今年の夏休みは4年ぶりに行動制限がないこともあり、旅行や帰省を計画している人も多いことであろう。
遠藤和明(50)も、この夏休みを楽しみにしてきた1人だが、彼の思惑通りの休みは蓋を開けてみれば散々だったという。
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「3年間実家に帰れていなかったので、子どもを連れて帰省するのを楽しみにしていました。子どもたちも大きくなり、段々と僕に付き合ってくれなくなってきたと感じているんです。だからこそ、この夏の帰省はとにかく家族みんなで!!! そう思っていました。仕事の都合でお盆には休めず。8月の初旬に久しぶりの帰省をしました」
和明には妻、そして小6と中2の2人の子どもがいる。家族4人で栃木の実家へ帰省する計画をしてきたという。
「車での帰省なので、出かけるのは早朝。やはり、渋滞に巻き込まれるのはいやですからね。途中のパーキングエリアなど、寄り道先もいくつか用意をして、スケジューリングはばっちり。妻も子どもたちもきっと楽しんでくれるはずと思っていたのですが……」
家族みんなが帰省を楽しみにしている…そんなものは理想でしかないのかもしれない。和明はその事実を痛いほど思い知ることになるのだ。
「僕もうっすらは気がついていたんです。妻が帰省に乗り気じゃないことは…。夫の実家が大好きという人の方が少ないでしょうから、仕方のないことだと思っていたのですが……」
具体的に妻は何を嫌がっていたのだろうか。
「多分、ですけど、実家に帰っていろいろやらなきゃならないこと、じゃないですかね」
和明はまるで当たり前のようにいうが、そこには時代遅れも甚だしい、田舎の過酷な帰省事情があるらしい。
「僕は長男なので、帰省するとやることがたくさんあるんです。だから妻や子どもとは基本、別行動。とは言っても子どもは従兄弟たちと遊んでいることがほとんどです。妻? 妻はそりゃ、家のことをやっていますよ。当たり前じゃないんですか」
よく聞くと和明は、帰省と同時に訪ねてくる近所の親戚たちと酒盛りをするのだという。その際、アテを作ったり、お酒を運んだり、片付けをするのが妻の役目らしい。まるで給仕係だ。