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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「先生、卒業したら彼女になって」男子高生に好意を寄せられて煩悶。「魔女の条件」とは程遠い「女教師×生徒」の酸っぱすぎる現実。

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「でも、『若い先生みんなに同じこと言ってるのよ、あの子。気にしなくていいから。ほおっておけば大丈夫よ。』と言われてしまいました」

©Getty Images

しかし、陽菜さんが授業に行くたびに同じ質問が繰り返された。さらに、始めは止めてくれていた生徒たちが面白がって、連絡先を知りたがる生徒と陽菜さんを冷やかすようになった。

「改めて申し上げるのもなんですけど、私はその男子生徒のことを全く何とも思っていませんでした。生徒ですから、どうこうしようなんて気になるはずがないですよね? それにあの頃の私は、新人教員でそれどころじゃなかった。でもまあ、それを理解してもらえませんでした」

そうつぶやく陽菜さんは、実は、あまり恋愛経験が豊富ではなかった。女子高に通い女子大を卒業した彼女は、そもそも異性ともあまり接してきていない。

色白で髪が長くはかなげな陽菜さんは、友達に誘われてコンパなどに行くと連絡先を聞かれることが多かったという。でも、彼女の周りにはいつだって彼女を守ってくれる女友達がいた。陽菜さんが連絡先を伝えたくない相手には、そんな女友達たちがやんわり断りを入れてくれたのだ。

「友達に守ってもらってばかりいたのではいけないことはわかっていました。しかも、これは仕事。だからちゃんと自分で言わないと、とは思いましたけど、なんていえば良いかも思いつけなくて……。

でも、授業に行くたびに『先生、そろそろ連絡先教えてくれるよねー?』なんて聞いてくる男子生徒を目の前にすると言葉が出てこなくて、黙って授業をはじめることが続きました。ただ、夏休み前に『夏休み中一緒に遊びに行こうよ』と言われたときは、『ふざけないで!』って怒鳴って職員室に戻りました。このままじゃいけないと思ったんです」

思い描いていた教員生活とは全く違う日々に、陽菜さんは大きなストレスを感じるようになっていた。

彼女が理想としていたのは、高校生時代に英語を教えてくれていた、落ち着いた雰囲気の年配の女性教員だった。プライベートなことは全く話さず、英国の美しい習慣やしきたり、そして英語だからこそ味わい深くなる何篇かの詩を教えてくれた。

周りの生徒がその女性教員のプライベートを詮索することもなかったし、妙に親しくなろうとすることもなかった。陽菜さんは、彼女のような教員になりたかったのだ。だから、引っ込み思案なのに努力を重ね、試験や面接もクリアして、晴れて教員になった。なのに、だ。

「どうして?って何度も思いました。どうして授業内容に興味を持たずに、どうでもいい私のプライベートに興味を持ったり、私自身の何かに踏み込もうとしてくるんだろう。そう考え始めるともう、その生徒のいる教室に行くのすら嫌でした。それでも、どうにか頑張っていたんですが……」

落ち込む陽菜さんを待っていたのは、周囲が理解してくれないという苦境だった。

男子生徒から向けられた強い好意。予期せぬ「働きづらさ」に思い悩む陽菜さんを襲ったさらなる苦しみと、彼女が下した決断については、次回詳報する。

取材/文 八幡那由多

▶︎後編に続く


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