ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE 女たちの事件簿

「男と女が結婚して、子どもを生む。それが普通の世の中だ」小金持ちの還暦夫妻を襲った「価値観リベンジ」のヤバすぎる顛末。

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

総理秘書官がLGBTや同性婚に対して不適切な発言をして、大きな問題になったのは記憶に新しい。発言を聞いて、耳を疑った人も多いことであろう。同じ大人として、本当に情けないし、恥ずかしい。しかし、世の中にはこのような人がまだまだいるのが現実だ。

柏原洋平と恵理子(仮名)もそんなありえない発言を繰り返している、還暦目前の夫婦だ。

「男と女が結婚して、子どもを生む、それが世の中の普通です。普通以外のことなんて、結局は目立ちたがりとか世間知らずとか、そういうことなんですよ。我が子に至っては、そんなこと絶対にありません」

洋平は大声で笑いながら、そう話す。続けて恵理子も大きくうなずきながら賛同する。

「そうそう。だいたいね、普通に育てていれば、そんなことにはならないんですよ。やっぱり、そういうのって、親に問題があるんじゃないかなと思いますね。だってうちや友人からそんな話は聞いたことありませんから」

とんでもない会話である。耳を塞ぎたくなるほどだ。

「多様性だなんだっていいますけどね、周りと歩幅を合わせて、普通でいることの方がもっと重要でしょう。男と女、それだけでいいんですよ、性別は」

そんな柏原夫妻の自宅があるのは、都内有数の高級住宅街にあるマンションの1室。ちなみに、このマンションは柏原夫妻所有のものである。

「お金に不自由したことはありません。幼稚園から私立に通い、大学までそのまま。就職はなんとなくしましたが、本当に形だけ。3ヶ月でやめちゃいました。それから働くこともなく、親の家賃収入に頼って生きてきた感じです。夫はもしかしたら、この資産目当てで結婚したのかもしれませんが、マンション経営が私より上手だったので結果オーライ」

まるでドラマで見るような東京の小金持ちである。

「そうなんですかね?まぁ、周りにもこんな感じの暮らしをしている人いますよ、けっこう。最近は子どもも独立したんで、夫婦2人でゴルフにいくのが一番の楽しみ。コロナが明けたので海外にも行きたいなって話しているところです」

柏原夫妻が旅行に行くとき、愛犬の小鞠を預かってくれるのがシッターさんだ。いつも同じ人に頼んでいたのだが、最近妊娠して、預かってもらえなくなってしまったらしい。

「仕方ないんですけどね。だから今、シッターを探しているところなんです」

柏原夫妻のマンションは、全部で8部屋。柏原夫妻が使用しているのは2部屋分。残りの6部屋を賃貸として貸し出している。家賃は14万円ほど。ペット可の物件ということもあり、かなり人気が高いらしい。先日も1部屋空いたが、すぐに借り手が決まったという。

「次に入居してくるのは人当たりのいい女性みたいです。しかも、どうやらペットサロンで働いているらしくて。もしかしたら……なんて思っています」

それから半月ほどたったある日、マンションの外で恵理子は新しく入居してきた彼女と鉢合わせた。

「うちに入居のご挨拶にきてくれた日は、ちょうどトリミングに行っていて小鞠いなかったんです。だから、彼女と小鞠は初対面で。でもやっぱり、プロは違いますね。小鞠はかなり臆病で知らない人に懐くことなんて絶対にないんですが、彼女には気持ちよさそうに撫でられていました。彼女もかわいい、かわいいって言ってくれて……。すっかり、意気投合して話し込んじゃいました」

彼女が働いているのは、ペットサロンではなく、マンションから自転車で10分ほどのペットクリニックだった。そこで動物看護師をしているという。

「ご実家は北海道だそうで。ペット看護師の資格をとって、地元で働いていたそうなんですが、より専門的な知識が欲しかったそうで。動物理学療法士の資格を取って、今はクリニックで週3日働いているとか。犬を飼いたいそうなんですが、忙しいこと、またお給料のこともあって今はまだ飼えないと話していました」

恵理子と彼女が話し込んでいると後ろから「おーい」と声がした。ジムから帰宅した洋平だ。

「彼女から聞いた話をざっくり伝えると夫は、実はシッターを探していると言い出したんです。夫はこういうところがあるんですよね、いきなりお願いできちゃう思い切りの良さっていうか。そうしたら、彼女も喜んでくれて、お散歩を一緒にしたり、お預かりを数時間してみて、相性をみてみましょうか?と言ってくれたんです」

こうして恵理子は、週に1度彼女と一緒に小鞠の散歩に行くことになった。何度か散歩を繰り返すなかで小鞠はどんどん彼女に慣れていった。今では彼女がリードを握って散歩をするのがほとんど。最近では散歩の後、数時間柏原邸で一緒に過ごすことも多くなった。

「すっかり小鞠懐いちゃって。彼女とも話し合った結果、シッターとして契約をすることになったんです。一応ね、書面もかわして。何かあったら困りますからね」

しばらくは散歩と恵理子が出かける間、数時間シッティングするというパターンが続いた。

「すごく丁寧にいろいろとやってくれて、私がいない時は逐一様子とか変化をLINEに送ってくれて。お給料が発生していることもあるからか、報告書?みたいなものも必ず制作してくれるんです。クリニックやめて、これを本業にしたら?と夫が提案するほど、プロフェッショナルというのかな。動物看護師ですから、その点でもとにかく安心ですし。すっかり信頼しきっていましたね」

柏原夫妻は例年、友人夫妻と沖縄へゴルフ旅行に行っている。その日程を決める際も、まずは彼女の予定を抑えたという。

「3泊4日なので、クリニックのお仕事も調整してもらわなきゃならないでしょう?でも快く、引き受けてくれて安心しました」

こうして柏原夫妻は、沖縄へ出かけた。沖縄でのゴルフは最高の時間だった。プレーを終えて、リッチなホテルでシャンパン片手に夕日を眺めていたときのことだった。

「彼女からいつも通り、小鞠の様子を伝えるLINEがきたんです。小鞠が嬉しそうに散歩をしている動画でした。動画が途切れる少し前、一瞬だったんですけど、彼女を呼ぶ声が聞こえたような気がしたんです。女性の声でしたから、近所の人かな?と思いました、そのときは」

次の日の散歩の動画には、散歩をしているときに誰かが横にいるのかな?と思わせる仕草が映っていたという。

©Getty Images

「別にいいんですよ。よくある話というか、私もご近所の方と会って並んで少し歩くことも多いですから。小鞠もそれに慣れています。だから、そういう感じかな?と、その時は思っていたんです。それなのに、まさかあんなことになるなんて……」

☆次回、古い価値観と偏見によって事態は最悪の展開へ……☆

取材/文 悠木律

▶︎後編に続く


RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5