「夫が帰ってこないので、やりたい放題でした。いつの頃からか、精神状態も荒れて“人間どうせ死ぬんだ”とずっと思っていた。毎日誰かに抱かれていないと、辛くてたまらない。マンションの隣の部屋に住んでいる男性を襲ってしまおうかと思ったこともあります。でもよく考えたらリスクしかない。そんな考えも回らないほどに、私は追い詰められていたんです」
激務を続ける勤務医の夫を裏切り続けている罪悪感が、美桜さんにはいつもあった。
しかし、それも寂しさと性欲がないまぜになった激情の前では霞んでしまう。
とうとう美桜さんは、男たちと行為を持つためだけに、家賃8万円のワンルームマンションを借りた。住んでいる場所からは十分離れているから、人目を気にする必要もない。
「ここを手に入れてからは、完全にタガが外れてしまいました。男友達以外にも、いろんな人を連れ込んでいます。前は若い子が好きだったけれど、今は年上の男性が好き。私を楽しませてくれるじゃないですか。ワインを持って来てくれたり、並ばないと買えないお菓子を買ってきてくれたり……そういう心遣いも含めて、感じる」
今日も病院で患者を見ている夫は、そんな美桜さんに、一切気付いていない。
「たまに帰ってくると、お風呂に入って死んだように寝てしまう。そんな夫のいびきを聞きながら体を密着させると、すごく深く眠れるんです。夫のことはまだ好きだと思いますが、これから関係が復活するとは思っていません」
美桜さん夫婦が今後どうなっていくのか。それは誰にもわからない。
Text:Aya Sawaki
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