先生と生徒の禁断の恋愛というテーマは、今もなお根強い人気を持ち、飽きることなくドラマや映画で取り上げられる。「禁断」でありなかなか簡単にはハッピーエンドを迎えられないところが人気の理由なのだろうか。
今回話を聞いたのは、そんな禁断の愛に身をゆだねた教員……ではなく、生徒に好意を向けられたことで苦境に陥ってしまった女性教員だ。
男性教員が女子生徒と、という話はよく聞くが、女性教員が男子生徒と、という話はあまり聞かない。なぜだろうか。
「それは、男子高校生なんて圧倒的に子どもだからだと私は思います。『大人』とは絶対に思えない。身体がどんなに大きくても中身は幼いですもの。恋愛対象になんてなりませんよ。これってきっと、私だけじゃなくて、どの女性教員も同じ意見ですよ。
以前話題になった中学生が女性教員となんてドラマを見て、教員をしている女性たちがみんな、ありえないって言っていましたから。大学生や大人になってから再会しても、高校生の頃を知っているので、もちろん恋愛対象にはなりません」
そう言ってコーヒーカップを指先でコンとはじいたのは、昨年教員を退職してしまった倉本陽菜さん(仮名・25歳)。彼女が教員を勤めたのはたった2年間。その期間に彼女を襲ったのは、男子生徒から好意を寄せられるという想像もしなかった状況だ。
「誰に相談しても、『えー、何それいいなー。自慢?』とか『若い子にモテるって最高じゃない。私も高校の先生になればよかったー』とか言われて……。深刻にとらえてもらえることは一度もありませんでした」
陽菜さんは大学卒業後すぐに、いわゆる進学校と言われる私立の高校に勤務することとなった。
「学校の先生って研修期間が全くなくて、赴任が決まった3日後とかにはすぐもう授業をしないといけないので、右も左もわからないままに授業が始まるんです。不安だらけで生徒に接したことを覚えています」
そう言いながら髪をかき上げてため息をつく陽菜さんは、生徒たちに歓迎されたという。
「年が近いということと、私が不安げに見えたからか、親切にしてくれる生徒たちがたくさんいました。担当した子どもたちが高校2年生だったということもあって、『私たちの方が先輩だから、教室の場所とか教えてあげるよー』なんて言ってもらえて、心の底から嬉しくなりました。
ただ、初対面のときから『せんせー、連絡先教えてー』と言ってくる男子生徒がいたことには面食らいました。周りの子が『お前、やめろってー! 先生狙ってんじゃねーよ』とかなんとか言ってくれたのでその場はおさまったのですが、対応の仕方がわからなくて……」
次も同じことを言われたらどうしよう……という不安に駆られた陽菜さんは、すぐに、自分よりも年配の女性教員に相談したそうだ。