妻である典子さんの心中は……?
仕事をしながら子どもを育てるって、本当にしんどい。
土曜日の午後、典子(仮名・41歳)はPCを見つめながら、深くため息をついた。
もちろん子どもは可愛いし、夫婦ともフルタイムで働いているから、お金にはそこまで苦労していない。
けれど、「やらなければいけないこと」が仕事においても子育てにおいても次から次へと押し寄せ、それを「こなしている」だけで、あっという間に一日が過ぎていく。
7月は、学校の保護者会や個人面談もあるし、学童も個人面談があったっけ。あれ?夏休みの学童の出席予定はいつまでに提出? 習い事の夏休み期間も確認しなきゃだし、夏休みのうちに耳鼻科にも連れて行ったほうがいいよね……。久しぶりに帰省するなら、さすがにそろそろ予定たてないと。プールにも連れて行ってあげたいけど、いつなら行けそうかなぁ
小4の娘と夫と自分の7月〜8月の予定を確認しつつ、あれこれ調整していると、あっという間に夕方の17時。
そろそろ夕飯の支度しなきゃ…。その前にスーパーにも行かないと。典子はソファでくつろいでいる慎介に声をかけた。
「ねえパパ、今日の夜ご飯、何がいい?」
「ん?…別になんでもいいよ」
「……」
いつもこうだ。
慎介はいつも「なんでもいいよ」と言う。もっと具体的に答えて欲しいと何度かお願いしたこともあったが、慎介の返事はこうだった。
「具体的なメニューをあげても、材料がなかったり作るのが面倒なものだったりってことがあるでしょ? それに、強烈に『これが食べたい』ってものがあるわけでもないし……。僕は典子を信頼してるから、なんでも大丈夫ってことだよ」
慎介としては典子の負担を減らし、さらに「信頼している」という言葉で妻を褒めているつもりでなのだろう。
でも、「なんでもいい」と言われた瞬間に、典子は夕ご飯を何にするか、すべて一人で考えなければならなくなるのだ。
そのことに、慎介は全く気がついていない。
慎介はずっとスマホをいじっている。最近はまっているというゲームだか、YouTubeだか知らないが、のんびりスマホを眺める時間があってつくづくうらやましい……。そう思うが典子は口には出さない。そして、明らかに無口になる。
慎介は、典子が不機嫌になったことに気づかない。あるいは、気づいたとしても気づかないふりを続けるのだろう。いつものように……。
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「なんでもいい」から「なんでもいい」と答えたのに、なぜ妻が不機嫌になるのかわからない、という男性からのお悩み相談。心理カウンセラー、五百田達成氏からのアドバイスは?
(この記事は取材を元に、夫婦の会話ややりとりを再構成していますが、プライバシーに配慮し一部事実を変更しております。あらかじめご了承ください)
Text:FORZA STYLE