20年以上、連れ添った夫婦の離婚、いわゆる熟年離婚が統計以来、過去最高を記録した。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「2022年度の熟年離婚率は23.5%。4組に1組が離婚している計算になります。専門家によると熟年離婚の相談数は女性からが多いそうです。長らくモラハラに耐えた末、義両親の介護の末など、その理由はさまざまありそうです」。
熟年離婚の増加は、女性の社会進出とも大きく関係している。
「どの世代でも働く女性が増えていることは大きな要因でしょうね。離婚後の生活に困らなければ、我慢して一緒にいる必要はなくなります。逆に言えば、経済力がなければ離婚は難しいし、それを理由に諦めている人もいるのではないでしょうか。さらに、2008年からは、専業主婦を対象にした『年金分割制度』が設けられたことも大きい。離婚の際に、夫が納付してきた厚生年金保険料の記録を分割できるようになったんです」。
今回はそんな熟年離婚一歩手前だと話すある女性から話を聞いた。
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杉山花江さん(仮名・62歳)は、34年間連れ添った旦那と娘が2人いる。
「長女は自立して暮らしていますが、次女はなかなか社会に馴染むことができず、就職したものの初日で会社に行くことができなくなり、引きこもるように。今は家事手伝いくらいはできるようになりましたが、それでも本調子とは言えません」。
夫とは、仕事の付き合いで知り合った。5つ上で典型的な亭主関白だと話す。
「結婚したのは、今から30年ほど前。当時はまだまだ夫が働き、妻が家事や育児に専念するのが一般的でした。女の夢は結婚して子供を持つこと、夫を支えることと勝手に決められていた時代」。
花江さんももれなく、そのレールに乗った。
「本当は仕事続けたかったです。結構そういうタイプもいると思いますよ。でも当時は今のように働いている女性は少なかったし、結婚したら辞めるものとされていて、なかなか言い出すことは難しかったです」。
結婚後すぐにモラハラ気質に気がついたが、それも当然だと考えていた節がある。
「モラハラなんて言葉なかったですしね。家事育児はすべて私の仕事で、少しでも不満があるとぶちまけるような人でした。娘たちが不登校気味になったときも、寄り添う気持ちなんてゼロ。お前の育て方が悪いと責められましたね。でも当時の私は悲しいかな、それを間に受けてしまっていたんです」。
仕事人間といえば、それまでだがどこまでが仕事でそうでなかったのかは今となってはわからない。
「出張だと言われれば、もうそれ以上は何も聞けないというか信じるしかない。そんな状況でした。土日いないことにも仕事なんだからしょうがないだろ!という姿勢で、家族で旅行などに行った記憶は本当に数えるほどしかありません」。
そのなかでも花江さんを最も傷つけてきたのが食事だと話す。