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【連載】“隠居系”山田恒太郎が案内する
百花繚乱「神戸メシ」
第3食 「植月」の「おまかせにぎり」

2016.9.6
2016.9.6

コレを食べてから死ね!? 究極の白身の寿司を発見!

イタリアのナポリは、死ぬまでに1回は見ておいたほうが良いらしいです。隠居系は仕事とプライベートで、何度も行きました。ついでにということで、夜景が綺麗だという高台に登ってみました。

途中の坂道に、車がいっぱい停まってます。なぜかすべての車、すべての窓に内側から新聞紙が貼られていて、車が上下に揺れてます。中で“ナニ”やってるのか、コドモの隠居系にはわかりません......。夜景を見ました。「えっ? 神戸の六甲ガーデンテラスや天狗岩(←ココ穴場)で見る夜景のほうが100万倍綺麗やんっ!」ってな感じでした(ナポリの皆さん、ゴメンナサイ。ヴェスヴィオ火山が見える、昼間のほうが良かったですね......)。

そんな素敵な神戸で、「死ぬまでに1回は食べておいて損は無い!」って寿司を見つけました。神戸の繁華街の中心、三宮や元町からは少し離れた、大倉山の「植月」です。

今から28年前、隠居系は出版社への就職が決まって上京しました。そして江戸前の寿司を初めて知りました。酢締めのコハダ、マグロの赤身のヅケ、煮蛤......。どれもこれも旨くてビックリしました。高級店で食べる大間、三厩(みんまや)、戸井etc.津軽海峡の本マグロは、赤身から大トロまで、それこそ絶品中の絶品でした。

でも「おまかせ」のコースのなかで、白身はせいぜい1貫か2貫。しかもそれが昆布締めだったりするので、白身本来の味をいろいろ楽しめなかったりします。白身好きの隠居系としては、そこはちょっと物足りなさを感じるところだったんです。

で、神戸に戻って見つけましたよ。地元明石や淡路島周辺で獲れる、新鮮な魚だけを使うお寿司屋さん。この辺りの海は白身魚の宝庫。必然的にネタ(関西では「タネ」より「ネタ」が一般的なので、今回はあえて「ネタ」で)は白身が中心になるんですね。いろいろ調べてみると、東京のイタリアンの有名シェフ、片岡護さんが神戸に来ると必ず立ち寄るとか、地元のプロの料理人にもファンが多いとか出てきます。「こりゃ行かなあかんやろ!」ってことで伺ったわけです。

こちらがご主人(関西では「親方」というのもあまり一般的ではないです)の植月強さん。御年70歳。店を構えてほぼ40年という、超ベテランの職人さんです。

なぜこの店の白身がそんなに旨いのか。その秘密はこの生簀にあります。仕入れた魚は、少なくとも1晩、ここで休ませます。「活け越し」と言うんだそうです。胃の中のものを吐き出させて、身に臭いが移るのを防ぐ。それと同時に魚のストレスを取り除くことによって、身に弾力が生まれて、旨みも増すんですね。

まずは刺身からいただきましょうかね。ツバス(成長するとハマチ、ブリになります)、ヒイカetc.。ビールで喉を潤したら日本酒へ。高知の超辛口純米「船中八策」です。単に辛いだけでなく旨みもしっかり。後味スッキリで魚との相性もバッチリ!(あか~ん、酒が進み過ぎて、仕事にならへんわ......)。 にぎりの前には、天ぷらや酒蒸しを注文するお客さんも多いそうですよ。

では、そろそろおまかせで握っていただきましょう。「おまかせ」は何貫と決まっているわけではなく、お腹いっぱいになったら止めてもらいます。関西のシャリは江戸前より少し甘め。わさびは静岡のものだそうです。

漆塗りの付け台に置かれたタチウオ。溜め息が出るほど綺麗ですね~。にぎりは塩と酢橘(すだち)でいただきます。もちろん醤油も用意されていますが、つけないほうが白身本来の味が分かりますからね。塩は製塩技術が国の重要無形民俗文化財に指定されている、石川県能登のもの。とげとげしさの無い、まろやかな塩です。ではいただきます......。おぉ~っと、ものすごい弾力! そして臭みゼロ。活け越し、恐るべしっ! 白身ってこんなに味が濃いものだったんですねぇ。生きてて良かった~(実感)。

お次はハス。ん? 見た目ほぼ同じ(メモ取り焦ったわぁ)。あぁ~、味が全然違いますねぇ~......。うっ、早くも隠居系の弱点を露呈することに......。スミマセン! 料理記者暦2週間、味の違いを伝えるボキャブラリーがありません! 食べてください。とにかく食べてみてください!(←めいっぱい逃げ腰)。

お次はマダイ。ふぅ、これは見た目ですぐ分かりますね(って、おいっ、赤いとこ隠れて見えへんやん!)。......とまあ、いろいろ有りながら、10貫握っていただきました。

ど~ん! 隅から隅まで全部白身っ! 左の列、手前からタチウオ、ハス、マナガツオ。真ん中の列がサヨリ、コチ、シタビラメ、スズキ。右の列がサワラ、マダイ、ナゴヤフグ。これがねぇ、自分でもビックリなんですけどね、全然飽きないんですよ。白身ばっかりなのにねぇ。全部味が違うんですよ。

「え~? ほんまは途中でちょっと飽き気味になったんちゃうの?」としつこくお聞きになる方。ご安心ください!

こちらはマダイの昆布締め。白板昆布をまとって、これまた美しい。こんなふうに5、6貫ごとにちょっと趣の異なるものを挟んでくれるんです。リクエストすれば「炙り」でも出してくれますよ。

締めはたいてい「ウニで」というお客さんが多いそうです。もしかすると9月いっぱいなら、東京ではほとんどお目にかかれない、“幻の”とも呼ばれる、淡路島、由良の赤ウニを食べられるかもしれません。ミョウバンを使っていない、甘みと昆布の香りだけが口に広がる、隠居系が「日本一じゃないの?」と思ってるウニです。

シャリが小さめなので、20貫ぐらいは食べる方が多いとのこと。酒、つまみとにぎり20貫ぐらいで、予算はだいたい1万円。もうちょっと安く抑えたいって場合は、先に「8,000円ぐらいで」とお願いしておけば、そこで止めてもらえます。

「銀座の高級店で食べるより価値がある」と、東京から日帰りで食べに来る常連さんが何人かいるそうです。ここにはマグロもイクラもありません。でもぜひ一度、この寿司を味わってみてください。魚に対する考え方が、きっと変わるはずです。

Photo:Kei Kato
Text:Kotaro Yamada

「植月」(うえつき)
TEL:078-511-5566
住所:兵庫県神戸市兵庫区荒田町3-41-16
営業時間:17:30~22:00(ラストオーダー21:30)
休み:月曜

山田恒太郎(改め“隠居系”)
1990年代後半から『BRUTUS』、『Esquire日本版』、『LEON』、『GQ Japan』などで、ファッションエディターとしてそこそこ頑張る。スタイリストとしては、元内閣総理大臣などを担当。本厄をとっくに過ぎた2012年以降、次々病魔に冒され、ついに転地療養のため神戸に転居。快方に向かうかと思われた今年(2016年)4月、内服薬の副作用で「鬱血性心不全」を発症。三途の川に片足突っ込むも、なんとかこっちの世界に生還。「人生楽ありゃ苦もあるさ~♪」を痛感する、“隠居系”な日々。1964年生まれ。神戸市出身。

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