■ボルボを見事に復活させたジーリー
2010年、ジーリー・ホールディング・グループは、アメリカのフォード・モーターからボルボ・カーズの買い取りを発表、100%の株式と知的財産を含む全資産を取得した。
これによって当時、「ボルボは終わった」といわれたこともあったようだが、ジーリーは、ボルボブランドを悪戯に活用するのではなく、ボルボのエンジニアリングへ敬意を払い、ボルボの持つブランド力と可能性を信じて、それまではフォードの縛りがあったボルボに、完全自社開発でエンジンやシャーシを開発する場と予算を用意したのだ。これによって、ボルボの商品群は、見違えるように改善。冒頭で紹介したように、日本市場でも2年連続で日本カーオブザイヤーを獲得する、という偉業を成し遂げてみせた。
ジーリー・ホールディング・グループは2017年、ロータス・カーズを傘下に持つマレーシアの自動車メーカー、プロトン・ホールディングスの株式のうち49.9%を取得。プロトンが持つロータスの株式51%も受け継ぐこととなり、ジーリー傘下に、ボルボとロータスが揃うことになった。
■中国メーカーとは思えない、デザインの斬新さと新しさ
現在ジーリーには、フルラインアップをそろえている「ジーリーAUTO」、ピュアバッテリーEVブランドの「Geometry」、高級車ブランドの「LINK&CO」、そして、マレーシア向け「Proton Car」の4つのブランドがある。
ジーリーAUTOは、圧巻のフルラインアップだ。コンパクトカー、セダン、ミニバン、クロスオーバーSUV、クーペSUVなど多種多様。中国国内での2021年販売台数は約133万台で、中国国内で、5年連続の首位を獲っている。ちなみに、中国の市場規模は、およそ年間2000万台。ラインアップの中には、別のメーカーで見たことがあるクルマにそっくりなものも未だにあるが、それでも、これだけのラインアップをそろえているのには驚きだ。
ジーリー4ブランドのなかでも、2021年に前年比26%アップの22万台の車両を販売し、いまもっとも勢いがあるのが「LINK&CO」だ。
直近のコンセプトカー「The Next Day」は、4枚の跳ね上げ式ドアを採用した、クーペ風セダン。フロントにエンジンを積み、後輪をモーターにて駆動するというハイブリッドカーとして、紹介されている。失礼ながら、中国メーカーとは思えない、デザインの斬新さと新しさだ。
■まとめ
昨年、ボルボ・カーズは、ジーリーとの提携を強化し、電気自動車プラットフォームなどのアーキテクチャの共有や、自動運転技術といった幅広い協業について合意したと発表した。ボルボ・カーズをはじめとして、ボルボの上級スポーツブランド「ポールスター」、ジーリーAUTO、LINK&COと、各ブランドでアーキテクチャを共有することで、製品の性能向上と、ラインナップ拡大が可能になる、としている。2022年3月にロータスが発表した、オールエレクトリックのSUV「エレトレ」も、そのアーキテクチャを活用したモデルだ。
中国企業は、想像以上のスピードで、進化を遂げている。ジーリーが日本市場へ登場するといった計画はいまのところ聞こえてこないが、日本以外の国では、ジーリーはいま、最も話題となっているメーカーのひとつなのだ。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:GEELY、LINK&CO、LOTUS
Edit:Takashi Ogiyama