「ある日、僕の部署で事務ミスが起きたんですよ。それ自体は珍しいことじゃなかったんですが、ミスが発覚したタイミングが悪かった。ちょうど金融庁の立入検査を模した社内検査で、僕らのミスが指摘されてしまったんですよ。上長は野心家でしたから、怒り心頭。フロアに響き渡る声で怒鳴られちゃって。心がぽっきりと折れました」
起業を決意した陽平の行動は早かった。上長から罵倒をうけた翌日には会社に辞意を伝え、わずかな貯金を元手にSNSで活躍しているフリーランスと交流を始めた。オンライン飲み会にオフ会、セミナー。顔を出せる場所にはどこにでも出向いて、多くのフリーランスと交流を深める。
「陽平さんってエリートサラリーマンを捨てて起業したんですよね? すごーい!」
「やっぱり行動あるのみですよね! 社畜なんてすぐやめるべきっす!」
起業家が集うオフ会で、最年長の陽平はもてはやされた。一回り以上年下の男女からかけられる賞賛の声に侮蔑が混ざっていたことに、陽平は気付けない。
SNSの甘い誘いには裏がある。誰しも分かってはいるものの、切羽詰まっているときに人はつい乗っかってしまう。陽平を待ち受ける最低な転落人生とは......。
衝撃の後編へ続く。
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