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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine

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どんなことでも「勉強」の気持ちで接するのが、紳士のたしなみ

新谷さん:うちのお店では帽子は必ず脱いでもらうようにしています。中には、怒るお客様もいますけどね。

坪内さん:日本だけじゃなく、海外でもそれは当たり前のことです。帽子を脱ぐのが文化ですから。

FORZA:僕もカウンターで仕事をしていたんですけど、当たり前のようにニット帽を被ったまま、ご飯を食べている方がいました。とんでもないですよ!

新谷さん:とんでもないですね(笑)。でも、黒沢年男さんが被ってたような薄い帽子は取らなくてもいいんですよ。頭にケガをされてる方もいらっしゃるので。

FORZA:そういう配慮もあるんですね。ルールって素晴らしいです。

坪内さん:いや、絶対大事なことだと思いますよ。日本はどんどん緩くなっていますけど。

FORZA:何が原因なんでしょうか。日々の教育ですかね……。

新谷さん:理解がないんですよ。付け焼刃なんです。

坪内さん:そういうことを教えるのが家庭も周りでもなくなってきましたよね。昔はどこに行っても教えてくれる環境でしたし、近所の人にもよく怒られました。

新谷さん:バブルの時代からなんでもありになってしまったんですよ。そこだけが悪いとは言いませんが、大きな要因だと私は思います。

坪内さん:昔の人はやっぱりきちんとしてましたからね。例えば洋服の文化を知ってみようと思った時に、日本人は知識豊富な人がたくさんいるんですよ。それをもっと活かしてやるべきだと思うんですよね。一番になれるほどの知識があるのに、なにもやってない人が多いんです。もったいないですよ。

©gettyimages

新谷さん:だからこそ昔の日本は良かったんですよ。スーツのポケットにある「フラップ」と言われる蓋のマナーも知らないでやってる人が多いですよね。これは、雨除けやホコリ除けの意味があるので室内だとポケットにしまうのがマナーなんですよ。

FORZA:そういう知識やマナーを伝えていくのも僕たちの仕事ですよね。頑張ります! でも、まずは外に出るべきですね。教わる場がたくさんあることに気づくことも大切ですし。

新谷さん:でも、発信する側と受け取る側がうまくマッチしないと、どうしようもないですよ。ここのお店は0時閉店なんですけど、0時5分でもお客様が来たら入ってもらうんです。せっかく来てもらったので閉店時間ですけど「一杯だけでも良ければ」というスタンスなんです。でも、4、5人で来るとお話したいじゃないですか。となると、時間が足りないので近くのお店を紹介したりするんですけど、ろくに聞きもせずに「じゃあいいです」とかごにょごにょ言いながら帰るんです。こちらの親切心を受け取り側が理解できてないということですよね。

FORZA:難しいですね。楽しんでいただくための心遣いなのに……。

新谷さん:こちらは時間と人数を見て、相手の目線でゆっくり楽しめる方を提供してるわけですから。お金だけもらって早く帰ってとは言いたくないんですよ。それをしてしまうお店もありますけど、うちは違います。でもそういう受けとり方をされてしまうとちょっと考えるのも馬鹿らしくなります…。

坪内さん:うん! 今は特に捉え方を間違える人が多いですよね。どんなことでも勉強って気持ちで接しないと。リスペクト精神ですよ。

FORZA:リスペクトは大事だと思います。

新谷さん:今の人たちは、二人で来てもテーブルでスマホ見ながら画面と会話ですよ。飲み物がなくなっても、向き合ってないから気づかないんです。カップルで来ても、女の子を連れててもそうですから。それなら「会わんでええやん」って思います! 携帯電話ってコミュニケーションツールなはずなんですよ。ここにいる人とのコミュニケーションを全く無視して、関係ない人と繋がっているんでしょ? なんの意味があるの? って思います。時間と場所を共有する意味がないんですよ。

坪内さん:本当です。意味なんて全くないです。

新谷さん:私は、スマホ中毒の親指姫は孤独だと思っています(笑)。

FORZA:親指姫って、面白い表現ですね!

新谷さん:使っていいですよ。

FORZA:本当ですか?! 1回につきおいくらですか、お支払いします(笑)。

新谷さん:1回50円です。

FORZA:安い!

坪内さん:高いよ(笑)。

FORZA:でも、本当に勉強になります。そしていろんな本質をもっと知りたいし皆さんにも知っていただきたいですね。とても刺激になります。

坪内さん:頑張ってね(笑)。昔は本当にいいものがたくさんあったんだけど、今は廃れてきちゃってますから。もう一回そういう「ソサエティ」を作らないとですね。それが実現したらすごく楽しくなると思います。

新谷さん:しようと思う気構えが大切ですよね。「あの人かっこいいな~」っていうのを目で見て盗むみたいな。今は「興味なし。俺は俺で関係ないよ」って人多いですよ。

坪内さん:大人もダメになってるかもしれないけど、またそういう風にしていきたいですよね。今の若い子たちにも頑張って欲しいです。若者にはもっとかっこよくお酒を飲んでほしいと思います。

FORZA:何がかっこいい飲み方かわからないんだと思います。ハット被ってスカして飲むのは違いますし。

坪内さん:(食い気味に)それは違いますよ!

新谷さん:漫画とかドラマであるじゃないですか。コートも脱がずにハットとサングラスしてバーでお酒飲んでるっていうシーン。あれで間違えちゃうんです。だからきちんと伝えるしかないんですよ。うちのお店でも、常連のお客様のお連れ様が、帽子を取らなかったんです。何回言っても…。それがこのお店のルールなので、結果「二度と来ないでください」と、お伝えしました。うちを選ぶなってことです。「帽子被って入れるお店は他にたくさんあるので、そちらへどうぞ」と言いました。

坪内さん:すごい……。

FORZA:かっこいい……! シビれました。

新谷さん:でも、毎回お伝えしてもそうしなかったということは、うちのお店が馬鹿にされているってことですからね。

FORZA:どういう方だったんですか?

新谷さん:かなりの常連さんのお連れ様で、ご年配の男性でした。それに、他のお客様に帽子を取ってもらうように伝えても「あの人被ってるけど」って言われたらお店のルールがなくなってしまいますので。

FORZA:規律がなくなっちゃいますね。今日は本当に勉強になりました。今、幸せすぎて気絶してます。

坪内さん:でしょ?(笑)。飲みに行くってそういうことなんです。

FORZA:飲みに行くことは学ぶことでもあるんですね。今日は学校や教科書じゃ教えてくれないことをたくさん学べました。

今回はここまで! 次は神田の老舗で日本の粋な食文化を学んできました。次回に乞うご期待です。

Photo:Tatsuya Hamamura
Text:Naoki Fujita

Edit:栗原P

【撮影協力】
サンボア 銀座店 (SAMBOA BAR)
東京都中央区銀座5-4-7 銀座サワモトビル B1F
03-5568-6155
http://www.samboa.co.jp/index.html

坪内 浩 (Hiroshi Tsubouchi)
マグナムの創立メンバーであり、世界的有名なシューズデザイナー。自身のブランド、ヒロシ ツボウチとWH(ダブルエイチ)のデザインを手掛ける。ファッション業界では知らぬ人はいないウェルドレッサーとしても有名。自身の美学に基づいた流行を追わない個性スタイリングからも目が離せない。

 




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