しかし、孝之は離婚というカードを切らなかったという。
「こんな関係性なのに、離婚しないなんて…今はまさに生き地獄です」
夜の外出は基本的に禁止。薫はスマホの位置情報を共有をさせられたので、ズルもできない。そして、誠の家庭にも同じ書類を送りつけたという。
「ただただ別れたい一心ですが、先が全然、見えません」
そういえば問い詰められたとき、薫は意を決してひとことだけ例の女性について尋ねてみたという。
「旦那、なんて答えたと思います?」
答えは「仕事」だった。薫はさらに別れる気持ちを強く持ったという。
「彼が女に会うのは仕事、でも私が毎日していることは仕事ではない。ものはいいようですよね。何とか自立できる道はないか、探しています」
薫の行いは決して褒められるものではない。しかし、孝之の素行にも怪しさがある。世の中の夫婦は、こうやって矛盾を抱えている。現実は小説より奇なりなのだ。
Text:FORZA STYLE
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