Google、マッキンゼー……超有名企業でも採用
仕事のパフォーマンスを上げたい!というのはビジネスマンであれば誰しも思ったことがあるはず。そこで取り入れてみて頂きたいのが、アップルのスティーブ・ジョブズが実践していたことでも知られている「マインドフルネス」。Googleやマッキンゼー、フォードなどをはじめ、今や世界中の有名企業の間で注目を集めている自己管理方法です。集中力を高めたいビジネスマンは必読。
目次
◆マインドフルネスとは何なのか?
瞑想との違い
マインドフルネスのねらい
ハイパフォーマーも実践
◆マインドフルネスの効果
①集中力・記憶力アップ
②創造力・発想力アップ
③寛容さが身に付く
④ストレス軽減・うつ病予防
◆マインドフルネスのやり方
①楽な姿勢を保つ
②呼吸に意識を集中させる
③雑念は気にしない
◆まとめ
マインドフルネスとは何なのか?
瞑想との違い
マインドフルネスというと瞑想を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、マインドフルネスと瞑想は似て非なるもの。瞑想は仏教における禅やヨガなどに用いられてたものであり、マインドフルネスはそこから宗教的な要素や精神性を取り除き、一般人も手軽に導入しやすくしたところに大きな特徴があります。
当初は仏教の禅から派生した概念で、東南アジアやスリランカで行われていた上座部仏教の瞑想法に由来しています。マインドフルネスがそれと違うのは、宗教色がないこと。むしろ現在は心理学や医学の領域での研究対象となっており、その効果も脳科学的に効果が認められています。
マインドフルネスが人の体や心に及ぼす影響を実証する学術論文は多くありますし、2013年には『タイム』誌でマインドフルネスが特集されたほどです。
さらにスティーブ・ジョブズがマインドフルネスを実践していた影響もあり、近年では経営学や企業経営、社員研修に取り入れる企業も増えています。
マインドフルネスのねらい
私たちの心の健康に保つためには、今の自分に起こっていることを、判断や批判なしにありのままを認識することが重要。しかし、普段の私たちの頭の中は常時、不安や心配事、このあとの予定や仕事内容のほか多種多様な雑念に支配されています。この状態だと何をするにも否定や不安が先行し、不必要なストレスをため込んだり、仕事のパフォーマンスも落ちてしまいます。
マインドフルネスは「今、この瞬間の自分」に意識を集中させ、現状をありのままに受け入れるようになることがねらい。これが普段の私たちには難しく、つい自分に過度な期待をかけたり、逆に自分を低く見積もってしまったりと、冷静に己を見つめることができる人は多くありません。
昔のことを思い出しては「あのときああすればよかった……」と後悔したり、未来のことを想像しては「また失敗するかもしれない……」と不安がったりと、私たちの大抵の不安や悩みは現在のことではなく過去や未来のことが占めています。たとえ現実に辛いことが起こっていなくても、辛い記憶を思い出したり想像するだけでストレスホルモンが過剰に分泌されてしまうのです。
こうした状況を脱して、今の自分に意識を集中させることで脳内の無駄な思考を減らし、今の自分に何ができるのか、もっとも大事なことは何かを的確に把握し、どんな時でもブレない自分でいられるようにするのがマインドフルネスなのです。
ハイパフォーマーも実践
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が瞑想を取り入れていたことから、世界中のトップビジネスマンに浸透。さらにはFacebookやYahoo、インテルといった有名企業をはじめ、マインドフルネスはアメリカ海軍や国防総省などの政府機関でも実践されています。中でもGoogleの実践は有名。マインドフルネスを取り入れたGoogleの最新脳科学に基づいたプログラムは「Search Inside Yourself(=SIY)」と呼ばれ、書籍も出るなど話題の先駆けとなりました。
『グーグルのマインドフルネス革命: グーグル社員5万人の「10人に1人」が実践する最先端のプラクティス』
マインドフルネスの効果
‐集中力・記憶力アップ
