夜の匂いがする着こなしに、エロいスパイスは欠かせません
昔、大流行したタキシードの上着を使った着くずしスタイル。かつてはファッションデザイナーがこうした格好でパーティに出席している場面が多く見られましたが、今だって十分イケるはず。そう思い立ち、干場が遊び心のあるフォーマルスタイルに挑戦。世界三大建築家のひとりであるミール・ファン・デル・ローエが提唱した“レス・イズ・モア(less is more)”の感覚で、余計なものを削ぎ落としていったら、新鮮で美しいスタイルができあがりました。
アイテム
ジャケット/ニール・バレット
Tシャツ/Gap
ジーンズ/ZARA
メガネ/モスコット
時計/セイコー
靴/パトリック
(すべて干場私物)
昔、流行ったタキシードの上着を使った着くずしを、今の時代に合わせてアップデートしてみたらどうなるだろう? そう思ってトライしたのが、このコーディネイトです。15年くらい前ですかね、エディ・スリマンやトム・フォード、ドルチェ&ガッバーナなんかがこぞってやっていましたよね。ランウェイショーのエンディングには、みんなこういうスタイルで登場する。あれ、カッコよかったなあ。当時だったからよかったのか、それを検証してみたくなったんですよね。
ラペルに拝絹が付いていると古臭く見えてしまいますが、ブラックのジャケットにジーンズだったら、今でも十分スタンダードなスタイルとしてありだと思うんですよね。このニール・バレットのジャケットは、ピークドラペルになっていて、フォーマルっぽい雰囲気もあるんで。スリムジーンズはZARAで買ったものの、最初はしっくりこなくてしばらく寝かせていたんですね。
で、どうせ穿かないのならと思って、裾をハサミで切りっ放しにして、左膝に切り込みを入れてみたら、なんだかいい感じになったじゃないですか! 編集部のサトシーノが、某ラグジュアリーブランドのものと勘違いしたぐらいですから、なかなかの完成度だと思います。余談ですが。
普段はブランドが主催する業界系のパーティは、たいていフォーマルなスーツで出席するんですが、あまりにみんな決めすぎのときは、逆にハズしたくなるんです。根が、天邪鬼なんでしょうね。みんながスラックスをきれいに穿いていると、あえて腰ばきしたくなってしまう。
ただ、そこから醸し出されるエロスって絶対にあると思うんですよ。「いつもはスーツで決めていらっしゃるのに、なんで今日はジーンズなの?」「なんかあったのかしら?」みたいな……。悪目立ちってことじゃないですよ。そうやって気にしてもらえれば、会話のきっかけにもなるじゃないですか。
でも、このコーディネイトの究極のエロは、上半身を脱いだときでしょうね(笑)。僕が好きな映画の『ファイト・クラブ』(1999年製作)で、ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンが、男たちの秘密の集まりで、確かグレーパンツに上半身裸のまま殴り合いを始めるシーンがあるんですけど、あれを観た瞬間、「これだ!」と思いましたもん。もう、究極のエロですよ。それを干場流に一歩進めたのがジーンズに上半身裸のスタイル。自分のなかで、間違いなくエロのトップ5に入りますね。
で、「これはいただき!」と思ったものの、いまだにそれを披露するチャンスがないんですよね。仮に、僕が美女とのベッドシーンがあったとします。そしたら、まずはジャケットを脱ぎますよね。その次は絶対にTシャツですね。そして、きっとしばらくそのままでいるでしょうね(笑)。
ここでキモになるのが、脚の付け根のライン。これは鍛えていないと出ない線なんですけど、それがローライズのジーンズから、はみ出して見えるのがセクシーだと思うんですよね。僕も、かろうじてキープできているんで、いつかいつかと、その日が来るのを首を長くして待っているんですけど、まだ来ませんね。
あれ、なんの話していたんでしたっけ?
まぁ、話を戻すと、インナーはGapのストレッチT。ジャケットのブラックとはコントラストをつけて、ホワイトを選びましょう。で、足もとは僕が手がけたパトリックのクルーズラインのスニーカーを合わせました。アッパーはブラックでソールがホワイトになっていて、このコーディネイトにばっちりハマります。今日は、話がとっ散らかってしまいましたが、要は身体は鍛えたほうがいいってこと。それで、チャンスがあったら、ぜひジーンズに上半身裸にトライしてみましょう!
今回のスタイルのキモは……。
● フォーマルの着くずしはブラックかけるホワイトで。
● 装飾を排除し、組み合わせは極力シンプルに。
● 切りっ放しのジーンズで野性味をプラス。
● スニーカーはテーラードにも合う上質なレザー製を。
● いつでも脱げるよう、体は普段から鍛えておくべし。
Photo: Ikuo Kubota(OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
3冊目の書籍が発売になりました。今回は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでない方はぜひ!
干場義雅が教える
「究極の私服」
(日本文芸社)
2冊目の書籍は、色気についてです。 普通に見えて、なぜか人を惹きつける男の共通点について書いています。読んでない方はぜひ!
一流に学ぶ
「色気と着こなし」
(宝島社)
1冊目は、スーツの着こなし術から世界の一流品選びまで、基本的なことやお洒落の本質について書いています。読んでない方はぜひ!
世界のエリートなら誰でも知っている
「お洒落の本質」
(PHP出版)
エロサバ-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。
『FORZA STYLE』編集長
干場義雅
尊敬する人は、ロロ・ピアーナの元会長セルジオ・ロロ・ピアーナさん、ピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん、トッズの会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレさん、格闘家のブルース・リーさん、初代タイガーマスクの佐山サトルさん。 スポーティでエレガントなイタリアンスタイルを愛し、趣味はクルーズ(船旅)と日焼けとカラオケ。お酒をある一定以上飲み過ぎると、なぜだか一人感無量状態になって男泣きする現在44歳の小誌編集長。東京生まれ。