「スマホも車の中だったんです。近くのトイレに行くだけだったので、もちろんカバンも持っていませんでした。持っていたのは息子と別れる前に自販機でお茶を買ったときのおつり390円だけ。頭の中が真っ白になりました…」。
玲香さんはなんとか正気を取り戻し、パーキングの売店に向かった。しかし、時間は22時を過ぎており、あたりは真っ暗。かろうじてあったのは、公衆電話だ。
「久々に公衆電話ボックスに入りました。しかし、一体誰に連絡していいのやら…。JAFを呼びたかったけれど、JAFの番号なんて知るよしもありません。警察に電話しようか迷って、あたりを見回すと非常電話が目に入ったんです」。
非常電話とは道路管理者に緊急通報するための電話だ。高速道路においては、本戦場、トンネル、インターチェンジ、サービスエリアやパーキングエリア、バスストップ、非常駐車帯に設置されている。
「受話器を取るとすぐに係の人につながりました。私はしどろもどろになりながら車のドアが開かなくなったことを伝えました」。
要領を得ない玲香さんに係の人は落ち着くように深呼吸を促した。
RANKING
1
2
4
5
2
4
5