ところがジェイは紗英が日頃マッチングしていた日本人男性のような謙虚さは持っていなかった。一言目から紗英の外見を褒め、二言目には紗英の言葉を賞賛する。そしてしつこいほどに紗英の日常生活を把握しようとする。
『今日の昼ご飯は何を食べたのか。今からどこにいくのか。家族は何人いるのか。仕事は何をしているのか』
ジェイは、とくに食事にこだわった。何を食べたのかを知りたがる。紗英は聞かれるたびに食べたものをアップしていた。紗英は居酒屋チェーン店で働いていたため、昼も夜もまかないである。量、質ともに最高というわけではないが、腹を満たすには十分な内容だ。
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「ジェイは、いつも私をねぎらってくれたんです。まかないの写真を送るたびに『さえはもっといいものを食べるべきだ。さえの体が心配だ』って言うんです。これまで付き合ったどの男性からもそこまで優しい言葉をかけられたことがなかったから、いつの間にかジェイとのメッセージが私の生活の中心になっていました。『さえの裸の写真を送って欲しい』と言われることもありましたね。最初のこころは笑ってスルーしていたんですけど、そのうち断りきれなくなって......」
多くの男女トラブルを解決してきた危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「ホストやヒモ男性の常套手口が、日常生活の些細なことまで報告させることなんです。彼女たちの行動の中に、常に自分の存在を意識させておくことで、生活全体を支配しやすくなる。その第一歩が行動報告なのですが、彼女たちは愛されていると錯覚してしまう」
一面識もないジェイとのやりとりに、紗英は徐々に蝕まれていく。
衝撃の次回へ続く。
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