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FASHION 赤峰塾!間違いだらけの洋服選び

【出汁の効いた服作り】ドクトルと鴨志田康人が語り合う、未来の紳士服とは?

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ジェントルマン道を極めるドクトル赤峰とファッション界のレジェンドたちが、イマドキファッションの風潮やヤワな着こなし、ガッカリスタイルなどをスパッと一刀両断! 男として、あるいは女として、「清く、正しく、美しく」生きるために必要な服装術や、服を着ることの意味・意義をストレートに語り尽くします。

ユナイテッドアローズの創業メンバーで、自身のブランド「Camoshita UNITED ARROWS(カモシタ ユナイテッドアローズ)」を手がけている鴨志田康人さんが、「ポール・スチュアート」の日本におけるディレクターに就任し、秋冬コレクションから直営限定アイテムを展開します。活躍の場を広げている鴨志田さんが、梶が谷の「めだか荘」にやってきました。

赤峰 では、めだか荘の2階をご覧ください。

鴨志田 ありがとうございます。スーツの生地はデッドストックですよね。

赤峰 40年代から50年代のヴィンテージの生地を見つけると、ついつい買っちゃうからね(笑)。こういう意匠性の高い生地は今では織れないですから。

鴨志田 生地の“カサカサ感”が絶妙にちょうどいいですね。新品の生地はどうしても脂(あぶら)が乗りすぎていますが、これぐらいの生地だと生地が落ち着いているので、仕立てる職人も仕立てやすいし、いい感じのドレープ感が出ます。

赤峰 そう、「生地が動かない」からね。めだか荘にスーツを作りに来る若い人も、「この生地、いいっすか?」って気に入ってオーダーしますよ。

鴨志田 すごいストックですね。圧倒される。かなわないな。

赤峰 この50年代のゼニアの生地、いいでしょう。

鴨志田 これは素晴らしい。色柄が豊かで存在感が全然違いますね。30年代以降から50年代までは本当に宝の山です。60年代以降になると生地があっさりしてしまう。こういう時間は楽しいですよね。良い刺激になります。赤峰さんの生地ストックを見ると、「クラシックはある意味、アヴァンギャルドでアグレッシブ」ということを改めて思います。

赤峰 まぁ、お互いに頑張ってやりましょう。

めだか荘に来る客を見ていると、次代のクラシックの予感がする

鴨志田 めだか荘に「AKAMINE Royal Line」のスーツを仕立てに来る人はどんな人ですか。

赤峰 最近は「クラシックに興味がある、クラシックを正しく知りたい」という若い人が多いですよ。中には昭和初期のコスプレみたいな格好をしてくる人もいるけど、20代のお客を見ていると、我々の若い頃の時代を感じる「目の色が違う」人もいます。次の時代のクラシックを作る可能性があるなとも思います。

鴨志田 そうですか。それは頼もしいですね。

赤峰 ただ、若い人たちは「服だけ着ていても中身が空っぽ」というのも多い。よく言うんですよ、「箸の上げ下げとかきちんとした所作を知らないと、クラシックは語れないよ」と。怖い親父が必要なんですよ。

鴨志田 僕らが若い頃にはたくさんいました(笑)。

赤峰 今は、「いいんじゃない、それもアリだよね」って言うけど、そんなの「絶対なし」なんですよ。本当に、はっきり言う人は誰なのかという。

鴨志田 服を着ていても「面白くない」というのが見えてきますよね。ブランドに頼っているし、着ている本人の思いが伝わらない。

赤峰 そう、カタチをなぞっているだけなんだ。よっぽど本屋やレストランの方が本気の思いが伝わってくる。レストランのオーナーシェフは自分でリスクをとってやっているから気合いが違うよね。アパレル業界も覚悟がないけど、一般企業にも経営に思想がない。もう全部がそんな感じですよ。

