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「育休取ったら、この仕打ちかよ…」男の育休はなぜいつまで経っても「踏み絵」なのか?

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先輩が育休を申請してからというもの、上司達は心ない言葉を彼に浴びせ続けたそう。それだけならまだしも、復帰と同時に部署異動を命じられたのである。

「そのとき完全にパタハラだと確信しました。先輩は半年も前から、準備をしていたんですよ。いきなり言って休んだわけでもありません。それなのに流石にひどすぎます」

先輩が異動したのは、社内でもっとも残業の多いと噂される部署。あまりにも残酷である。先輩はそれでも育休を取得してよかったと洋に話した。

「奥様との関係性が今まで以上によくなったと先輩は話していました。育休中は家事もできる限り、先輩がやったそうです。途中からはミルクを併用して、夜中の授乳も担当したとか。子どもがかわいいということはもちろんですが、いつもどれだけのことを奥様がやってくれていたかを実感する機会になったと言っていました。残業の多い部署はかなり大変みたいで、転職活動を始めたみたいです」

2021年4月に厚生労働省が発表した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると育休を取得した人のほとんどは取得してよかったと回答している。先輩も例に漏れず、そう感じたようだ。

「産後の数週間は、女性の体にとってはものすごく大切な時期らしいんです。我が家は助産院で出産をしたこともあり、その辺りのことやメンタル面など、産前にかなり学ぶ機会がありました。上司達はそんなこと1ミリも考えていないんでしょうね……。自分の奥さんのことを家政婦だとでも思っているんでしょうか……」

しかし、先輩への心ない言葉や待遇を見てしまった洋は育休を申請するタイミングを完全に見失ってしまった。
無常にも時間だけがすぎていき、気がつけば出産まであと1か月。産後パパ育休制度への申し出期限は2週間前まで。タイムリミットはすぐそこまで来ていた。

「育休が権利だということは理解しています。でも、先輩の状況を見ているとどうしても申請できなかったんです。上司にいろいろと言われるのも嫌でしたし、何より部署移動なんてたまったもんじゃありません。妻には申し訳ないのですが、取得は完全に諦めムードだったんです」

ところがある日、緊急事態が起こった。なんと妻が切迫早産で入院を余儀なくされてしまったのだ。育休は出産前には使うことができない。洋はひとまず、有給を使って長女の世話と妻のサポートをした。

「たった2日です、休んだのは。その後は、妻の母が泊まり込みで来てくれて長女の面倒を見ながら、家事をしてくれました。妻は精神的にかなり参っていて、出産にも影響するのではと心配していましたが、なんとか持ち直してくれてホッとしていたんですが……」

自宅に戻った妻は、洋に真剣にこう話したという。

「もしかしたら、産後の状態も前回より悪いかもしれないと。だからなんとしても育休をとって欲しいと言われました。お願いというよりは、懇願と言った方がいい、鬼気迫る感じがありました。妻はもともととても健康ですし、我慢強い人なんです。そんな妻の願いだったのでこれは育休を取らねばと!気持ちが切り替わりました」

洋は1か月後に迫る出産に向けて、産後パパ育休を申請した。

そして案の定、上司からの冷たい仕打ちが始まったのだ。

ライター 悠木律

▶︎後編はこちら


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