浮気性なのは足だけですよ、足だけですって…。
さて、第13回めはエドワードグリーン(Edward Green)のダブルモンク「WESTMINSTER(ウェストミンスター)」です。じつは昔、冠婚葬祭用に意気揚々と「CHELSEA(チェルシー)」を購入したことがあったんですが、僕のワガママこじらせフットには定番の202ラストが合わなかったのか、早々に挫折…。やっぱりイギリス靴はダメなのかと諦めていたんです。でも、故落合正勝氏もエドワード グリーンを寵愛していたと聞いていたので、いつかは復活させたいな、と頭の片隅には残っていました。
そして月日は流れ…、2015年の1月に仕事でロンドンを訪れることがあったんですが、ちょっと時間ができたのでジャーミン ストリートにあるショップにフラッと立ち寄ってみたんです。すると、マイサイズの「ウェストミンスター」がセール棚に。やや興奮気味にスタッフに声を掛け、試着してみると、吸い付くような履き心地! スクエアトゥでつま先に余裕がありながら、甲も若干高め、さらにヒールのホールド感が高い888ラストは、僕のワガママこじらせフットでも対応可能だったのです。ワォ!
しかも、セールで520ポンドくらい。当時のレートに加え、20%の付加価値税 (VAT) が戻ってくることを考えると、57,000円程度。今回は、清水ダイブせず、何食わぬ顔でカードを差し出し、購入することに。ワォワォ!
ちなみに、この「ウェストミンスター」は、革をなめす際にオイルを入れているレザー「DELAPRE(デラプレ)」を使っており、油分が多いので触った感じも しっとりしているのが特徴。通常のカーフとは異なる経年変化をし、エレガントながら味わいのある表情が現れるとのことです。アンティークレザーとは異なりますが、履きこめば履きこむほど色合いが深くなり、表情も出てくるので、将来も楽しみ。それと、アウトソールには、多い日でも安心…、もとい雨の日でも安心なダイナイトソールを履いているので、ドレスシューズだと躊躇しそうな悪天候時にも履けるのが、とにかく嬉しいのです。そして、黒く見えるんですが、実はネイビー。この絶妙な色合いが、天邪鬼な僕のココロをビリビリさせてくれました。
正直言うと、ダブルモンクを購入するならジョンロブ(JOHN LOBB)の「ウィリアム(William)」だと思ってました。だって、ジョンロブのウィリアム・ロブ氏が、ウィンザー公のために、アビエイター(飛行士用)ブーツをヒントに考案したビスポークが起源で、これを後に既製靴にしたのが「ウィリアム」だったから。
ただ、いざ履いてみると、ダブルモンクって靴はドレスにもカジュアルにもハマり、思っていた以上に使いやすい。イタリアを筆頭に、海外でも履いてるヒトが多いのも納得なのです。
ってことは、別に一足に絞っておくのはもったいない! 「ウィリアム」も、なんなら編集長も愛用している「フィリップ II」も買っちゃえば、いいのか。そう! 「今買うしか、ないじゃない!」
Photo:Ko Maizawa
Text:Ryutaro Yanaka

『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。