このギリギリとした痛み、孫悟空の気持ちがわかる……
誰でも一度は悩まされる「頭痛」。日本では約4000万人が慢性的な頭痛を有していると推定されています。これほどまでに身近なため軽く考えられがちですが、ひどくなると生活に支障をきたしたり、命にかかわる病気につながってしまうことも。
今回はそんな頭痛のなかでも最もポピュラーな「緊張型頭痛」について、その原因や対策をご紹介します‼
目次
◆緊張型頭痛とは
・緊張型頭痛とは
・緊張型頭痛の種類
・メカニズム
◆原因
・肉体的ストレス
①肩こりや首こり
②トリガーポイント
・精神的ストレス
◆なりやすい人
・女性
・デスクワークが多い人
・遺伝
◆片頭痛との違い
・原因
・痛み方
◆対策
・姿勢をよくする
・運動する
・ストレッチ
①首を左右にゆっくりたおす
②首をまわす
・入浴する
・ツボを押す
・高すぎる枕は避ける
・カフェインはNG
・ストレスを減らす
・市販薬
・漢方薬
・医療機関の受診
◆まとめ
◆緊張型頭痛とは
・緊張型頭痛とは
世界的に見ても日本は頭痛が多い国だそうですが、製薬会社の調べによるとそのうちの約70%が緊張型頭痛だそうです。
緊張型頭痛は、とくに前触れもなく始まり、後頭部から首にかけてじわじわと広がる頭痛です。症状が起きやすい時間は夕方~夜ごろと、一日の疲れが溜まってきた時間になります。
圧迫され締め付けられるような感じがダラダラと続き、筋肉が頭部を取り囲んでいるために「ハチマキや帽子で頭が締め付けられているみたいだ」と訴える人が多いそうです。西遊記の孫悟空がかぶっている金の輪を、三蔵法師が締め付けるシーンを思い浮かべると痛みのイメージが分かりやすいでしょうか。
・緊張型頭痛の種類
緊張型頭痛は「反復性緊張型頭痛」と「慢性緊張型頭痛」に分かれます。
反復性緊張型頭痛は痛みも軽く短時間で治るため、ほとんどの人は医療機関を受診しません。多くの人が感じる頭痛はこのパターンです。
対する慢性緊張型頭痛は、ほぼ毎日のように頭痛が持続するものを指します。緊張型頭痛が10年以上続き、次第に頻度や痛みの強さが増してくるというのが典型的な症状で、うつ病などの精神疾患を併発していることもあります。
慢性緊張型頭痛では中程度くらいの痛みを訴える人が多いですが、中には体を動かすと頭痛がひどくなったり、光や音に過敏になってしまうといった片頭痛に似た症状を訴える人もいます。ここまでくると片頭痛と非常にまぎらわしくなるうえ、生活に支障をきたしますので、なるべく早く専門医の診断を受けましょう。
・メカニズム
緊張型頭痛が起きる仕組みを学んでいきましょう。
筋肉の血流の減少や筋肉の硬化が見られたり、筋肉が痛む感じがすることから、筋肉中の神経を刺激するなんらかの原因が存在すると考えられます。ですがその一方で、筋膜からの刺激が三叉神経を介して脳などの中枢に影響するという中枢性の原因も考えられます。
おそらく頻度の少ない緊張型頭痛では末梢性因子が主な原因で、慢性の緊張型頭痛では三叉神経を介して末梢と中枢の両者が複雑に関係していると考えられています。
◆原因
緊張型頭痛の原因は、大きく「肉体的ストレス」と「精神的ストレス」にわけられます。原因をきちんと自覚することで、より対策がしやすくなりますよ‼
・肉体的ストレス
①肩こりや首こり
緊張型頭痛はほぼ100%、肩や首のこりと同時に起きます。なぜなら、肩こりもまた、血流の弱まりで起きるからなのです。
血液はおよそ1分で私たちの身体中を巡回し、老廃物を体外に排出しつつ酸素などの栄養素を全身に届ける役割を担っています。そのため血行不良になると、筋肉に沿って流れる血液の流れが滞り筋肉の老廃物が蓄積、血管が圧迫され、痛みや筋緊張感といった肩こりの症状が現れます。
こうして筋肉が緊張することで、神経が刺激され頭痛が発症してしまうというわけです。
★肩こりの原因や治し方はこちらをご覧ください
こんな肩こりの治し方が!?肩こりの原因と対処法
★首こりについての詳しい情報はこちらの記事をご覧ください
日常生活で感じる体の不調…それ、「首こり」が原因かも?
