■現行型は、大胆なレイアウト変更と伝統のデザインテイストを採用
現行型は2014年にジュネーブモーターショーでお披露目された3代目です。初代・2代目とは違い、5ドアモデルのみとなりましたが、リアドアのノブをピラーに埋め込んだヒドゥンタイプとすることにより、ぱっと見は3ドアのように見えるすっきりさがあります。
デザインは全体的にプレーンな印象ではあるものの、フロントにはボディサイズの割に大きなルノーのエンブレムと、それを中心に左右のヘッドランプをつなぐグリルが特徴となっており、リアは小ぶりでスタイリッシュなC型コンビネーションランプと、全面ガラスのリアハッチが印象的です。
これらのデザインには、ルノー往年の名車、「5(サンク)ターボ」のイメージを取り入れているとのこと。伝統とモダン、先進性をコンパクトなボディいっぱいに感じさせるデザインです。
ただ、3代目トゥインゴ最大の特徴は、なんといっても、RR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトの採用でしょう。エンジンをリアのラゲッジ下に49度ほど傾けた状態で配置したことで、タイヤを車両の四隅に配置することができ、このクラスでは十分なキャビンスペースを確保。
またFFと違ってフロントタイヤを大きく切ることができるため、2490mmのロングホイールベースであるにもかかわらず、最小回転半径は4.3mと、日本の軽自動車と同等レベルの小回り性能を実現しています。
■おしゃれな感覚と自由な発想を持つパリジャン、パリジェンヌが選ぶモデル
パリの旧市街は狭い小道や駐車場が多く、石畳で荒れた路面のほか、坂道もあります。それでいて郊外の高速道路を走る時は130km/h程度のアベレージスピードがあり、フランスではこうしたコンパクトカーで小旅行に出かける人も多いです。
トゥインゴは0.9Lターボエンジン+電子制御6速AT、もしくは1.0LガソリンNA+5速MTの組み合わせで、ゆとりがあるわけではないものの、キビキビと楽しく走ることが可能。
リア駆動独特の後ろから押し出されるような感覚や、車両前方が軽いことによる独特のハンドリングが気持ちよく、一般的なFFコンパクトカーでは味わえない乗り味が楽しめます。
おしゃれな感覚と自由な発想を持つパリジャン、パリジェンヌが選びたくなるような、そんな魅力を持っているのがトゥインゴであり、まさに「パリが仕立てた」コンパクトカーなのです。
独特のパッケージングやルノーの伝統を取り入れた斬新なレイアウトなど、他のコンパクトカーとは異なる世界観を持つトゥインゴ。クルマの大きさがもたらすヒエラルキーや概念を超えた、まさに大人がこだわって選びたいモデルでした。生産終了は残念ですが、次の4代目トゥインゴは、BEVとして復活する予定とのこと。ルノーの新会社であるアンペアが、2023年11月にコンセプトモデルを発表しています。
初代トゥインゴをオマージュしたようなデザインは人気が出そうな予感。欧州市場で2026年ごろにデビューとのことですが、このままのデザインで登場するのか、リファインされた新デザインが与えられるのか、今後のトゥインゴも非常に楽しみです。
Text:Tachibana Kazunori,MMM-Production
Photo:RENAULT