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LIFESTYLE 天才 タカ大丸の御礼参り

元SONY社長に全力取材!「気絶するほど成果を出す仕事術」とは?

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ビジネスマンにこそ、学び直しが必要だ!

ただ、この話について「貧困脱出マニュアル」著者としては一つ引っかかる点があった。
21世紀に入って間もなく20年となるわけだが、その間にも時代は大きく変わった。日本の大卒初任給はここ30年ほど20万円少々が続いているわけだが、それ以外の先進国はデフレ脱却を果たしていて、米国の大学など一般庶民には到底手が出ないものになってしまっている。私が進学した18年前よりも、さらに狭き門になっているのではないか。一昔前にはなかった、入学費用の問題である。

「でも方法は色々あるんじゃないですか。僕が支援しているUWC ISAKなんかでも、5割以上は貧困家庭から来て、奨学金をもらって勉学に励んでいますからね。アメリカの大学でもスカラシップは結構出していますからね。あるいは三菱化学の小林(喜光)さんみたいに、イスラエルの大学を出てもいいわけでね」

イスラエルの大学なら私も1年間行ったのでよく知っている。イスラエルの大学は、ほぼ全部が国立なので、実は学費はそれほど高くないのだ。

 「僕はソニーの頃から北京にある清華大学と関係が続いていますし、上海にあるCEIBSというビジネススクールがあって、これは“チャイナ・ヨーロッパ・インターナショナル・ビジネススクール”です。ここも奨学金を出していますし、こういうところで徹底的に学ばないと、世界ではやっていけないんじゃないかなと思いますよ

出井が強調したのは「新卒一括採用、同一初任給という日本の仕組みはおかしい。各個人の能力によって就職の時期も給料も変わるのが世界基準だ」ということだった。善悪は別として、とことわりを入れなければならないがファーウェイは日本法人でも初任給40万円払っている。そちらが世界基準なのだ。

「たとえば、インドの工科大学に行ったら一律就職なんてするわけない。優秀さが違って、自ら全世界に売り込んでいけますからね。シンガポールにもいい学校がありますしね。そういう意味で言うと、ただ日本に生まれて、何にも興味を持たず、大学で過ごしているだけだったら、ちょっと先行きは暗いですね」

日本の歴史を欧米史観から見てみると

出井はすでに齢80を超えているが、未だに世界を飛び回っている。この取材の直前もスイスとフランスに行っていた。中国にも年に三・四回は行っているという。
「中国に行ったら、かつてヨーロッパの租界だったところが沢山あるでしょ。青島ならドイツだったし、上海ならフランスもイギリスもある。大連に行けば未だに“満鉄”と書かれたマンホールの蓋があったりする。歴史を学んだうえで、列強がそうやって踏み散らしていった足跡を見ておく、というのは大事だと思いますね。そういったところで、日本の歴史教育が全くなっていないんだけど」

日本史の授業はだいたい明治維新で終わる。それ以降は「なかったこと」になっていることが少なくない。歴史を知る、という意味で出井がぜひ薦めたいことがあるのだという。

「日本の歴史をね、アメリカ側から見ると面白いことが多いんですよ。たとえば、生まれた年のLIFE誌なんかを買ってみると面白いんですよ。生まれた年のワインを買って飲むだけが能ではなくて、そういう新聞雑誌を読んでみるといろいろわかることがありますよ。」

私タカ大丸が生まれたのは1979年(昭和54年)だった。調べてみると、ヨハネ・パウロ二世が史上初のポーランド出身法王となり、イラン革命が勃発してホメイニが天下を取った。そして英国でマーガレット・サッチャーが史上初の女性首相に就任した。

「私はその頃オーディオ事業部長で、CD開発なんかをやっていましたね」
行動力も知的好奇心も全く衰えていない出井が最近買い込んだ辞書があるのだという。

「金融用語辞典ですよ。金融の世界にはそこだけの用語があって、英語を学ぶだけでは不十分なんですよ。レポートを読んでもわからない。それで日本でファンドをやっている若い連中に“お前らはどうしてるんだ”と聞いてみると、“この辞書は必須ですよ”と言われた。たとえば、OPMと言って何かわかります? Other People’s Moneyなんですよ。金融王国に入ろうと思えば、そういう用語を知っておかなければならない。音楽をやるなら、楽譜を読めた上で音楽用語を知らねばならないしね。どこの王国に行きたいのか、ということですよ」

ここで私がどうしても出井に聞きたかったテーマがあった。「嫉妬」である。

 彼はソニーで役員を14人ごぼう抜きして社長に就任した。つまり周囲から嫉妬されてきたに違いない。嫉妬への対処を間違えると、足を引っ張られて失脚にもなりかねない。音楽用語の話が出てきたが、そんな音楽における嫉妬を描いた最高傑作が「アマデウス」である。私はほとんどの場合嫉妬するサリエリ側になり、そしてごくたまに嫉妬されるアマデウス側になり、今まで八回くらい見た。

「僕もあの映画は随分見ましたよ。最初はVHSで買って、それからDVDになったのも買いましたからね。あの映画は一回見るだけではもったいないし、理解できないですよね」

ではそんな出井がいかにして嫉妬に対処してきたのか。

「僕に言わせるとね、嫉妬が何ぞやと知りたかったらシェイクスピアの悲劇を読めばいいんですよ。シェイクスピアの主題とは、嫉妬であり、裏切りであり、密告も入っているでしょ。会社内にはシェイクスピアの時代と全く同じことが続いているんですよ。それはどんなにAIが進んでも変わらない。こう敵を胸の中に抱き寄せて、背中からナイフで刺す、みたいな。そういう目でシェイクスピアを見直してみるとみてくるものがありますよ」

気絶するほど仕事の成果を出すためには?

最後に、「ビジネスで気絶するほどの結果を出すために必要なこと」は何か聞いてみた。

質問の意味がよくわからないけど、メディアの世界なら大多数とは反対の意見を言うことですね。
あとね、僕個人のこだわりでもあるんだけど、フランク ミュラーの“マスターバンカー”という腕時計で、三ヶ所の時間を同時に表示しているものがあるんですよ。最大四か国分の表示ができるのもありますけど、あれは必需品でしたね。

トノウ カーベックス マスターバンカー
45×32mm/自動巻き/295万円(税抜き)/18KWGケース/クロコダイルストラップ
「世界の金融市場の現在時刻が瞬時にわかる時計があれば……」。天才時計技師、フランク ミュラーに友人である銀行家がつぶやいた一言がきっかけで誕生したマスターピース。
トノウ カーベックス マスターバンカー(参考商品)
45×32mm/自動巻き/295万円(税抜き)/18KPGケース/クロコダイルストラップ

それを見ながら、“今パリは何時だから電話してみようか”とかね。まあ、ロサンゼルスでこの時間と思って電話したら間違ってイスタンブールの時間だったから、“何時だと思ってんだ”と怒鳴られたこともあったけど。今はこれ(スマホ)で全世界の時間がわかるけど、ワールドタイムの腕時計で普段から意識付けしておくというのは大きいんじゃないかな。

あとね、最近インドへ行ったときにすごい横断幕を見たんだよ。“人間の物理的な歳は関係ない。どの世代の人と付き合って話しているかで年齢は決まる”って。あれは印象的だったな。写真を撮っとけばよかったんだけど、車の中から見て通り過ぎちゃったからね…なりたい世代の人と日常的に付き合うっていうのは大事なんじゃないかな」

次回の「お礼参り」もお楽しみに!

 

Text:Taka Daimaru

Photo:Yuji Hirose

クオンタムリープ株式会社
http://qxl.jp/



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