②トリガーポイント
近年では、肩や首のこり以外にも原因があるのではないかと考えられています。それが「トリガーポイント」です。「トリガーポイント」とは、普通なら痛みを感じない程度の圧迫によって痛みが誘発される部位のことを指し、ここが圧迫された際の関連痛として頭痛が誘発されます。
緊張型頭痛の人の中には、頭の周囲の筋肉にトリガーポイントが確認できる人がおり、この部分の筋肉の神経が何らかの理由で刺激されることが頭痛の引き金になっていると考えられています。
・精神的ストレス
怖い上司やつらい人間関係などの精神的なストレスにさらされると、体内ではアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは血管を収縮させるため、肩や首の筋肉の血流が減ってしまうのです。これにより肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。
また同様にストレスがかかると、頭や首の後ろ側の筋肉を交感神経が支配し無意識にいかり肩になります。このようにしてできるいかり肩は筋肉の強張りによるものですので、身体への負荷が非常に重くなります。あとは肩こりなどと同じです。
◆なりやすい人
緊張型頭痛は性別や年齢にかかわりなく発症しますが、そのなかでもなりやすい人というのが存在します。ここではそんな緊張型頭痛を起こしやすい人をご紹介します。
・女性
女性のほうが男性よりも、緊張型頭痛を1.5倍程度多い割合で生じます。
なぜなら一般的に女性のほうが血流が弱かったり血行が悪くなりがちだからです。冷え性の女性が多いことからも、これは納得できるのではないでしょうか。
・デスクワークが多い人
長時間書き物をしていたりパソコン作業をしていると、身体の節々が痛くなってきますよね。キーボード操作などで腕を前に出していると肩がこりますし、画面を長時間見ることによる眼精疲労も肩こりの一因となります。肩こりだけでなく、ずっと座っている体勢は全身の血流を滞らせます。オフィスでもエコノミー症候群になるのです。同じ姿勢をずっと取り続けていると、急性的に頭痛が発症することもあるんだとか。
ビジネスマンなどはやはりパソコンを操作する時間も長くなりがちなため、緊張型頭痛の患者さんは働き盛りの年齢の人が最も多いと言われています。
・遺伝
遺伝も全くの無関係ではありません。緊張型頭痛の家族内発生率を調べた研究によると、この頭痛にも遺伝的な要因が関係あるらしいということがわかっています。ただし、それを証明する特定の遺伝子はまだみつかっていません。
◆片頭痛との違い
頭痛は大きく二種類に分けられます。それが、今回ご紹介している「緊張型頭痛」と「片頭痛」です。もしかすると片頭痛の方が有名かもしれませんね。
ここではそんな二つの頭痛の違いについて説明します。対処法も異なるため、ご自身の頭痛がどちらのパターンなのか、しっかりと理解することが大切です。
・原因
緊張型頭痛は血流が滞りによって起きるのに対して、脳の血管が急激に拡張して起きるのが片頭痛です。 脳の血管が拡張することで周囲の神経が刺激され、その刺激で発生する炎症物質がさらに血管を拡張するという負の連鎖によって片頭痛は発症します。
心身のストレスから解放されると急に血管が拡張することがあり、そのため仕事のない週末などに片頭痛が起こることもあります。仕事の疲れがたまった平日の夕方以降に発症しがちな緊張型頭痛とはこの点でも違いがあると言えますね。
・痛み方
緊張型頭痛はギリギリと締め付けられるような痛みが短時間起こりますが、片頭痛はズキンズキンと脈打つような痛みが周期的に訪れる点がポイントです。
また、緊張型頭痛は多くの場合日常生活に支障をきたしにくいですが、片頭痛は身体を動かして頭の位置を変えると痛みが増幅したり、頭痛以外に吐き気、嘔吐、下痢などの随伴症状や、光、音、におい、気圧や温度の変化に対し敏感になるなど、重篤な症状が出やすいのも大きな特徴です。
◆対策
・姿勢をよくする
猫背であごが上向きの人は、首や肩の筋肉に必要以上の負荷がかかっています。それを改善するために、普段から背筋をまっすぐにしてあごを引くように心がけましょう。
また、スマートフォンの使い過ぎにも注意が必要です。なぜならスマホを見ているとき、人は自然とうつむきがちになります。するとストレートネックや肩こりの原因となるからです。
★猫背の原因や矯正方法はこちらをご覧ください
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・運動する
運動して全身の血行を促進し、筋肉を動かすことが頭痛対策としては必要です。ですがただやみくもに身体を動かしても意味がありませんし、内容によってはより肩や頭の痛みが加速してしまうことも。
緊張型頭痛に効く運動の基本は、バランスよく全身の筋肉を動かすことです。肩などのこりをほぐしたいからといって、首や肩だけ動かしていても強張りはとれません。使う筋肉に偏りのある野球やテニスは身体を痛めやすいですが、水泳のように手足を対称的に使う運動は痛めにくいですよね。これと同じことです。