人間の脳には記憶や感情をコントロールしている海馬という器官があります。この海馬が瞑想を通じて活性化するため、集中力や記憶力アップにつながります。自分の気持ちを客観的に整理することができるようになり、集中力が高まるため仕事でのパフォーマンスが向上。また、柔軟な思考で物事をこれまでと違った角度でとらえることができるようになったり、感情にのまれず冷静な意思決定ができるようになります。
‐創造力・発想力アップ
人は新しい考え方を素直に受け入れられずに、ついワンパターンな思考をしてしまいがちです。マインドフルネスによって、これまではなかなか受け入れられなかった思考や価値観などを拒絶せずに受け入れることができるようになります。新しい考え方を取り入れられることによって、これまでの自分では思いつかなかったアイデアが生まれることもあるでしょう。
‐寛容さが身に付く
職場であれ過程であれ、相手に思わずカッとなって怒鳴ってしまったことはありませんか? ストレスが溜ってイライラしていると、余裕がなくなり些細なことでもついカッとなってしまうもの。マインドフルネスを通して自分を客観的に見つめ直すことで、心に余裕が生まれ日々のイライラからは無縁になります。
‐ストレス軽減・うつ病予防
人間の脳にはストレスや不安、恐怖に反応する偏桃体という箇所があります。この扁桃体が大きいとストレスに過剰反応してしまい、うつ病などの心の不調を引き起こしやすくなります。また、うつ病になると、先述した海馬の働きも落ちると言われています。マインドフルネスには、この扁桃体を減少させる効果、そして海馬を増加させる効果があり、結果的に不安やストレスの軽減につながると言われています。
ハーバード大学のサラ・ラザー准教授の実験によれば、1日45分間のマインドフルネスを8週間行った被験者の脳では、海馬の灰白質が5%ほど増え、扁桃体が5%ほど減少していることがわかりました。さらに体の不調は35%、心の不調は40%が低減したそうです。
一方でマインドフルネスの研究は発展途上にあり、とくに健康効果に関しては反論する論文もあるため、必ずしもすべての人に効果が認められるとは限りません。とかくいいことづくめであることが強調されがちなマインドフルネスですが、ダイエットや依存症治療などに効果がある証拠はないという研究もあるなど、すべての問題が解決するわけではないのでご注意を。
マインドフルネスのやり方
①楽な姿勢を保つ
一定時間くつろげる体勢であれば、立ったままでも座った状態でもOK。自分がリラックスでき、楽に呼吸ができる体勢を作りましょう。仰向けの状態でもOKですが、眠りに入りやすくなるため風邪をひかないように注意が必要。始めのうちは自宅など、一人で静かに集中できるところを選んで実践してみましょう。慣れてきたら職場の休憩時間や通勤時間なども活用しても○。
②呼吸に意識を集中させる
目は閉じても、閉じずにうつむいた状態でもOK。ビジネスマンであればデスクで資料に目を通すふりをしながらなら、周囲にも居眠りと勘違いされることもなくできるでしょう。楽な体勢で自分の呼吸に意識を集中させます。呼吸は3秒吸って5秒吐くくらいのゆっくりペースで。
長時間やる必要はなく、慣れないうちは30秒程度でOK。マインドフルネスの間だけは、今の自分の心配事や予定に意識を向けずに自由になることが大事です。
心を無にしたり、何もかも忘れようとするのではなく、今の自分を見つめることで自分の無意識の思考や感情の癖に気づくことができればなお良しです。
③雑念は気にしない
とはいえ、私たちが自分の思考だけに意識を集中させようとしてもなかなか難しいもの。チベットの高僧ではないのですから、雑念が入ってくることもあるでしょう。その時雑念が沸いたらダメだと無理に否定すると、リラックスするべき瞑想の時間が苦しいものになってしまいます。それは本末転倒。
雑念は無理に振り払おうとしないで、「雑念があるなあ」と思うだけで、それらに評価を付けたりはしません。否定的な感情が湧いてきたとしても「ネガティブになっているなあ」と感じるだけに留めます。自然に呼吸へと意識を戻していきましょう。
まとめ
1日の仕事のうちほんの数分程度でも取り入れられ、とても気軽に始められるマインドフルネス。宗教やスピリチュアルと誤解されがちですが、実際は科学的なリラックス法です。休憩や通勤時間の間などを有効活用してみてはいかがでしょうか。
Photo : Getty Images
Text : To Be