「日本のマッチングアプリには詐欺師がたくさんいて、被害者が続出していることを知っていますか?」
伏し目がちにそう話すのは居酒屋で働く加藤紗英(仮名•31)だ。「不倫女子のリアル」の著者で、ライターの沢木文がレポートする。
「去年の夏頃でした。マッチングアプリを見ていたらアジア系のイケメンがいいねをしてくれたんです。ドラマに出てくるレベルのイケメンですよ。名前はジェイ。速攻いいねを返して、マッチング成立。そしたら秒でメッセージが届いたんです。『美しいあなたともっと話をしたい』って」
国際ロマンス詐欺は、古典的な詐欺の手法だ。この数年でマッチングアプリを拠点に日本人をターゲットにした詐欺師が暗躍しているという。紗英も彼らの餌食になった1人だ。
「ジェイはシンガポール在住のアジア系アメリカ人で、商社に勤めていると言っていました。マッチングアプリに表示されている年収は3000万円。そんなのに騙されるほうが悪いっていうでしょ? 私も後から考えるとそう思うんです。大金持ちのイケメンが私に興味を持つはずがないとか、そもそもそんなにお金を持っている人はマッチングアプリを使うほどパートナー探しに困っていないとか、冷静になって考えれば突っ込みどころは満載なんです。でも騙されているときは、のぼせあがって何も見えなくなっていました。夫には申し訳ないことをしたと思います」
紗英は27歳で現在の夫である悟(仮名)と結婚。結婚後も居酒屋での仕事を続けていた。紗英がマッチングアプリで詐欺師ジェイと知り合ったのは29歳の夏だった。
「結婚しているのにマッチングアプリを見るなんておかしいと思いますよね。でも私にとっては手癖みたいなものだったんですよ。結婚前からずっと使っていたからゲーム感覚というか。マッチングした人とメッセージのやりとりを楽しむだけだったんです」