おすすめなのは、左右の手足を対称的に使うラジオ体操。激しい動きがないため誰でも簡単にできますし、意外なことにラジオ体操は非常によく考えられた全身運動なんですよ。
・ストレッチ
①首を左右にゆっくりたおす
右手を頭の左側に添え、そのままゆっくりと右側に倒します。反対側も同じように5〜10回程度行いましょう。首の筋などを痛める原因となりますので、勢いをつけて伸ばしてはいけません。
②首をまわす
後ろを見るように首をゆっくり左右に回転させましょう。また、首をぐるりと回転させるのも効果があります。これをそれぞれ5~10回程度行ってください。これも決して反動をつけて行ってはいけませんよ。
・入浴する
たまにはゆっくりお風呂に浸かってみませんか? 温かいお湯で身体全体を温めることにより、首や肩の血流が改善します。また、よい香りの入浴剤や好きな音楽を聴きながらのんびりと入ることで心理的ストレスも楽になりますよ。
肩こりに効くのはあつ~いお風呂よりも、39℃くらいの少しぬるめのお湯です。肩までしっかりと浸かって、時間は10分を目安にして下さい。この入浴法は副交感神経の働きを高め、リラックスや安眠の効果もありますので、なんだか疲れたなというときにもおすすめですよ。
・ツボを押す
緊張型頭痛に効果的なツボをご紹介します。まず、首の骨の両側にある太い筋肉の外側のくぼみ「天柱」は、痛みに関係する神経が集まっている場所で、西洋医学でも痛みの緩和に活用されているツボです。
いわゆるこめかみのあたりにある「太陽」も頭痛や眼精疲労に効きます。そして頭頂部にある「百会」。ここを身体の中心に向かって垂直に押すのも効果的です。
ツボを押すときはゆっくりと痛くない程度に押してくださいね‼ やりすぎると逆効果なこともあります。
・高すぎる枕は避ける
枕があっていない場合も肩こりが起きやすくなります。頭が高くなりすぎる枕や沈みすぎる枕を使うと、一晩中悪い姿勢となり身体に負担をかけ続けていることになります。毎朝肩こりを感じるという場合は、枕を見直してみましょう。
・カフェインはNG
仕事や作業の合間、休憩中にコーヒーを飲むという方も多いのではないでしょうか。カフェインが頭をシャキッとさせてくれますよね。ですが、緊張型頭痛時にカフェインはNGなんです。
なぜならカフェインには血管を収縮させる効果があるから。緊張型頭痛は血行が悪くなることで起きる頭痛ですから、相性がよくないことはおわかりいただけると思います。
ちなみに、片頭痛の場合はカフェインを摂った方が痛みが緩和されることがあるそうです。片頭痛は緊張型頭痛とは反対に、血管の膨張によって起きる痛みのため、血管を収縮させてくれるカフェインが効果的なんだとか。もちろん、片頭痛であっても常に効果があるというわけではなく、場合によっては逆効果になってしまうこともあるのでご注意ください。
・ストレスを減らす
難しいことではありますが、なるべく精神的ストレスがかからない暮らしを心がけることが大切です。上手に仕事の合間にも息抜きをしたり、一人の時間を楽しんでみたりと、心もリフレッシュできるような工夫をしてみましょう。
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【今すぐ実践】職場で簡単にできる! ストレス解消方法7選
・市販薬
ドラッグストアなどで購入できる鎮痛薬は非常に便利ですよね。
緊張型頭痛のなかでも一時的な反復性頭痛に使用するのは特に問題ありませんが、既に慢性化してしまった頭痛に対しては要注意。飲み始めると毎日飲むことになるだけでなく、薬物乱用頭痛に発展してしまう危険があるため、きちんと医師の診察と処方を受けましょう。
・漢方薬
頭痛に効く漢方とされているのが、「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」です。これは、身体の中心であるおなかを温めて冷えをとり除くことで、血流を促し、頭痛を鎮める効果があるそう。そのため、頭痛だけでなく肩こりや冷え性改善も期待できます。
他にも、風邪薬として高い知名度を誇る「葛根湯(かっこんとう)」も緊張型頭痛に有効です。この漢方も、身体を温めることでうなじや背中の緊張を和らげます。
・医療機関の受診
以上にあげたケアはどれも専門的な治療ではありません。生活に支障がでたり、痛みが慢性的に続くようでしたら、すぐにしかるべき医療機関を受診してください。
◆まとめ
いかがでしたか? 地味に辛い緊張型頭痛を少しでも緩和するコツが見つけられたでしょうか?
スマートフォンが普及し、うつむきがちな姿勢をとることが増え、年々緊張型頭痛の人口は増えているそうです。頑張った一日の終わりに待っているのがギリギリとした頭痛だなんて嫌ですよね。
心身ともに適度なリフレッシュを心がけ、毎日軽やかに過ごしましょう‼
Photo:Getty Images
Text:K.S