「『そういうのってどこで買うの?』と聞かれたので、ワンピのブランドと買ったお店の名前を教えました。すると麻由美さんは、教えたその日にネットショップを探し当てて購入したらしく、退院日には私と同じワンピースを着てました。まあ、その時はそこまでお気に召したなら良かったわ、と思う程度でしたね」
退院後しばらくは麻由美に奇異な行動は見られなかった。
むしろ新米ママ同士、お互いに心の支えとなっていたようだ。
「新生児を育てるのって、めちゃくちゃ大変です。外部とコミュニケーションを取ってる暇もないほど死に物狂いだから。
でも麻由美さんとは、子どもが機嫌のいい時や寝た時にLINEで『今いい?』と確認し合って、通話に切り替えて愚痴や悩みを言い合ったりしていました。授乳のこととか便秘のこととか、情報をシェアできて心強かったですよ。”出産同期”のよしみというか」
愚痴や相談をする相手としては申し分ない麻由美だったが、彼女が愛の持ち物を真似て購入したがる傾向をだんだん強めていくことに対しては、言い知れない不愉快さを感じていたという。
©︎gettyimages
「まず子ども服です。子どもの様子を写メして見せ合ったりするなかで、『えーそれかわいい、どこで買ったの?』といつも聞かれます。
それで、教えると彼女は即買い。最初の何回かは、お金のある人なんだなと思うくらいでした。それでお子さんに買った服を着せて私に画像を送ってきたり、SNSにあげたり……。回数が多かったので、徐々に不気味さというか不快感を覚えるようになり、私は彼女に子どもの写真を送らなくなりました」
写真を催促されても、ちょうど目新しい洋服もネタ切れだったため、愛は子どもの顔のアップなどを見せてお茶を濁していた。
ただ、同じ洋服を次々買われる不気味ささえ除けば、2人の関係は良好だった。乳をよく吐いてしまう、夜泣きがひどいなど、悩みを相談するだけなら、麻由美は理想的な相手といえたのだが……。
取材・文 中小林亜紀