BUSINESS ― 誰がアパレルを殺すのか

オーダーメイドスーツに感動した原体験から生まれた「FABRIC TOKYO」

2018.11.2 2018.11.2
2018.11.2

僕たちは小売業ではなく、IT企業だと思っている

インターネットの普及・市民化によって、既存事業をIT化することはあらゆる分野で急務になっているが、「テクノロジーを武器にアパレル事業を最適化していく」と語るのが、アパレルIT ベンチャー企業の(株)FABRIC TOKYO代表取締役社長 CEOの森 雄一郎氏だ。

森氏は、「ある統計では、90%以上の男性はオーダーメイドでスーツやシャツを作ったことがないというデータがあり、D2C(Direct to Consumer)で古い業界慣習がいまだに残るアパレル業界を変革していきたい」と意気込む。

服が大好きなのに、店では何も買えない悲しい体験があった

取材を行ったFABRIC TOKYO銀座店に現れた代表の森 雄一郎氏は、前日納品されたばかりだというスリーピースにノータイというスタイル。「ビジネススタイルのカジュアル化が進んでいるのは事実で、スーツの着方も僕のように自由になってきています。いつもはスーツにスニーカーを履いているし、今日のような格好が受け入れられる世の中になってきているので、私たちの事業が伸びています」とはっきり言う。

現在32歳の森氏が「インターネットでオーダースーツを身近にする」サービスを立ち上げたのは2014年。当時のことを振り返ってもらうと、「最近はオーダーメイドスーツやパーソナルオーダーなどが隆盛ですが、当時はマーケットの盛り上がりもあまりありませんでした。そもそも自分は腕が長くて既製スーツが着られず、ずっと体型に悩んでいました。服が大好きで、東京にはこんなに店があるのに、サイズが一切合わず、何も買えずに帰ってくるという悲しい体験をたくさんしましたね」と振り返る。

「そんなときに友人にオーダーを薦められて、出来上がったスーツを着たら感動したんです。その感動を広めたくて、購入体験を身近にするインターネットを駆使したブランド・サービスをスタートしました」と言う。

後から作った店舗は、「モノを売らないお店」

――この連載は、アパレル不況に立ち向かう新しい事業を紹介するとともに、最近では読者の“ITとファッションの融合”への関心も高まっています。

 いいものをお客様にダイレクトに売るのにインターネットを使って、購買体験を前提として楽しんでいただく「デジタルネイティブなブランド」としてFABRIC TOKYOをスタートしました。ブランド・サービスが先に立ち上がって、現在首都圏に8店舗ある店は後から作っています。

――ネットベンチャーですが、やはり店は必要ですか。

 私たちの中で店舗は「モノを売らないお店」で、インターネットで購入することをサポートする場所です。店舗スタッフも“コーディネーター”と呼んでいて、あくまでお客さまの購入のサポート役という位置づけです。

家に帰ってお酒でも飲みながらリラックスして生地選び

――購入の手順を教えてください。

 初回の方のオーダープロセスはまずアカウントを作成していただきます。次に来店していただき、コーディネーターが採寸、見本のサイズゲージを着用して着心地のチェックをし、ヒアリングを行ってお客様の好みをデータ化します。サイズゲージの着用を含めた、計測のみならスーツで約30~40分、シャツなら約10~15分ほどのお時間をいただきます。

――来店は予約が必要ですか。

 来店のご予約はお客様の半分ぐらいですね。もちろんフリーも歓迎です。フリーで初めて来られた方はお店でアカウントを作成していただき、簡単なアンケートの後に、コーディネーターが採寸に進みます。

――壁にある「生地見本」が目をひきますね。

 私たちは「ファブリックカード」と呼んでいますが、常時300種類ほどの生地見本を壁一面に並べて展示しています。店舗では「ファブリックウォール」と呼んでいて、お客様にはこの生地の中からお好みを選んでいただきます。しかし、「その場で決められない」という方もいるので、お一人5枚までお持ち帰り可能です。帰宅後でも、ゆっくり生地見本を見て、触ってから、ネットでオーダーができると好評です。


――それはユニークですね。生地見本をめくると詳細なスペックが記載されています。

 生地はすべて“タグ付け”していて、生地の色や柄、素材はもちろん、ストレッチ、耐摩耗性などの生地特性や、着用に適した季節(通年向けなど)、着用シーン(ビジネス、パーティ-、カジュアル、フォーマル)などと、プライスを表示しています。

