「気が合わなかったらどうしようとか、苦手なタイプだったら困るなとかそんなことばかり考えていたので、拍子抜けしました。あんまりにもいいお嬢さんで、息子にはもったいないとこのときはまだ思っていました」。
家に到着すると彼女が手土産を差し出したという。
「東京で話題のお菓子を持ってきてくれて、すごく嬉しかったです。ちょっと前に昼の情報番組で紹介されていたケーキで、年甲斐もなくすごく、喜んでいまいました。せっかくなのでケーキを食べようということになったんですが、彼女がコーヒーを飲めないというんです。あれ?もしかしてと思いました」。
玲子さんの予想通り、彼女は妊娠をしていた。玲子さんは自分の息子の不甲斐なさに腹がたったという。
「結婚と妊娠に順番があるなんてことは言いません。きちんと結婚してから妊娠するのがベストでしょうけど、妊娠をきっかけに腹を括ることもあると思いますから。腹が立ったのは、息子が私たちに先に伝えなかったこと。だって、お相手のご両親にはすでに挨拶に行ったというんですよ。もうびっくり」。
玲子さんと夫が息子を一喝しようとすると察した彼女がそれを遮った。
ーうちは全然気にしてません。両親は事実婚でかなり自由な感じなんです。
玲子さんは頭に「?」が浮かんだという。
「事実婚ってなんだっけ?と改めて考えてしまいました。なんでも息子は彼女のご実家をかなり頻繁に訪れていて、お義母さまと意気投合していると彼女は話していました」。
玲子さんは心なしか、嫌な予感がしたという。
「もしかして、事実婚を選ぶとか言わないよね?と。私が聞けずにいるとしびれを切らした夫が尋ねました」。
息子と彼女は声を揃えて、「そのつもりです」。
そう答えたという。
【後編】では手塩にかけて育てた息子が、放った言葉とそれを受け入れられない玲子さん夫婦の苦悩について話を聞いていきたい。
取材・文/悠木 律