人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。
生産の現場を見つめ続けるとともに、自身で幾度となくイタリアを訪れて飛び込みで開拓。たくさんの身銭を切ってサルトで仕立て、知見を広げてきたファッションディレクターの諸澤 泉さん。
知識と経験に基づき、たくさんの服を手に入れてきた諸澤さんが、中でも思い入れが強くて捨てられなかったアイテムをご紹介する企画の第12回目は、ルイジ ボレッリ(LUIGI BORRELLI)のチェスターコートです。
これは元々、ベージュっぽい明るめなキャメルのカシミア100%のコートだったんです。それをカジュアルで着ていて、件のイタリアの老舗セレクトショップ Eral 55に寄ったら、そこのエルマンノ氏に「クラシックすぎてダサいから、染めろ!」って言われました。
「どこで?」と尋ねると、Eral 55の地下には染められる工房が併設されていて、その場で脱がされて緑に染められました。
だから裏地も独特な緑色に染まってるんです。
「明日までには乾くから取りに来い」って言われて、確か別のコートを貸してくれました。
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