鴨志田 若い世代には頑張って欲しいですが、まず「歴史」をちゃんと知って欲しいですね。

赤峰 本当にそうです。歴史を知らないから、テンで話になりません。

「出汁が利いた服」作りには、東京から距離を置かないとダメ

赤峰 鴨志田さんは「スーツの未来」はどう考えていますか。

鴨志田 そうですね。スーツは楽しむための「社交服」に戻るんじゃないかと思います。

赤峰 そうなれば良いけど、今度は着ていく場所、社交の場がないよね。

鴨志田 ラウンジスーツといっても、ラウンジがない。

赤峰 まさにそう。建築やアート環境など、そういう空気の中で着る服が自分の満足になる場がまだまだ少ない。大きなトレンドの変化もないしね。

鴨志田 昔は欧米からトレンドが発信されましたが、もう出てこなくなりました。そろそろ自然発生的に日本の風土や文化に合うドレススタイルが出てもいい頃だと思っています。

赤峰 これからは地方ですよ。東京じゃダメだね。服作りも、原料となる羊や綿、麻、絹など、ローマテリアルに近づくことがサスティナビリティに繋がります。『ドーメル』がやっているように、「土から始める」ことも大事だと思う。東京から距離を置かないとダメですよ。

鴨志田 食文化と同じで、時間をかけて手を入れるのが「モノ作りの原点」ですよね。

赤峰 今は、美味しいモノは多いけど、「出汁の利いた服」がない。出汁をとった服は愛情が乗り移るから、10年、20年着られます。今は愛情がない服が多いから、年間何十億着という服が破棄されている。

服作りを通じて、「自分流」を作っていきたい

赤峰 そういえば、6月のピッティ・イマジネ・ウオモに「Camoshita UNITED ARROWS」を出展されていませんでしたね。

鴨志田 赤峰さんもピッティを辛口に批評されていますが、正直、我々が思い描く「本当のプロが集まってバイイングする場所」とどんどんかけ離れて、単純にフェスティバルになってきているので、発信する必要性が薄らぎました。

赤峰 なるほど。それは世界的に職人が減っちゃったからですよ。マーケティングで作るものは心を打たないんですよね。

鴨志田 本来なら、仕事が丁寧な職人と、新しい技術やスペックをいかに融合させていくかが大事なのですが……。

赤峰 今は、安価で大量に作れるのが基本ですから。古き良きモノを知る人が作る「新しいモノ」とは意味が違う。だから、ディレクションが必要なんですよ。

鴨志田 そうですね。Camoshita UNITED ARROWSもポール・スチュアートも、発信するコンテンツを通して自分の思いを伝えたいし、服が好きだから立ち止まりたくない。

赤峰 クラシックに重きを置く鴨志田さんがどうアップデートしていくか、凄く興味を持っています。欧米から教わったものと、日本という文化を通して、どう「自分流」を作っていくかですよ。

鴨志田 ファッションにはイタリア流とかアルマーニ流など、いろんな「流派」がありますが、自分はモノ作りを通して「自分流」を作っていきたい。Camoshita UNITED ARROWSも13年目を迎えますが、少しでも自分の思いを具現化したいという衝動でモノ作り・モノ選びをしています。

赤峰 それは頼もしい。その人の強い想いやスタイルは、必ず「伝わるもの」になります。

鴨志田 デビュー当時のアルマーニは前衛的でしたが、今ではクラシックになっているように、エクストリームなものがクラシックの中から出てきて前に進んでいきます。クラシックのアーカイブは、「時代を切り拓いていく本当のクリエーション」のためにあるので、自分のスタイルを持って進んでいきたいですね。

赤峰 鴨志田さんは優しいから、厳しい場面もあると思いますが、大いに期待しています。


ポール・スチュアート
https://www.paulstuart.jp/

「ドクトル質問箱」では、赤峰さんへの質問をお待ちしています。こちらforzastyle.web@gmail.comまで質問をお送りください。

ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com

Photo:Riki Kashiwabara
Text:Makoto Kajii



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