着られなくなったら、お直しではなく、自分の身体を合わせます!
生産の現場を見つめ続けるとともに、自身で幾度となくイタリアを訪れて飛び込みで開拓。たくさんの身銭を切ってサルトで仕立て、知見を広げてきたファッションディレクターの諸澤 泉さん。
知識と経験に基づき、たくさんの服を手に入れてきた諸澤さんが、中でも思い入れが強くて捨てられなかったアイテムをご紹介する企画の第1回目は、サルトリア・ピロッツィ(Sartoria Pirozzi)のスーツです。
「1964年にヌンツォ・ピロッツィさんがナポリで創業したサルトリア・ピロッツィ。
最初は東京・自由が丘にあったピッティコレクションというセレクトショップが扱っていたんですが、お店がなくなってしまって日本での展開がなくなったんです。
それで僕は探し求めてナポリを訪れて、オーダーすることにしたんです。確か、2012年くらいの話で、価格は1200ユーロくらいだった気がします。
当時はイタリアに1ヶ月半くらい滞在していたんですが、当時はピロッツィさんはミラノにも行ったりしていて、タイミングを合わせて2回仮縫いして頂き、滞在中に仕上げてくれました。
納期までが長いことで有名だったんですが、日本との取引がなくて時間があったのと、娘のジョバンナと息子のドミニコも参加しており、予想に反してスムーズでした。
それで、仕立て上がってスーツに袖を通してみたら、シビれたんです。スーツが好きなので、それまでにもオラッツォ・ルチアーノ(Orazio Luciano)とか、サルトリア・ダルクォーレ(SARTORIA DAL CUORE)とか、結構いろいろと仕立てていましたが、ピロッツィは伝説通りの人でした。
あまりに良かったので、当時ストラスブルゴに在籍していた神藤さんにピロッツィを勧めたんですが…、"納期の問題あるから"と渋られてしまった。それならと、彼を一緒に連れて行き、作らせたら仕立ての素晴らしさに納得し、納期も問題なさそうだからと、取引きがスタートしました。
僕はサルトで初めてオーダーするときは必ず、無地ではなくヘリボーン地かストライプを選びます。そうすることで、生地の柄合わせなど作りの正確さが分かるからです。