男女参画共同局【「共同参画」2020年9月号】によれば、妻と夫が共働きをしている世帯は、2019年時点で全体のおよそ68.8%に及んでいたという。かねてから右肩上がりだったこの数字は、今現在さらに上昇している可能性が高いだろう。
女性の社会進出などという言葉はすでに過去のもの。昨今の庶民に優しくない経済状況を見れば、男女総出で働かなければ生活が立ち行かない時代はとうに来ている。しかも生活者には家事・育児・介護など、家庭の中に数えきれないほどの仕事がある。そういった背景から、子どもの保育園や学校に関する役員・係を大きな負担と感じている人は少なくないだろう。
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2020/202009/202009_02.html
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菅原菜穂さん(仮名)は36歳の会社員。2人の育児に追われながら懸命に働く毎日を送っているが、下の子の保育園の園外活動で苦労した経験について語りたいことがあるという。
「上の子が行っていた保育園には、保護者の会がありませんでした。引っ越しに伴って下の子は別の園に入れたのですが、そこには保護者の会があるんです。昔は”母の会”といっていたそうですが、シングルの方もいるというので”父母の会”になり、父母だけで育児しているわけじゃないというので、いつからか知りませんけど保護者の会になったらしいですよ。何の会でも結構ですが、もううんざりです」
菜穂さんの子どもは現在年中クラス。前年度終盤に役員に立候補して選出され、そろそろ1年間の任期を終える。役員になりたかったわけではない。むしろ心の底から嫌だったが、原則として誰もが役員をやらなければならず、最も負担が大きい年長組の役員になることだけは避けたかったという。そのためだけに、昨年度末立候補した。立候補とはいえ、かなり消極的な理由だ。
「周りもみんなそう言っています。早いうちにやっておかないと、負担がさらに大きくなってやばいと……。それで何とか年中で役員をやっておきたいと思いました」
前述したとおり、菜穂さん一家は下の子の入園に合わせて引っ越しをした。引っ越しに先立ち、保育園はあらかじめ決めておいたのだが、上の子が行っていた保育園には保護者の会がなかったので、入園に際して保護者の会の有無をチェックすることなど念頭になかったそうだ。
「未満児から年長まで、全クラスから各数人の役員を毎年選出することが決まっているんです。全員が在園中一度は当たるように、毎年役員の人数を調整します。役員が母親でなければならないという規則はないにもかかわらず、暗黙のルールでほとんどは母親がやると聞きました。シンパパさんなどは肩身が狭いでしょうね」
菜穂さんが役員を務める保護者の会とは何をする会なのか、聞いてみた。
「役員の仕事としては、保護者会総会の準備や司会進行、お祭り・観劇会、そのほかの季節のイベントの企画・準備・当日の作業、月に一度の会合などがあります。会費の管理はもちろん、臨時で集めるお金の管理もします。あと、園生活で何か困っていることや不満などがないかどうかアンケート調査を実施して集計し、園に報告したり……。昨年度まではまだコロナへの警戒が強くてイベントは縮小していましたが、今年度は通常開催するものもあり、忙しく過ごしました」
役員にならないという選択肢は原則ないという。おまけに子どもが年長生の場合、役員とともに「卒園アルバム委員」を兼任することで負担がさらに重くなるという話だ。