舅は一瞬黙り込み、しどろもどろになった。ブラジャー事件の犯人もやはりこいつだ、と琴子は確信したという。
「私、見てたんですよ。私のブラジャー触るとこ。気づきませんでしたか」
とっさに口から嘘が出ていたことに、琴子本人も驚いた。怒りで肝が据わったのかもしれない。しかし、琴子の嘘を真に受けたのか酔いに任せたのか、舅は開き直ってこう言ったのだという。
「これ見よがしにあんないやらしいブラジャーを置いておくほうが悪い。違うか?」
これ見よがしって、自宅で干してただけなんですけど、と突っ込みたくなる気持ちを抑えつつ、どんな言葉を引き出せばより有力なセクハラの証拠になるのか、琴子は高速で考えた。
「そんなにまでして見たいんですか?って聞いてみたんです。そうしたらジジイは茹でダコみたいに顔を赤らめて、とろけそうな表情になったんです。もうキモくて死にそうでした。でも、私はとにかく証拠が欲しくて必死で」
しかし、努力の甲斐はあった。琴子の思惑どおり、舅は完全に自分を解放したのだ。
「見せてくれるの?」
舅の声はうわずり、顔は昇天しそうだったと琴子は苦笑する。
「私、たたみかけるように、何がそんなに見たいんですか? はっきり言ってくださいって言ったんです」
すると、舅はこう言ったのだという。
RANKING
2
2
5