全になくすとなると、みんなが少しずつ我慢をしなきゃいけない。我慢をすると続かないので、まず需給のバランスを考えないと。

──確かにその通りです。

堀池 エコやサステナビリティを追求していくと、「いい暮らしを捨てる」という方向になりがちですが、それはたぶん誰も望んでいなくて、良いバランスを見つけていく必要があるのかなと思います。今の中国や、過去の日本やアメリカが経済成長しているときは環境負荷をかけてきたわけで、環境負荷と経済成長は比例していると思いますが、それをどうバランスをとっていくかが大事ですね。いずれにしろ計画生産は難しい問題です。

──今後、SEALでの取り組みや堀池さんの夢などありますか?

堀池 SEALでは、親子やカップルが楽しく一緒に使うアイテムを少しずつ増やしていきたいですね。過去、くじらのバッグやシャチのバッグを作ってきて、今、店頭にあるのが、カメをモチーフにしたショルダーバッグです。

──堀池さんが背負ってみてください。

堀池 非常に薄く軽量な「藤倉航装のパラシュート素材」を加工して、重さ約200gという軽いショルダーバッグにしています。親子で揃って使っていただけるサイズを綿密に計算して、可愛らしい見た目からは想像できない容量を備えています。また、売上の1%をNPO法人日本ウミガメ協議会を通じてウミガメの保護に役立てます。


藤倉航装コラボ/タートルショルダーバッグ 1万2000円(税抜)

──個人的な夢はありますか?

堀池 個人的には日本で年間8千万本消費されているというビニール傘をなんとかできないものかと思っています。具体的には難しいですが、自分は「余分なものは買わない、ビニール傘は買わない」主義なので、つい再利用などを考えてします。

──SEAL代表らしい発想ですね。

堀池 自分はエコというより無駄が嫌いなんです。

SEAL表参道本店
東京都港区南青山5-17-12 リオン南青山1階

営業時間:12:00~20:00
火曜定休

03-6419-7362
SEAL brand


Photo:Riki Kashiwabara

Text:Makoto Kajii

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。©Seo Hiroshi

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