銀座で一杯300円のワインを飲むのも、紳士のたしなみ
「時短で紳士になりたいなら、ツボさんに習え!」
干場編集長にそう喝を入れられた、27歳の編集部員。日本のウェルドレッサーの筆頭格、シューズデザイナーの坪内浩さんに「オシャレとは?」「男と女とは?」など根掘り葉掘り訊きまくる新企画の二回目です。
「ヒロシ ツボウチ」をはじめ、干場編集長とタッグを組んだ「WH」、「ENZOBONAFE(エンツォボナフェ)」、「PATRICK(パトリック)」など、名だたるシューズブランドのデザインを手掛ける大御所から、半人前の編集部員は何を学ぶのか? 一軒目からハシゴしてきたのは銀座二丁目「バラババオ」です。
坪内さん:ここのお店はね、ヴェネチアスタイルを楽しめる場所なので、ワインもイタリア北部のものが多いんですよ。
FORZA:先輩、すいません! そもそもヴェネチアスタイルとはどんなスタイルなんですか?
坪内さん:ヴェネチアでは、「オンブラ(ワイン)・チッケティ(おつまみ)・ヴェネチアーニ」といって、好きな食べ物をつまみながら、おしゃべりを楽しむ文化があるんですね。「バーカロ」といって、イタリアのバールのような400年続くヴェネチア独自のスタイルがあるんですよ。リーズナブルな値段で、新鮮な食材とワインを気軽に楽しめるので、近所の人たちが集まる場所にもなるんです。車も走らない土地柄だから「酒飲み天国」なんですよ。
FORZA:酒飲み天国ですか! 陽気な街並みが想像できます。
坪内さん:イタリアには、「トラットリア」や「オステリア」など、様々なスタイルがありますが、「バーカロ」はヴェネチアでしか通じないんですね。そして、その伝統的なスタイルを見事に再現したのがバラババオなんです。
FORZA:すごい! 銀座なのに一人前180円とか200円とか、下町レベルの価格帯です。ハウスワインが300円って……気絶しそうです。料理はどんな特徴があるんですか?
坪内さん:ヴェネチアはね、浅瀬の海に囲まれているから、日本人が好きなイカやタコや貝類などが豊富に獲れるんですよ。有名なのが干しダラのバッカラ・マンテカート。
FORZA:干しダラですか! では、いくつか前菜をお願いしましょうか。
支配人の谷川さん:こちらが前菜の盛り合わせです。中央にあるのはスミイカですので、最後にお切りください。
FORZA:美味しそうですね。坪サン、ここのお店はどれくらい通っているんですか?
坪内さん:オープン当初からなので7年くらいですかね……え! もうそんなになるの!?
FORZA:自分でツッコミ入れないでください(笑)。いつもはお1人で来るんですか?
坪内さん:わりと1人が多いですね。1人で行動してる方が好きなんで。
FORZA:そうなんですね。そんなツボさんの趣味を教えてください。ミステリアスなので興味津々です。
坪内さん:今は料理とワインを楽しむことですかね。小学生の頃は野球とか卓球が好きだったんですけど、高校になると「スポーツがダサい」と思い始めたので一切やらなかったです。よくよく考えると学生時代は不良が趣味でしたね(さらっと)。
FORZA:やはり不良だったんですね。緊張しすぎて気絶しそうです。お家で料理とかされるんですか?
坪内さん:たまに家でパスタや麻婆豆腐など作ったりしますよ。男の料理なんで雑ですけどね。けど、奥さんには「材料にお金かけ過ぎ」って、よくダメ出しされます(笑)。
FORZA:家でもトリュフとかぶち込んでそうですよね。
坪内さん:(笑)。でも、食材にこだわって作るのは楽しいよね!
FORZA:こだわることは、モノづくりの基本ですよね。
谷川さん:こちらが先ほど坪内さんがおっしゃっていた、バッカラ・マンテカートです。下がポレンタと言ってトウモロコシをお粥上に煮たものです。
FORZA:トウモロコシなのに白い!
坪内さん:ヴェネチア周辺では白い品種のトウモロコシがたくさん獲れるんですよ。北イタリアだとトウモロコシは白が主流なんです。