公子さんの一日、それは朝5時からはじまる。前日、病院から持ち帰った洋一くんの衣類と共に、自身や夫のも含め洗濯、そして掃除。その後、夫の朝と夜の食事を準備し、自身も朝食をとり、病院へ行く支度をして7時には自宅を出発。片道車で一時間かけて洋一くんの待つ病院へ。
「私がいない間に何かあったら大変という思いと、とにかく我が子の顔が見たい! という一心で病院へ毎日通いました。毎日です。一分でも一秒でも早く! そんな私の姿を横眼に、夫は『仕事がある』を言い訳に、病院に来ることはほとんどありませんでした。その日の様子さえ聞いてくることもしませんでした。まるで洋一の存在が彼の中にはないように見えました」
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公子さんにとって悲しかったこと。それはご主人の態度だけではなかった。
「夫の家族とは、洋一を産んでから不仲になりました。 妊娠初期の段階では何かと私の身体を気遣ったりして連絡してきたのに、洋一が生まれてからなしのつぶて。障害児が居るということで見下され、疎外されているような気持ちでした。もちろん私から夫の両親に連絡して洋一のことを理解してくれるように説明したり、何か行動すればよかったのでしょうが……。
私は毎日のルーティーンをこなすだけで手いっぱい。そんな余裕などありません。洋一に関心を持たない夫や義理の両親に最初のころは腹が立っていました。しかし、次第にそれすら消えうせ、夫との会話も皆無に。それどころか、なんだか私の中で夫はいないものと考えるようになっていったんです」
ある日、いつものように病院に行き、洋一くんと一日を過ごした公子さんが自宅に帰宅したのは22時。リビングの机の上には印鑑の押された離婚届と『提出しておいてください』と書かれたメモが置かれていた。
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