結婚したら、自分もいつか嫁や姑関係で悩んでしまうのではないかーそう考える人は少なくないだろう。某大手ファッション誌が既婚者を対象に調査したアンケートによれば、「姑問題がある」と回答した人は26%で、つまり4人に1人は嫁姑トラブルに悩まされていることになる。
今回話を伺った東海地方在住の池田智子さん(58歳・仮名)も、長男嫁と性格が合わず頭を抱えていた一人だ。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。
「嫁姑トラブルを避けるために必要なのは、無理に仲良くしようとせず、ある程度の距離を保つことです。心理的な繋がりはもちろん、相手とは離れた場所に住むなどして物理的な距離を取るのも策です」
58歳パート主婦が、なぜ長男嫁と関係をこじらせてしまったのか。
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智子さんが長男嫁(以下:M美)と初めて対面したのは3年前。約2年の交際期間を経て、結婚を前提に付き合っていると実家へ挨拶に来たのだ。
「第一印象は、清潔感があり、こちらの質問にもハキハキと答えてくれて好印象でした。IT企業に勤めていて、仕事もバリバリこなしているようだったので、そのときは『いい子がお嫁さんに来てくれた』と安心しました。でもそんなのも束の間。彼女の頑固で被害妄想がひどい性格に気づいたのは、結婚から1年が過ぎた頃でした……」
一見人当たりがよく柔らかい雰囲気のM美だったが、その正体は、我が強く、家族行事にも一切顔を出さない「無関心嫁」だったのだ。

「初めて疑問に感じたのは、長男の第一子のお宮参りです。お金は私たちが負担するから、家族みんなでお宮参りをして写真を撮ろうと提案したんです。孫は可愛いし、大人は多い方が助かるだろうと、良かれと思って言った言葉でした。でも、『お宮参りは自分たちだけでするから、他の人は呼ばない』とキッパリ断られてしまったんです」
お宮参りは、産まれた土地の守護神に赤ちゃんが誕生したことを報告し、健やかな成長を願う儀式である。
近年、母・父・赤ちゃんの3人だけで参拝する家庭も増えているが、伝統的には父方の祖母が付き添うものとされてきたし、基本的には誰が参加しても問題はない。
そんな中でまさか断られるとは思いもせず、長男嫁から直接言われた「来ないで結構です」の言葉にショックを受けた智子さん。
「長男たちは実家から車で10分の距離に住んでいます。初めての子育ては大変だろうし、子どもの面倒を見るから実家に来たらと言ったのですが、来てくれませんでした。まぁM美からすれば、気を遣うし、義実家へ頻繁に行くのは嫌だよなと思い、そこまで気にしていなかったんですが」
実家に顔を出さないだけなら、まだいいだろう。しかしM美は、お盆や年末年始などの家族行事にも一切参加してくれなかったようだ。
「年末年始に、親戚や身内がお年玉を渡しに来るから『ご飯を食べがてら〇〇時に家に遊びに来てね』と伝えても、来るのは長男と孫だけ。
親戚に長男嫁を紹介したいし、お年玉もどうせもらうならお礼くらい言ったら良いのに……。長男に聞いても『嫁は気を遣うタイプだし、家族行事をそこまで重視しない家庭で育ったみたい』と言っていました。
頻繁に集まっているわけではないんだからたまには来てくれても良いのに、と私も不満が募り始めてきたんです」
心のモヤモヤは大きくなるばかりだったが、愚痴を誰かに言ったところで解決することではない。嫁姑の関係はこういうものなんだろうと思い、M美さんに対する不満は心の中にそっとしまっていたようだ。
年末に親族が集まって年が明けたあと、一通のLINEが届く。送信者はM美だ。
送られてきたのは「次男嫁だけ可愛がって、私だけ仲間はずれにして楽しいですか? 私たちは虐げられている。今後一切実家へ行くことはありませんので」といった、一方的に怒りをあらわにした内容だった。