黒をクラシックの分脈で、真面目に試してみる
これまでスーツにトレンドは不要、と何度も言ってきましたが、そうは言っても気になる“英国調”。じゃあ、自分なりの解釈で取り入れるんだったら?という発想を起点に、スリーピースの“今”の着こなしを考えてみました。今回のスタイルを基本にしたアレンジ術の紹介も予定していますので、まずはここからトライしてもみてください!
アイテム
スーツ/guji
シャツ/クロスクローゼット
ネクタイ/タカシマヤ スタイルオーダー サロン
ポケットチーフ/ロロ・ピアーナ
メガネ/エルメス
時計/ヴァシュロン・コンスタンタン
ベルト/ジョン ロブ
ソックス/菅原靴店
靴/ラルフ ローレン パープル レーベル
ヨーロッパで、男の服装術の基本となるのは圧倒的にクラシック。あなたが、ハリウッドスターや世界的アスリートなんかのセレブだったら、いつでも、どこでも、好きな格好で全然大丈夫でしょう。
でも、大の大人が公の場に出るときに妙にデザインされた服を選んでしまうと、自分が気まずい思いをするだけです。例えば、ブラックスーツはモードの文脈で考えるとお洒落着のひとつですが、欧米のビジネスパーソンは普段まず着ません。理由は簡単。冠婚葬祭用だからです。
ただね、ここは日本! 黒をクラシックの文脈で、真面目に試してみたかったんですよ。色を使わないということは、その分、シルエットや仕立て、素材で勝負するしかないわけで、つまり本質的な部分が際立つことになります。そのストイックさに目覚めたというか、ここ最近ハマっているんです。ここを掘ったら、どんな世界が待っているんだろう、みたいな(笑)。
だから、ご法度なのはわかっていながら、英国調のスリーピースであえての黒を選択。あくまでも“わかっていながら”なんです。そんなこんなで試行錯誤して、クラシックな要素を取り入れながら、自分なりのバランスで“東京”の今を表現してみました。東京って、ヨーロッパの伝統的なクラス社会があるわけじゃないので、何でもありの世界ですよね。
でも、そういう古式ゆかしき厳格なルールに縛られない、混沌としたミックス・カルチャーこそが東京の面白さだと思うんですよ。東京にはグレーが似合うと思っているので、いつもはミディアムグレーのスーツばかり着ているわけですが、日本人は黒い髪なので、黒って似合うと思うんですね。
あと、どこで見たか記憶が定かではないのですが、トム・フォード本人が黒のスリーピースを着ている写真を目にして、それが滅茶苦茶セクシーだったんです。それが頭の片隅にあったんでしょうね。ストイックも突き詰めると、どっかでエロに転換する。そういう感覚なんですよね(苦笑)。 わかりますか?
スーツは、京都発信のセレクトショップ、gujiのオリジナルレーベル。最初はネイビーを購入したのですが、ブラックがあるのを知ってもう一着買い足しました。自分への言い訳は、冠婚葬祭に着られるから、持っておいて損はない。ただ、そんなに冠婚葬祭もないですからね(苦笑)。
それにブロードの白シャツと少しナローなブラックのウールタイ。靴はクロケット&ジョーンズでつくっているラルフ ローレン パープル レーベルのストレートチップです。クロケット本体のものは光沢のある革を使っていますが、こっちはマットな質感でスーツになじむんですよね。あくまでも私見ですが……。もちろんホーズも黒。このコーディネイトでは究極の黒スタイルを目指しました。
ちなみに、ポケットチーフの挿し方は僕が敬愛するトッズ・グループの会長兼CEO、ディエゴ・デッラ・ヴァッレさんに教わったやり方。スリーピークスのように見えますが、ちょっと折りたたみ方が違うんですよね。気になった方はチェックしてみてください。
今回のスタイルのキモは……。
● クラシックのルールを自分なりに解釈
● 黒のコーディネイトで本質を際立たせる
● “東京”に似合うスタイルを模索
● 冠婚葬祭クラシコブラック
● ストイックを極めるとエロになる
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
3冊目の書籍が発売しています。今回は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでない方はぜひ!
干場義雅が教える
「究極の私服」
(日本文芸社)
2冊目の書籍は、色気についてです。
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一流に学ぶ
「色気と着こなし」
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1冊目は、スーツの着こなし術から世界の一流品選びまで、基本的なことやお洒落の本質について書いています。読んでない方はぜひ!
世界のエリートなら誰でも知っている
「お洒落の本質」
(PHP出版)
【エロサバ】-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。