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偉大な哲学者だって淡々とした日常を送ってた!?

カント、デカルト、ニーチェにソクラテス……。歴史上の哲学者たちは、あまりに偉大ですが、いまその肉声を聞くことはできません。

でも安心してください。分厚い哲学本に閉じ込められた賢人の知恵を、わかりやすく教えてくれる哲学者が、この極東の日本に存在します。その名は小川仁志先生。

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小川先生は京大卒業後のバブル華やかなりし頃、「伊藤忠商事」に入社するも退職し、その後4年ものフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後哲学者となった異色の経歴の持ち主です。

そんな人生経験豊富な小川先生だからこそ、ミドルエイジの恋やビジネスの悩みを、哲学者の教えを引きながら的確に解決します。

さっそく、今回の相談者のお悩みを紹介しましょう。

「仕事が面白くなくて、夜な夜なクラブに逃げてしまいます……」

Q.今年で社会人2年目になった、メガバンクのOL(23歳・総合職)です。おカネのことを勉強して起業したいと思い大手銀行に入社したのですが、毎日テストテストで死ぬほど退屈です。オンタイムは自分を殺してデスクワークをこなし、夜な夜なクラブに行ったりコンパに行ったりして退屈を紛らわせています。

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このままこの会社にいるべきか、見切りをつけて独立すべきか悩んでいます。友達には『ぜいたくな悩みだよ!』と言われますが、この会社にいると、自分のレーゾンデートルが薄れていきそうです。今後私は、いったいどうしたらよいのでしょうか?

「コショウばっかりほしがるのは、やめましょう!」

A.う~ん。毎日テストだなんて、そりゃ退屈ですよね。たいていの人は大きな夢をもって大きな会社に入ります。きっとこの会社ならやりがいのある仕事ができるだろうと。かくいう私もそうでした。ところが、大手商社に入ったものの、いつまで育ててくれるんだというほど即戦力には程遠く、研修のような日々が2年以上も続きました。それで刺激を求めて、結局4年で会社を辞めてしまったわけですが……。

今振り返ると、だいぶ焦ってましたね。大学時代は興奮を求めて毎日を過ごしてましたから、同じノリで社会や会社にもそんな毎日を求めてしまっていたのでしょう。でも、残念ながら現実はそんなに刺激的なものではないんですよね。じゃあどうすればいいのか?

イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、『幸福論』の中でこんなふうにいっています。「多すぎる興奮に慣れっこになった人は、コショウを病的にほしがる人に似ている」と。つまり、興奮を求めすぎると、かえって不幸になるということです。だから退屈に耐える力を養わなければならないといいます。

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「なんてしょぼいんだ!」などと思わないでくださいね(笑)。ラッセルは決してしょぼい人生に甘んじろなんてことをいっているわけではありませんから。この後で、彼は偉人の話をします。「偉大な本は、おしなべて退屈な部分を含んでいるし、古来、偉大な生涯は、おしなべて退屈な期間を含んでいた」と。つまり、偉大なことをやるには、この退屈な時間を耐え忍ぶことが不可欠なのです。

ソクラテスもダーウィンもマルクスも、みな素晴らしく地味だった

ラッセルは、生涯の大部分を悪妻と静かに過ごした偉大な哲学者ソクラテスの例、一生小さな町から出なかった偉大な哲学者カントの例、そして世界一周を成し遂げた後はずっと家で過ごしたダーウィンの例、大半の時間博物館にこもっていたマルクスの例を挙げています。たしかに、いずれも偉大な人たちですが、皆、日常は平凡に過ごしていたのです。

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問題はどうやってそれを耐え忍ぶかです。これについてラッセルは、別のところでヒントをくれています。それは切手収集にエネルギーを注ぎ込むある偉大な数学者の話です。その数学者は、人生の時間を数学と切手収集に二等分していたというのです。数学が行き詰まったら切手収集にエネルギーを注ぎ、また数学に没頭する。だからこそ数学研究もいつまでも続けられたのだと。

退屈な仕事を乗り切るには、熱中できる趣味があればよいということです。ちなみに、ラッセル自身は川を収集しているとか。どうやら川下りに熱中していたようです。そして彼もまた偉大な哲学者としてちゃんと名を残しました。

クラブで男を収集するのも、趣味といえなくはないが……

そういえば、偉大な人物には一風変わった趣味があるものです。スティーブ・ジョブズの禅、ウォーレン・バフェットのウクレレ、ビル・クリントンのサックスのように。

今の私の趣味は外国語マスターでしょうか。英語は趣味が高じて勉強法の本まで出しましたし、中国語は殺人的なスケジュールにもかかわらず週2回もレッスンを受けています。不思議なことに、どれだけ疲れていても中国語のレッスンは楽しいのです。そしてその後また気分を一新して、今度は本業の哲学書の執筆などに集中できます。

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ジャパニーズ禅は素晴らしい。タートルネックも好きです。

今、相談者は夜な夜なクラブやコンパにいそしんでいるとのことですが、それでも不満がたまっているということは、熱中できる趣味ではないのかもしれませんね。まずは心底熱中できる趣味を見つけて、二足のわらじで日々を楽しく過ごしてみてはいかがでしょうか。そうして退屈な時期を乗り越え、来るべき偉大な仕事をするタイミングを待つ。焦ってことを仕損じるより、よっぽどいいですよ。行き詰まる仕事を趣味で癒しながら、機が熟すのを待つ。

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実は私も会社を辞めた後、後悔しました。何の準備もせず勢いだけで飛び出したからです。待っていたのは、4年半のフリーターどん底生活。だから30代になって、今度は市役所で働きながら大学院で勉強し、何年も準備しました。それでようやく哲学者になるという夢を実現することができたのです。市役所で働きながら続けていた哲学の勉強が、当時私にとっての熱中できる趣味だったのでしょう。

最後にもう一つだけ、ラッセルのとっておきのアドバイスを紹介しておきましょう。彼は本当は趣味よりももっといいものがあるといいます。

「根本的な幸福は、ほかの何にもまして人や物に対する友好的な関心とも言うべきものに依存しているのである」と。

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そう、人付き合いです。人と付き合うことは、私たちを退屈から解放し、幸福へといざなってくれるのです。女子会でもなんでもいいでしょう。恋愛なら最高ですよね。仕事はもちろん、趣味も楽しみ、恋愛もする。これが幸福になるための王道なのです。大きい仕事をしたいのはやまやまでしょうが、頑張っていれば必ず機が熟します。その時まで、力をつけておけばいいのです。ただし、思いっきり人生を楽しみながらね。それこそが、デキる女、デキる男の生き方です!

Text:Hitoshi Ogawa
Photo:雪ボタン、Getty images

【小川仁志 プロフィール】
1970年京都市出身、京都大学法学部卒。伊藤忠商事に入社するも退職し、4年間のフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後名古屋市立大学大学院博士後期課程を修了し、博士号取得。2015年には山口大学国際総合科学部准教授となる。専門は公共哲学、および政治哲学。商店街で哲学カフェを主宰するなど、市民のための哲学を実践している。哲学に関する著書多数。

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