――どんなシーズンに、どんなシーンでの着用に適しているかが一目瞭然です。

 FABRIC TOKYOで取り扱っている生地数は、他ブランドに比べて、数は10分の1から20分の1だと思います。しかし、他社にはない面白い素材を揃えていて、たとえば出張や移動が多いビジネスマン向けには防シワ・イージーケアできる「Travel」や、ロードバイクで通勤する人の必需品であるリュックを背負うのに適した強靱な素材をスーツに活かしてみたり。自宅で洗って速乾できる素材やスーパーストレッチなどもあってどれも好評です。

――いわゆる機能性素材を武器にしていると。

 私たちのビジネス・コンセプトは「Fit Your Life」です。オーダーメイドの良さであるサイズフィットは当然のことで、ライフスタイルが多様化していく中で、ぴったりな素材に出合える提案をしています。

僕たちは小売業ではなく、IT企業だと思っている

――FABRIC TOKYOのターゲット層や実際の購買層を教えてください。

 私たちは80年前後から以降に生まれたミレニアル世代がメインターゲットで、ネットで情報を集める人、EC購買に抵抗がない方が多く、32~33歳が中心になっています。オーダースーツブランドでは一番若いと思います。

――若いお客様からはどんな声が多いですか。

 多いコメントは、「2着目以降、ネットで買えて便利」とか、「買いやすい」、「ウェブサイトが一番使いやすい」などでしょうか。「新しいスタイルのスーツの買い方ですね」という声もいただいています。

――御社の事業はまさにD2C(Direct to Consumer)ですが、メリットを教えてください。

 オーダースーツの「高価で敷居が高いイメージ」を打破するのに、D2C(Direct to Consumer)は最適です。消費者がこんなに変化しているのに、供給側がスピードについていけていないのは事実で、特に業界が古いアパレルはお客様のニーズにフィットしていません。僕たちは小売業ではなく、IT企業だと思っているし、ITの仕組みを中心とした“ユーザーエクスペリエンス”の重要性はビジネスの核でもあります。デジタルを活用して、ライフスタイルの変化に合わせて提案していくクイックネスはこれから必須。デジタル分野が伸びる限りは、うちの会社も伸びていくと思います。

――他にD2Cのメリットはありますか。

 FABRIC TOKYOは中間流通を一切通さず、工場と直接取引して、自社で生産管理も行っているので、シーズンを通して適正価格で提供できます。お客様からも「セールをしないので、価格に信頼感がある」という声をいただいています。また、お客様ばかりではなく、縫製工場にも適正な工賃を払えるので、win-winになるのもD2Cのメリットだと思っています。

テクノロジーを武器に世界へも発信していきたい

――IoTという意味ではライバル企業も多いですね。

 外部からはそういう目で見られますが、社内では競合他社の話はほとんど出ません。それより「アパレル業界は自社を意識した方がいい」と言っています。今は他社を参考にするよりも、市場の変化やお客さまのマインドの転換を見定めたい。アパレルは市場規模が大きいので、「正しいことをしていれば、ファンになってくれる人が多いはずだ」というのを信じていて、プライスもユーザーアンケートをもとに納得感がある価格にしています。

――森さんの中でFABRIC TOKYOの将来像は。

 売上金額が重要ではなく、世の中に大きな影響を持つ企業になろうという思いで取り組んでいます。FABRIC TOKYOの「TOKYO」は、ダイバーシティの象徴であるTOKYOという意味で、メイドインジャパンというモノ作りの良さも合わせて、将来的には世界にも発信したい。目線は高く、広く持っていたいです。

――「ビジネスに勝算あり!」ですね。

 私たちが掲げる「Fit Your Life」というコンセプトは、あらゆる人に当てはまるし、多くの人に広げていく可能性があります。コンセプトを大事にしながら、テクノロジーを武器にして、IT的にアパレルブランドを構築していくことが、ユニークな購買体験を生んで、一人ひとりのFit Your Lifeに繋がっていくことを確信しています。

【問い合わせ】
FABRIC TOKYO銀座店
東京都中央区銀座7-5-5 長谷第一ビル 1F A室
TEL.03-6274-6090
12:00~21:00(11月1日より11:00~20:00)
https://fabric-tokyo.com/

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii
 

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