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「売れてるビジネス書は読んではいけない?」ビールがうまい本屋さんの提言

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ビールとブック、必然と偶然。ようこそ、新世界への入り口へ。

飲みながら読むか、読みながら飲むか、それが問題だ。本好きだけではなく、ビール好きからも熱い注目を注がれている下北沢の書店をご存じだろうか。

2012年7月、「ビールも飲める書店」としてシモキタにオープンした「本屋B&B」。Book&Beerが由来だ。ほかのどの書店とも似ていない、厳選&偏愛された書籍が一つひとつ異なるデザインの本棚に並んで、お客さんを誘惑している。よく見ると本棚や椅子、照明にも値札が貼られているではないか。ビールも飲めて、本も買えて、本棚や家具まで買える。これはもう、TSUTAYAを超えているのではないか。

「本屋B&B」の生みの親である、共同経営者の内沼晋太郎さん(37)は、自らを「ブックコーディネーター」と名乗り、アパレルのセレクトショップで本を販売するなど、書店の常識を打ち破る発想を実現させてきた辣腕だ。そんな「本の達人」に、40代ビジスネマンの本屋活用術を根掘り葉掘り聞いてみた。

ブックコーディネーターの内沼晋太郎氏@B&B

 

——本の並び方が他の書店とはまったく違いますね。背幅もまちまちで、色とりどりのカバーが美しく、見ているだけで刺激を受けます。棚からはみ出して、訴えかけてくるというか。

内沼:一般的な書籍の流通においては、多くの新刊は取次から勝手に自動配本されますが、うちはそれを取っていないんです。自分たちが売りたいと思う本だけを予約や注文をして、仕入れて並べています。売れ筋の本はそれほど扱っておらず、一般流通している本の中でも海外文学、自然科学、詩集、芸術書などの割合が多く、また直取引の商品も多いので、大手チェーン店ではあまり見かけない品揃えが持ち味ですね。

それは戦略でもありまして。街の単位で考えてみますと、シモキタには、古本屋もたくさんありますが、新刊もヴィレッジヴァンガードさんや三省堂さんがある。売れ筋が欲しいお客さんは三省堂さんに行けば良い。漫画やサブカルチャーなどヴィレヴァンさんが強いジャンルはヴィレヴァンさんに任せれば良い、と考えています。他店との差別化ともいえるし、共同関係ともいえる。三店で同じ品ぞろえをしてもお客さんが退屈する。シモキタに本を買いに来た人のために三店がそれぞれの特色を出せれば、いいなと思っています。

――海外文学の充実がいいですね。

内沼:店内はシモキタの新刊書店では一番狭く、30坪ほどしかありませんが、海外文学だけで5つほどの棚を用意しています。この街で、海外文学はいちばん充実しています。

一般的に本屋の棚割りは、売上効率で決めるものです。売上を上げるためには、おのずと棚の割合が売れ筋に向かいがちです。特に大手チェーン店では、しっかり需要に合わせる棚割りなので売れ筋がボリュームを占め、外国文学のような棚はなくなってしまうか、あっても小さくなってしまう。

でも僕らはB&Bが考える世界のバランスや広さをそのまま表したいので、棚の効率は二の次。その結果、海外文学や自然科学が好きなお客さんはうちに足を運ぶようになる

――店内にはベストセラー本が気持ちがいいほどありません。村上春樹さんの「騎士団長殺し」は入荷したのですか? 大型店では「タワー」になっていましたが。

内沼:村上さんの本は扱っています。今回も事前注文して、上下巻各3冊ずつ入荷しました。村上さんほどの売れ筋は、小さい書店にはそもそも注文しても入荷しないことも多いのですが、今回は新潮社さんがたくさん刷ってくださったようなので、入れてもらえたのだと思います。ただ、そういう本は大手に行ったほうが確実に手に入りますから、僕らとしてはそこも棲み分けだと考えていて、それほど力を入れてお願いして確保しようとはしていません。

シモキタの街に溶け込む、B&Bの外観

――外の看板に「ビールも飲めます」と記してありました。

内沼:ビールを出す本屋自体は「本屋B&B」以前にもあったんです。かつて西荻窪にあった「ハートランド」という古本屋さんは、店名の通り「ハートランド」が飲める本屋さんでした。大阪の「スタンダードブックストア」では、カフェで大阪の地ビール「箕面ビール」を出しています。

僕たちが他と違ったことがあるとしたら、『ビールも飲める本屋』と喧伝したことです。そのぶん味にこだわり、品質管理にも気を配っています。コーヒーは中目黒の「カフェ・ファソン」にオリジナルのブレンドをお願いをしている。本屋のドリンクは片手間でやっていると思われがちなので、味に期待をされていない場合が多いですよね。

その期待値の低さがチャンスです。「本屋なのにビールがうまい」と思ってもらえれば、話題にもなる。ドリンクの売り上げも大切な収入源ですから。

ビール片手に本を探す、至福。

内沼:僕が酔っぱらって本屋に行くのが好きだってことも影響していますね。お酒を飲んで気持ちが解放的になり、その状態で本を選ぶといつもとは違った選び方になる。翌朝、なぜ買ったのか、わらない本が置いてある。シラフで読んでもだいたい面白いんですよ(笑)。

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