FASHION ― 赤峰塾!間違いだらけの洋服選び

ドクトル赤峰とドーメル社CEOが考える「高級スーツの未来」

2019.4.20 2019.4.20
2019.4.20
ジェントルマン道を極めるドクトル赤峰とファッション界のレジェンドたちが、イマドキファッションの風潮やヤワな着こなし、ガッカリスタイルなどをスパッと一刀両断! 男として、あるいは女として、「清く、正しく、美しく」生きるために必要な服装術や、服を着ることの意味・意義をストレートに語り尽くします。

こんにちは、赤峰幸生です。

1957年にデビューしたモヘア混の「Tonik®(トニック)」は、ドーメルの代名詞ともいわれる代表的な服地で、今日私が着ているスーツは27年前にトニックで仕立てたもの。ドーメル社の現CEOドミニク・ドーメルさんの父親は、トニックが完成した際、ジントニックで祝杯を上げたことからトニックと命名されたのは有名なエピソードです。

ドミニクさんが日本での発表会のためにパリから携えてきた革新的ファブリック「Tonik® Wool(トニックウール)」を見て、私が「先代はジントニックで乾杯したけど、この生地はトニックウォーターで乾杯ですね」と言ったら、彼はニヤリと笑いました。

手摘みワインのように想いが込められた特別なウール

赤峰 新作の服地トニックウールの魅力を教えてください。

ドミニク 今のお客様は、その製品が優れているという理由だけで買うのではなく、「何かに参加する、あるいは賛同する」ことが動機になりモノを購入します。ファッションなら、その製品を作っているメゾンの価値観やフィロソフィーに賛同するからこそ買うのであり、お客様にはまずドーメル社のフィロソフィーやトニックウールの成り立ちを理解していただきたいと思います。赤峰さんにはフィロソフィーをご理解いただいているので、トニックウールを早く着てほしいですね。

赤峰 そうですね。自分で仕立てて着てみたい。服は“着てなんぼ”のものなので、自分の身体で味わってみたいです。トニックもそうやって27年間着てきました。

ドミニク トニックウールはパタゴニア産ウール100%で、エンバイラメント=環境、ランドマネジメント=天然資源保護、アニマルウェルフェア=動物愛護を特に大切にしています。葡萄を一粒一粒収穫する手摘みワインのように、収穫している人の想いが込められている服地です。

赤峰 自然の中で育った美味しいお米のようなもので、昔ウイスキーのコマーシャルであった「何も足さない、何も引かない」のとまったく同じですね。

ドクトル赤峰が環境保全のために行っている身近なこと

ドミニク ただこの素晴らしいウールを縫うのにポリエステルの糸を使っては何の意味もなくなってしまうので、製品化のコスト面ではとても難しいのも事実です。

赤峰 そういうコスト面を考えるきっかけになればいいですね。たとえば再生可能な糸を使って縫うことができれば、将来的にリサイクルして生まれ変わることがかもしれません。

ドミニク 革製品でそういうトライアルをしている企業はあるので、このトニックウールでファッション業界全体を次のステップへと感化していきたいと思います。赤峰さんは環境について何か心がけていることはありますか。

赤峰 自分は、スーパーの袋は持たない、ペットボトルは基本的に買わないことに気をつけています。まず身近でできることからやっていかなければなりません。ですから、トップブランドが問題定義を発信することは、時間はかかると思いますがとても大事です。

ドミニク “リサイクル”のシステムができれば、消費の総量を抑えることもできます。

赤峰 イタリアのフィレンツェ近郊のプラトーは高級毛織物生産地として有名ですが、1970年代にインパナトーレというコーディネーターが生まれました。彼らは国内外の製糸、縫製と小売り業者を橋渡しして新製品の共同開発を促すのと同時に、再生ウールの選別にも関わっています。

ドミニク 日本では年間15億着もの洋服が破棄されているとニュースで知りました。

赤峰 これからの社会のキーワードは「もったいない」ですよ。経済優先の新しいモノが良いという考え方にはNOを突きつけて、まず捨てるようなものは買わない。私はそれをずっと実践しています。

スーツのエレガントさだけは、時代が変わっても変わらない

赤峰 ドミニクさんは世界中の高級スーツマーケットをウォッチしていますが、何か変化を感じますか。

ドミニク スーツは以前、ユニフォーム的なものとして捉えられていましたが、ユニフォームの域を超えてファッションアイテムになってきています。それに伴ってスーツ服地は、防水性やストレッチ性などの機能性が欠かせなくなりました。

赤峰 カタチや生地はもちろん、着る意味も含めてイノベーションしていかなければならない時代になっています。

ドミニク 時代によって価値観や着こなしが変わっていくのは当然で、将来は服を着ると、生地が「あなたは寒くないですか」とか「今日は具合が悪くありませんか」などと問いかけてくるウエアラブルな時代が来るかもしれません。

赤峰 ビジネススーツもまったく別物になっていくはずです。

ドミニク でも、スーツのエレガントさだけは、時代が変わっても変わらないものだと思います。また、自分らしさを感じる、心地良さを感じられるスーツは変わらないでしょう。

赤峰 ドミニクさんのおっしゃるとおりです。そういう傾向がオーダースーツ人気になっているのでしょうね。

ドミニク スーツに限らず、以前はすべてのブランドがファッションやトレンドを押しつけていましたが、今は、「自分が着る服は自分が決めたい」という人が増えて、カスタマイズやパーソナライズが世界的に増えています。将来のオーダーは、写真を撮って、サイズが合った服がすぐ仕上がって、自宅に配達されるという、赤峰さんのピュアなファッションの時代とはかけ離れたものになるかもしれませんね。でもそれも、時代に合わせて変わっていかなければならないものなのです。

赤峰 たしかにクラシックも時代に合わせて変わっていかなければなりませんが、先人の素晴らしい文化の形成があったから今があるわけです。今の世の中はファッションに限らず、「マネジメントはあるが、イデオロギーがない」時代。思想を持ってどう取り組むべきなのかを考えなければなりません。

ドミニク スマホで育っている今の若者と文化を見ていると、祖父との会話を思い出します。祖父は私に「世の中は変わったよ」と言いました。私は「おじいちゃんの時代の方が良かったの? 今の方が良いの?」と尋ねました。祖父は、「どちらかが良かったわけではない、違いがあるというだけだよ。時代に応じてそれに適応していかなければならない。それだけのことだよ」と言いました。昔の世代は戦争があって不安が多かった時代に生きましたが、今の先進国はその心配はありません。でも今の私たちもたくさんの問題を抱えています。

5代目として、これからのドーメルの進むべき道とは

赤峰 ドミニクさんのモノ作りの姿勢を見ていると、「前を向いてモノを作るんだ」という強い意志と意欲を感じます。

ドミニク まず現在ドーメルで働いている人たちの未来を作り、会社を発展させなければなりません。ただし、将来は不確実なものなので、会社は大洋を進む舟のようなものです。風向きに代わって方向を変え、常にフレキシブルな対応が求められます。

赤峰 ドーメルはまさに「進化するクラシック」ですね。私も進化していきたいと思います。
 

ドーメル青山店
03-3470-0251
https://www.dormeuil.com/jp/
 

「ドクトル質問箱」では、赤峰さんへの質問をお待ちしています。こちらforzastyle.web@gmail.comまで質問をお送りください。

ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com

Photo:Riki Kashiwabara
Writer:Makoto Kajii

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。

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赤峰幸生

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